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第十三話 晶と浩然

「蓮選手の攻勢が止まらない。一気にアサシンを崩して、メイジの形成だ! 作ったシナジーはディヴァインメイジウォーロック!」


 実況が伝える通り、蓮はディヴァインアサシンから、ディヴァインメイジへと構成を変えた。今度は長考せず、速やかに。


「グヮーン」


 開戦の銅鑼が鳴る。出てきた相手はチーフェン!

 チーフェンのシナジーは、【ナイト:4】をさらに育てた【ナイト:6】【ドラゴン】だ。

 戦いが始まった途端に、ドラゴンナイトはドラゴン化。圧倒的火力をもって攻撃してくるも、これを防ぎきり、蓮の勝利となった。



 ──みたかアキラこれが俺と蓮の力だ! これでもまだ俺たちとの勝負を避けるのか?

 カズはアキラをギラリと睨むも、アキラはこれを意に介さない。沈黙を守り、そしてチーフェンへのアドバイスは未だない。



 ──く……。何故だ……、何故俺と勝負しない。あの時の約束を反故ほごにしようってのか⁉︎


(ふ〜、なんとかチーフェンをしのいだね。おっさん)


「いや、まだ安心はできないぜ、チーフェンはナイト6まで育っちまってる。まだ攻撃の手を休めることは出来ない」


 30巡目ラウンド──


(ねえ、アキラさん……)


 チーフェンは画面から目を離さず、アキラに話しかけた。


「どうしたんだ、浩然(ハオラン)。試合中に話しかけるなんて珍しい」


(アイツ凄いね……、寺崎蓮。裏の戦いで負けちゃったよ)


 自分の操作画面では無く、攻撃を仕掛けた相手の画面での戦いを裏という。というのも、オートチェスの対戦は非同期対戦ゲームであるからだ。先程、蓮はチーフェンに勝ったが、そのダメージはチーフェンには入らない。ダメージが入るのは自分が戦いに負けた時だけだ。蓮はチーフェンの攻撃を退けたに過ぎない。


「そうだな。いとも容易くディヴァインメイジを繰り出す。それに、蓮の手駒を見てみろ。裏切りのデーモンを持っているだろう? この駒の持つデモンハンターは相手のデーモン能力を無効化する。つまり……」


(つまり、俺を狙い撃ちにしてるってことだろ? わかってるって!)


「そうか……」


(そう来るんなら、こっちも考えがあるし!)


「ほう?」


(まあ、見ててよ、アキラさん)


「それは楽しみだな」


(でもさ、蓮はカズって人のアドバイスを受けてるんでしょ? それって凄いのは、蓮じゃなくってカズの方なんじゃないの? 俺はアキラさんのアドバイスを受けるのは練習の時だけだし、試合中は受けてない。ってことは……)


「……ってことは?」


 アキラが問い返す。

 それを聞いてチーフェンは、ショップから3体目のドラゴンナイトを引いた。


(俺はアイツよりもっと凄いってこと!)


 と、力強く★2へクラスアップするドラゴンナイト。


「そんなことはないぞ?」


(? どうしてさ…… ほら、また一人蹴落としたぞ! ドラゴンナイト……やっぱりコイツは俺のお気に入りさ!)


 チーフェンのナイト6ドラゴン攻勢は止まらない。ナイトが壁役タンクになりドラゴンナイトが圧倒的火力で相手を殲滅させる。チーフェンはアキラと話をしながら、易々と7位のプレイヤーを脱落させたのだ。


 31巡目ラウンド──


「打ち筋など、所詮、小手先の技術にすぎん。本当に必要なのは天運なのさ。天運を掴んだ者こそ勝負を制する。そしてその天運を掴むのはプレイヤー自身だ。カズのアドバイスは蓮の力を引き出しこそすれ、それは本質ではない」


(へー。そんなもんなんだね!)


 チーフェンは、アキラと喋りながらショップを更新する。


良好リィヤンハオ! ほら来た。ディヴァインメイジに対抗する駒がさ!)



 ──ほう、おもしろい。さあ、カズ。浩然(ハオラン)にどう挑む⁉︎


 36巡目ラウンド──  レベル:9 (ゴールド):50 順位:1位 対人戦

 脱落者も5人を数えた。残るは3名。

 蓮は1つレベルを上げたて、新しく嵐のシャーマンを出陣させる。

『戦神★3』『ライトドラゴン★2』『マナの源★2』『雷のスピリット★2』『影の魔王★2』『氷河の呪術師★2』『裏切りのデーモン』『砂漠の主★2』『嵐のシャーマン』

 の構成だ。

『嵐のシャーマン』は単体で強いユニットだ。スキル、イオンストームは、範囲内の敵駒を沈黙させ、さらに、2秒間に1秒ごとに最大150の魔法ダメージを与える技。この敵に状態異常を与える技をCC(Crowd Control)と呼ぶ。

 蓮の出陣駒には、他にも、『氷河の呪術師』と、『砂漠の主』もCC持ちの駒だ。どちらも敵をスタンさせる能力を持つ。3つの駒が揃ったディヴァインメイジ攻勢を相手にした場合、大抵は何も身動きできずやられれてしまう。

 だが──


 対するはチーフェン。


(く……、なんだこの硬さはぁ! 全然体力が減らない!)


 すかさず実況が入る。


「いくらスタンさせ、沈黙させようとも、倒れず逆に駒を攻撃するのはチーフェン選手! ナイト6ドラゴン。そして……マリーンが付いているぞ!」


 チーフェンはほくそ笑み、蓮を見つめる。


「これがディヴァインメイジ潰しのマリーンシナジーだ。どうだ? 蓮! 倒れないナイトを相手にする気分は?」


【マリーン】シナジーは、味方の駒全員の魔法防御を30%上げる、防御のシナジー。攻撃リソースの全てを魔法ダメージに割いているディヴァインメイジに対しては天敵となるシナジーだ。

 チーフェンの出陣駒は揃いきっている。

 『フロストナイト★3』『煉獄の騎士★2』『光刃の騎士★3』『羊の騎士★3』『ライトドラゴン★2』『毒竜★2』『不死の騎士★2』『ドラゴンナイト★2』『深海の歩行者★2』『セイレーン』


「連勝を重ねた蓮選手! ここで陥落だ! やはり中国チャンピオンは止められないのか⁉︎」


 蓮のディヴァイメイジは、チーフェンのドラゴン6ナイト構成に、成す術無く崩れ落ちる。


(くそ、どうすれば⁉︎ このままでは、勝てない!)



「ここで3位のプレイヤーが脱落! 残るはここまで負けなしのチーフェン選手、そして一位を独走する蓮選手の一騎打ち! 果たしてどうなる⁉︎」


 

 

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