第三節 JPN
「JPN(Japan_Next)」はヤマトタケルが立ち上げた連盟ではない。当初JPNを立ち上げたのは日本人プレイヤーであるアレキサンダーだった。そして5つあった日本人連盟のトップに君臨していたのがJPNである。
他の日本人連盟のプレイヤーがこのサーバーを初めてのゲームのサーバーとしていたのに対し、アレキサンダー他数名はいわゆる「古鯖(古いサーバーのこと)」の経験者であった。今、ヤマトタケルが所属しているサーバーは123番目のサーバーである。簡略化して#123とも表現される。
アレキサンダー自身は古鯖において多くの経験をしていたため、このサーバーにおいても、そして他の日本人連盟に対しても、指導者的意味合いの強いプレイヤーであった。かつ彼自身が元々他人に対してマウント色の強い接し方をする人物でもあった。
このような戦争ゲームが未経験であったヤマトタケルは、ゲーム開始当初から雰囲気で自分の連盟「jpf」を立ち上げてしまい、右も左も解らず終い。
そんな中、jpfは隣国のイタリア連盟にわずか1ヶ月で滅ぼされてしまう。その後のjpfのメンバーの亡命先がJPNだった、というわけだ。他の日本人連盟も大方同じ理由でJPNに合流していくのである。
このような合流、つまり『合併』劇は決して日本人だけに限った話ではない。当初乱立した大小の連盟が、時に国を、時に思想を中心に合併を繰り返す。
それは、各連盟が、各プレイヤーが、このゲームで、この領域で、それぞれ生き残る為の行動をした、ということである。皆が現実世界と同じような行動を行ったのだ。
戦争ゲームだからといって、ただ戦闘が行われる訳ではない。むしろ、その言葉通りの「戦争」を考えれば、外交、諜報、調略など、現実の戦争さながらの行為が許されているわけだ。
それはむしろ『頭脳ゲーム』と表現した方が良いだろう。当然の如く心理戦も存在している。であるので、多くの課金だけで強いプレイヤーになれる、というわけではなかった。
プレイヤーがあらゆる手段を駆使してゲームに参画する『頭脳派戦争ゲーム』。
プレイヤー達がこの領域でこのゲームを始めて半年経った頃のことであった。