第六節 志し半ば
「さて、我々には、いかにアクティブなプレイヤーがいるか、つまり農家ではなく戦闘機がいるか。それを確認したい。」
リーダーのみのSNSグループで、ヤマトタケルは各連盟のリーダー達に中ロ連合に勝つための真髄を問いかけた。
「それが一番重要な問題だ!」全てのリーダーが口を揃えた。リーダー達は皆語気を荒げ、そしてこの大同集結という新しい潮流に興奮していた。
特に、今までロシア連盟の猛攻撃をともに苦しみ、ともに防いできたPHXのプリバノンはヤマトタケルのリーダーシップに心酔した。
ヤマトタケルはどうすれば良いのか、その全てを知っていた。なぜなら、今まさにヤマトタケルが行おうとしていることと同じことを、5つあった日本人の連盟を大同集結させたアレキサンダーが行ってきたからだった。その方法をヤマトタケルはずっと補佐役として見てきた。
しかし、アレキサンダーは日本人連盟の大同集結を果たした2ヶ月後、ゲームを去ることになる。
それは、アレキサンダーの日頃の発言や行動のせいであった。彼は実に多くの知識と戦術を持っていた。それが災いし、多くの他の日本人プレイヤーを卑下することが多々あった。
ゲーム上での戦争ごっこに不馴れなプレイヤー、またゲームを学ぼうとする積極的なプレイヤー達(戦闘機)の不満が爆発する事件が起こってしまう。
日本人の統一を果たしたJPNの当初のメンバーは50人余。第1位の中国連盟に続いて第2位連盟となっていたが、この事件を切っ掛けに20名余りのプレイヤー達がゲームそのものから、そしてこのサーバーから、去っていってしまった。
その仲介役として動いていたのがヤマトタケルであった。多くの日本人プレイヤーがヤマトタケルに一目を置いていた。アレキサンダーはプレイヤー損失の責任を取り、JPNのリーダーを飲み友達でもあったヤマトタケルに託し、自らゲームを去ったのだった。
プリバノンは隣国連盟としてこの経緯をよく知っていた。だから、今回の大同集結劇を陰ながら応援している。プリバノンは自らの連盟プレイヤーの悩みをヤマトタケルに相談し、またヤマトタケルもそうした。そうやってお互いを鼓舞してきた。
たかがゲーム、されどゲーム。今やゲームはオンラインで世界的なものとなり、翻訳機能の充実もあって、国籍を越えたプレイヤー同士の交流は容易なものとなっていた。
「私はあなたが無理をしていないかと、常に心配です。どうかお身体をご自愛してください。決して無理をしないでください。」
プリバノンからのSNSだった。
プリバノンはヤマトタケルが生まれつき心臓病を患っていることを知っていた。また、彼女自身も大病を患う老女であった。彼女は現実世界では車椅子だが、このゲーム上だけでは強き戦闘機でいることが出来る。このゲームは彼女が人生の喜び得られる別世界であった。
「大丈夫だよ(^^) 私は決して無理しませんよ。あなたもお身体をご自愛ください。」
これが二人のいつもの会話の締めくくりであった。互いを労る感情に、国を越えた何かを感じ合っていた。
大同集結した各連盟のプレイヤー達の反応もとても良いものとなってきた。各リーダーシップが興奮して情勢を伝えてくる。ハウンドもプリバノンも、ユーリーもアウトサイダーも、次にヤマトタケルがどのようなことを要求するのか、待ちわびるほどになっていた。
『今まさに、我々はこのサーバーのハンドルを握っている!』
このヤマトタケルの発言に各リーダーは呼応し、そしてそれを伝え聞いた各連盟のプレイヤー達は狂喜乱舞する。
そう伝達し終えたヤマトタケルは、車を運転していた。伝え聞く多くの反響に笑みを浮かべていた。
と、その瞬間、急に予期せぬ心臓発作が起こる。
『マジかよ、こんな時に!』
車のハンドル操作が出来ない。あぁ、今は時速60キロ、あぁ、身体が自由に動かない、胸が苦しい、あぁ…
ヤマトタケルが運転する車は加速しながら右カーブを曲がることが出来ずにガードレールに激突。
頭部から流れる血の温もり。『なんか血って鉄の臭いがするって言ってたよな…』緊急事態にも関わらず素直な気持ちを心の中で語る。
ヤマトタケルが50才を迎える年、2020年、令和においては2年になった年のことであった。
(注)「農家」・「戦闘機」…戦争ゲームにおいて、謂わば「育成」のみに専念するプレイヤーを揶揄して「農家」と言う。またその逆は「戦闘機」と言われる。




