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仔猫の行方3

 マナリエが魔法使の少女に正式に引き合わされたのは、塔主催の昼食会でのことだった。

 リリカスの塔に住む全ての魔術師と、それ以外にも多くのリリカス所属の魔術師が集まり、噂の魔法使たちに引き合わされた。マナリエは現在、塔の女子部なので参加するというよりは、忙しく立ち働く立場だ。それでも明るい青紫のドレスの裾に幅の広いレースを3重に飾り、魔術師の衣も金色の細いリボンで絡げてドレープを作った。魔法使の少女の衣装が可愛いかったのでちょっと真似てみたのだ。

 少女は名をシーリーアといった。

 その日のシーリーアのドレスは薄桃色のレースをいっぱいに重ねたもので、裾の内側に濃いめの桃色のレースを重ねてあった。魔術師の衣は薄絹で、白い糸で簡単な花唐草が刺繍されている。結び目に造花を飾った緑のリボンが、その衣に優美なドレープを作っていた。ふんわりと結った髪にも造花とリボンを飾っている。

 魔法使のもう一人の女性であるサラディラという艶やかな紅い目の美女は、濃い色の衣に黒い刺繍を施して鮮やかな紅の大きなリボンで絡げた下に、紅いレースを重ねたドレスを纏っている。シアと同じように、リボンや髪に造花を飾っているが、シアが野の花を模しているのと違い大輪のバラになっていた。二人並ぶと好対照でいっそう目を惹きつけられる。おそらくそのつもりで選んだ衣装なのだろう。サラディラのエスコートを務める魔法使サイファは濃い紺、シアに付きそう魔法使ジーニアスは焦げ茶の衣装にそれぞれ地紋のある衣を纏って革のベルトで留めていた。

 魔法使、という魔術界における例外的存在であると知らなければ、若手の貴族の外交グループか何かと思ったかもしれない。兄弟か何かと思うには、四人の外見はあまりにバラバラだった。サラディラとサイファは肌の色が少し濃くて、南方の出かと思われる。

 四人は四人とも、リリカシアと同年輩には見えなかった。

 一番年上かと思えるジーニアスでも三十は越えていないように思える。だが、四人はリリカシアの古い友として招かれているのだった。

 十七のマナリエの実母なのだから、リリカシアはとおに三十を越えている。魔法使たちは見た目の年齢でいうと計算が合わないから、実際の年齢ははるかに上なのだろう。シーリーアやサラディラと笑いあうリリカシアは、ちょっと少女のようにも見えた。

 リリカシアの実子ではあるけれど、マナリエはリリカシアに育てられてはいない。王の養女としてリアーナのもとで育った。戦にも出陣し、政や外交にも参加するリリカシアはあまりにも忙しかった。だからマナリエの知るリリカシアは、母というより師としての表情している。

 そんな、関わりかたしかしていないマナリエには、魔法使と笑い合うリリカシアの様子には、ちょっと胸にもやもやとしたものを感じさせられる。誰かに文句をいうのはおかしいとわかっていても、何かに納得できない気持ち。

 マナリエだけでなく同母の弟妹もそうだし、そのおかげか異母同母関係なく兄弟の仲はいいし、リアーナを母として慕ってもいる。だから特に現状に不満はない。

 でも、それでも。

 こうしてリリカシアと仲のいい他人があらわれると、そのことに揺らされてしまう自分が、ちょっと情けなかった

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