表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アセンション・プリーズ  作者: 武_たけ_TAKE
第一章 戦争ゲーム
1/11

第一節 ヤマトタケル

 「私はこのサーバーを統一したい。その為には私たちJPNはあなた方の協力を必要としています。(ごく)限られた盟主(めいしゅ)にのみ私はメールしている。サーバー統一後、我々はこの領域の国王を交代で譲りあいたい。これが私の理想の形です。私はあなたの連絡を待っています。私はあなたを信頼している。この私の考えはぜひ他言無用でお願いしたい。」


 ヤマトタケルは4位連盟以下の主要なリーダーにこう打診した。


 彼は3位連盟のリーダーである。これまでこのゲームの#123サーバーを1年近く支配してきた1位の中国連盟と2位のロシア連盟の協力同盟による支配。この現状を打破したい。それは彼の決死の覚悟からの呼び掛けであった。


 これは戦争ゲームでの話である。彼は乱立していた5つの日本人連盟の統一を3ヶ月前に成し遂げた。それまで、多くの出会いや裏切りを体験した。たとえ同じ日本人であっても、同じ理想や目標を共有しているわけではない。


 中国連盟やロシア連盟に寄った日本人もいた。しかし、そのようなプレイヤーは時間の流れとともに次第に淘汰(とうた)され、ヤマトタケルの連盟に参加するか、別の領域に移動していった。この領域においてはどうにか日本人のみでの上位連盟立ち上げに成功した形である。


 成功した? いや、この領域においては必然の流れであったのかもしれない。


 同じ国、人種、思想、宗教、価値観など、それぞれの理由でプレイヤーは基本的に集まり、固まり、寄り添うものである。それがこの領域では国であった、ということだ。


 しかし今、彼はそれらの壁を越えて大同集結(だいどうしゅうけつ)を同じゲームの、恐らく同じ思いを抱いているであろう他のリーダー達に問いかけている。


 ヤマトタケル…それは彼の本名ではない。戦争ゲームで彼が自分自身のキャラクターに名付けたニックネームである。この戦争ゲームには世界のネットユーザーの誰もが参加出来る。ヤマトタケルはそのユーザーの一人なのだ。


 今現在、1位連盟と2位連盟の中国ロシア連合(中ロ連合)のプレイヤー数は合計で80名余り。ヤマトタケルの日本人連盟は30名弱である。現状で3位連盟であっても、中ロ連合に打ち勝つ為のマンパワーが全然足りない。


 また、メンバーの育成度合い、ゲームへの課金の温度差、日常の生活環境など、それぞれが大きく戦況に影響を与える。


 さらに、ワールドワイドなゲーム(ゆえ)に一番の問題がある。タイムゾーン、時間帯の問題である。


 同じ時間帯を共有、同時にアクティブにアクセスし、共同作業するチーム。個人プレーよりもチームプレー。それがこの戦争ゲームに参加するプレーヤーに求められる大きな特徴であった。


 同じタイムゾーンでアクティブにアクセス出来るチームが有利。いかにアクティブプレイヤーを増やすかがリーダーに求められる最も重要な課題である。


 そんな状況とヤマトタケルは戦うことを決心した。それは、2強により支配された、停滞しているこの領域に風穴を開けたいからであった。

(注)「サーバー」…領域のことを指す。ゲームによっては王国などのことで、多くのオンラインゲームは複数のサーバーが順次作られ、増えていく傾向にある。本文中において同義語として「サーバー」「領域」が適時使用される。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ