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龍の耳にて6

 一度諍いが起こってしまうとおさめるのは難しかった。

 口にされなかった不満は積み重なっている。

 古い塔のあり方に不満を抱いていた若手は多かったし、新しい体制に古参は概ね批判的だった。

 しかも現塔主のアマリアは新参の外国人で、古い事情はもちろん龍の島の人間の機微にも疎い。

 塔は揉めた。

 もはや薬の量を誤った患者の治療よりも、塔内部の揉め事の方が皆の関心が大きかった。

 その中で闇子は黙々と患者の手当を続けた。蓬は闇子の手足となって働いた。

 何日かたち、古参が塔を出るという話へと発展し始めた頃に、闇子が明子を訪れた。


 闇子が明子の部屋に入っていって、中にいたしばらくの時間、塔の誰もが息を詰めて動向を見守った。

 古参とか若手とか言うけれど、それはたぶん最終的にはこの姉妹に集約される。塔の誰もがそう思っていた。

 前塔主である姉の中級上位魔術師明子。

 上級試験に合格した申し子の妹闇子。

 長い間、明子は塔の中心で、闇子は厄介者だった。

 いま、二人の関係は見事に逆転している。

 闇子は薬草園の中心だし、明子は古参の代表のようなものだ。

 二人が室内にいた時間は短く、すぐに出てくると薬種の保管庫で何やら物色して出ていった。

 「あ、薬を。」

 ふと、誰かがつぶやいて、やっと皆が気づいた。

 治療中の患者はもともと明子の患者だ。

 二人はおそらく治療のために、一緒にでかけていったのだった。


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