第十話 ディヴァインメイジ
狙うはディヴァインメイジ──
蓮は迷うことなく『戦神』を確保。
そしてショップに鍵を掛けた。
ショップはラウンド開始時に自動でリフレッシュされる。だが鍵を掛ける事でリフレッシュをせず、そのまま駒を確保しておくことができる。蓮がロックしたように、欲しい駒があるにも関わらず、所持金が無い場合に有効だ。
2巡目── レベル:2 $:2 対CPU
ロックしておいた『戦神』を購入する。
(あと1$残ってる……)
カズは蓮に話しかける。
「戰神は防御に長けた駒だが、それでは攻擊がままならない。あと1$を使ってセイウチボクサーを買おう」
『セイウチボクサー』は、アクティブスキル:北海神拳が強力な駒だ。そして『戦神』と同じ【ウォリアー】シナジーを持つ。
3巡目── レベル:3 $:3 対CPU
(来たよ! おっさん!)
ショップに並んだのはまたもや『戦神』これで3体目だ。蓮はすかさず『戦神』を購入、★2へランクアップさせた。3巡にして、すでに★2が揃うというのは大きなアドバンテージである。しかも『戦神』が★2となると序盤の独走は約束されたような物だ。
「その次は、劍聖を購入だ。2$駒だけあって攻守ともに能力が高い。コイツも戰神と同じウォリアーシナジーを持っているから、盤面が磐石になる」
蓮もカズと同じ考えで、すぐさま『剣聖』を購入し【ウォリアー】を発動させる。これで、只でさえ硬い『戦神』が【ウォリアー】の効果で更に硬くなる。
(ちょっと、他のプレイヤーの状況も観てみるね)
オートチェスでは他プレイヤーの様子を、その本人と同じ視点で見ることが出来る。逆に言えば、自分の手駒はライバルに筒抜けということだ。
蓮は他プレイヤーの状況を一覧を見た。
目論見通り、★2までランクを上げているプレイヤーは少ない。
だが──。
「これは……ちょっと気がかりだな」
(うん。おっさんの言う通りだ、みんな戦神を集めている……)
蓮を含めて3人が『戦神』を集めていた。大会前、朱美が指摘した通りの展開だ。
これは単純に『戦神』が集め辛くなるだけでは無い。ディヴァインメイジ構成は集める駒が限られる。多数のプレイヤーが同じ駒を集めることは、互いに足を引っ張り合う事となる。
「だがそれより、チーフェンの狀况が惡いな」
チーフェンの持つ駒は『フロストナイト』『氷河の祈祷師』『一角獣』と冴えない駒並びだ。
「出だしに躓くと、そこから這い上がるのは難しい……」
(ってことは、もしかして、チーフェンには勝てちゃう?)
「いや、そうとも限らねえ。麻雀も同じなんだ。配牌が屑でもそこに活路は見いだせる。アキラがそれを見迯すはずがねぇ」
──さあ、見せてみろアキラ。お前の力を。あの時と同じ様に!
4巡目── レベル:4 $:4 対人戦
その冴えない構成のチーフェンとの戦いとなった。結果は蓮の圧勝である。
「よし!」
「いいぞ、蓮。ここから連勝していこう!」
──ふふん。チーフェン! こんなもんか?
蓮は得意気にチーフェンの様子をチラリと見るが、全く気にしていない様子だ。
9巡目── レベル:5 $:21 順位:1位
「止まらない連勝! 蓮選手、ここまで無敗の五連勝だあ。どこまで連勝を重ねられるか? 現在1位!」
実況の通り、蓮はここまで負けなしの5連勝を重ねていった。
しかし二人の顔色は良くない。
(まずい、おっさん。全く欲しい駒が来ない……!)
蓮はディヴァインメイジ構成に必要な『雷のスピリット』を確保したものの、そこから駒の集まりが悪い。
やはり原因は他のプレイヤーにある。4位、6位のプレイヤーもディヴァインメイジ構成を構築。蓮が欲しい『ライトドラゴン』や『マナの源』は他のプレイヤーの手に渡っていた。
「やばいな、メイジシナジーが發動しないどころか、全く手駒が毓っていない。この巡で連勝は途切れるかも知れない」
(とりあえず、定石通り、レベルをアップして出陣できる駒数を増やすよ)
蓮は、5$を使って、レベルを6へ上げた。
次にショップを確認する。
(人狼が出てるね……。こいつは買っておいた方が……)
ショップに並ぶ『人狼』は人気の駒だ。【ヒューマン】【ウォリアー】のシナジーを持つが人気の理由はシナジーではなくアクティブスキルにある。獣性解放という名のこのスキルは、自身の最大HPを20%上昇させ、且つ2匹の狼を召喚する。流石に『人狼』本体よりは性能は劣るものの、盤面に駒の数が増えることは、オートチェスに於いて大幅な有利であり、バカにできない戦力だ。
しかしカズはそれを否定する。
「いや、ダメだ。それより幻影の女王を買え」
(え……イヤイヤ! 寧ろ絶対ダメじゃん? 幻影の女王を出すとデーモンが発動しちゃう。そうするとディヴァインの効果が消えちゃうよ)
「良いんだ。俺に考えがある……!」




