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畑で二人がなんとやら、です。

 夜通し騒ぎつくした残念パーティーが終わり、サトウ敗北から一晩が開けた朝。


 気持ち良さそうに寝ているサトウを“モーニング凍る”で起こすメルリ、私は隣でそんなメルリに唖然としていた。


「ギャアァァァ……」とラッペン邸に響くサトウの叫び声。


 まぁ、そうなるわよね? その名の通り、“モーニング凍る”は氷水による最悪の目覚ましだもの。


 因みに発案者はメルリでサトウの事は仲間とは認めたけど、仲良くはまだ出来なそうね?


 メルリは朝早く私の部屋に現れると悪夢を見たと言い出して涙ながらに抱きついてきたの。


 「お嬢様、いいですか! あのサトウは言わば野に放たれた獣です。お嬢様が……「あーれー、シクシク……」と為らないように私はサトウを監視します! 優しさは無しです!」とワケわからない妄想も加わり朝から大変だったの……どんな夢を見たのか知りたくもないわね。


 サトウは何が何だか分からないままに氷水を掛けられガタガタと震えていた。


「ハァ……メルリ。やり過ぎよ? サトウ、取り敢えず熱風魔法で乾かすから待ってて」


 火炎魔法を弱めに発動してから更に室内に引火しないように水魔法で火炎魔法を包み込むと蒸発した湯気をサトウに風魔法でおくり、スチームドライヤーのようにしたわ。


 震えていたサトウの体から次第に水気が無くなり、頃合いを見計らって魔法を止める。


 確りと全身が乾いた事を確認した私は目くじらを立てるメルリを宥めながらサトウを連れてラッペン邸を後にしたの。


 ラッペンお爺ちゃん達は朝まで飲み明かしてた為、日が上ってからベッドに行ったみたいで熟睡中ね。


 料理長のカッシュとメイドのメグの夫婦にラッペンお爺ちゃんへの伝言を頼み、私達の森である“ハニーフォレスト”にサトウをつれていったの。


 森に到着して直ぐに洋館を元の位置に戻すと其処から私達は畑の雑草抜きを開始する。


 訳がわからないと首を傾げるサトウにメルリからの膝蹴りが炸裂し、無言の圧力により、そそくさと雑草抜きにサトウが加わったわ。


 そんなサトウから私にある質問が来たわ。


「カミルさん? 俺、メルリさんに何か嫌われる事したかな……会った日から、なんと言うか? 嫌われてるような……」


 正直に言うか迷いながらも、私はサトウの肩を叩く。


「諦めなさい。メルリは男嫌いなのよ。まぁ、それでも真っ直ぐに接してくれてるんだからいいんじゃない?」


 私の説明になんとも渋い表情を浮かべるサトウ、しかし、休憩になれば確りとサトウのお茶も用意するメルリに少しホッとした様子も見れたから安心ね。


 久々に川の水で花を育てられるとはしゃぐ樹精霊(ドリアード)のジュレ、そんなジュレにも新たな変化があったの、ドン・トレントのボスに告白すると言い出したの、流石の私もビックリね。


 実は何度かアタックしたらしいんだけど、ボスは頑固で真っ赤になりながら『俺はカミルの姐さんに命を預けた身でさぁ、そんな俺には勿体ねぇ話でさ』と口にしていたらしいのよね。


 今回はジュレも最後にすると口にしたの、『友達としてもやっていける』と口にするその姿に私は辛くなったわ。


 雑草抜きをサトウとデンキチ達(ロクさん&スケルトン軍団)に任せた私はボスを呼び出したわ。


ボス(ボー)? アンタに話があるわ。お見合いをする気は無いかしら?」


 私の“お見合い”と言う言葉に首を傾げるボス。


『姐さん? お見合いってなんですか、無知なもんで、聞き覚えの無い言葉に返事が出来やせん』


 其処からか……いいわ。


ボス(ボー)に私が決めた相手と結婚して欲しいのよ。まぁ、心に決めた相手が居るなら別だけど、どうかしら?」


 複雑な表情を露にするボス、私が初めて見る真剣なものだったわ。


 でも、此処からが本題よ。


「アナタの話が決まり次第、ジュレにもお見合いをして貰うわ」


 そう私が口にした瞬間、ボスに変化が現れた。口をグッと閉じ、()を握り締める。


 ボスが閉ざした口を私に開いた。


『姐さん……後生です! 俺には、俺はジュレに惚れてやす! どうか、どうか……今回のお話、見送って頂けないでしょうか……お願いしやす!』


 あら? あっさりね。


「なら、仕方ないわね? ジュレ、アナタはどうするの? ボスはこう言ってるわよ?」


 隠れていたジュレを何食わぬ様子で呼ぶ私、ボスからしたら、私は酷い主人(あるじ)なのかも知れない、でも二人とも引かれてるなら、夫婦(めおと)にしたいじゃない。


 少しだけど、仲人(なこうど)の気持ちがわかったわ。


 いきなりのジュレの登場に慌てるボス、そんな二人は凄くお似合いよ。


「私は行くわ。ボス! 今回の事、確りね。幸せにしてあげなさい! いいわね?」


 その場を後にしようとした私にボスが声をあげたわ。


『姐さん。ありあとやんした! 俺はジュレを幸せにしやす!』


 少し無理矢理感はあるけど、私は後悔してないわよ?

 だって、ボスもジュレも私の大切な子だから、絶対に幸せになってくれるってしんじてるもの。


 さて、サトウはちゃんと雑草を抜いてるかしら? 畑にもどりましょっと。

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