楽しい読書タイムに女神の食生活が心配なんですが?
成り行きで手にしたメリアの本を手に、ベットに横になりながら紐解いていく。
家に図書館の本(召喚に関する書物)を持って帰れない私からしたら渡りに船と言った状況だ。
本の題名は『不滅の伝説』如何にもな題名だったが内容は不思議な物だった。
世界を旅するドキュメンタリーだ。私も日本に住んでいた頃、海外のドキュメンタリーをTVで視ていたがそれに劣らない内容が事細かに書かれている。
特に食べれる薬草や見分けにくい毒草、昆虫等の文章には分かりやすい挿絵があり、厚みのある事を忘れる程、私は本の世界に没頭した。
この五次元世界“ララリルル”は丸い惑星ではなく、平べったい六角水晶のような形、簡単に言えばダイヤモンドを重ね合わせた様な形の惑星ではないかと書かれていた。
しかし、この本が書かれたのは最近のようで、実際にこの冒険者が世界を統べてみるのは不可能な事を私は気づいている。
内容は冒険者の十数年をまとめた物だが載っていた地図をマップで重ね合わせた結果、残念ながら冒険者の歩いた道は10分の1にも達していないのだ。
更にそれは半径で見たマップであり、私のマップを全開にして確認すると悲しくなるほどに少ない探索範囲であった。
「ララリルルって……地球より大きいのかな?」
『そりゃあね? 地球を三つ重ねた広さがあるから一代で全てを見て回るのはむりよ』
『お風呂以外にも出てこれたんだ?』
アララの声に素っ気なく反応する私に不満そうな声が聞こえてくる。
『私はお風呂の神様じゃないのよ!』
『ねぇ、アララ? この冒険者はいつまでに旅をするのかな』
『無視からの質問? そうね、私にもわからないわ、でも近々旅は終わるわ』
アララの言葉を私は理解した。旅が終わる……死期が近いと言う事だ。
『この冒険者はいつから旅してるのよ? アララなら知ってるでしょ?』
『彼は、源雄大カミルと同じ日本人だった人よ、既に70年もの時間を“ララリルル”の調査に費やしてるわ』
『私以外にも転生者がいるのッ!』
『カミルみたいな転生者とは、違うわね前世の記憶は無いわ、でも源は強い意思を抱いたままに此方の世界に産まれたのよ』
『此方の世界で産まれて記憶も無いのに何で、ひたすら70年も歩いてるのよ』
『私にはわからないわ、何かを遺したかったのかもね。今日来たのは、カミルにお願いがあるからなのよ』
『何で神様が私におねがいなんかするのよ?』
『アハハ、それがね……これなの。えい!』
突如、私の目の前に現れた大量の食材の入ったカゴ。その中に毒草も混じっていた。
『毒草が……どれかわからなくて……』
『アララ? 神様だよね……』
『採るまではわかってたのよ! 草の生命の色の濃さで判断するから、採った後は私にはわからないのよ……せっかくいっぱい採ったのに……』
私の呆れた声に慌てて弁解してくるアララの慌てようが余りに微笑ましい。
『わかったわ、調べて毒草を取り除いてあげる。代わりに見て解る色の能力を私にも頂戴。マップで調べなくてもすんなり薬草採取ができるわ』
『いいですよ? 此れくらいなら全然差し上げます。えい!』
私は『鑑定の瞳』を手に入れた。アララは気付いてないが、この世界でアララと同じように色で危険が解るのは有り難い事なのだ。とは言え……
『アララ? 雑草とか食べられるけど苦いだけの山菜とかも混じってるんけど……いいの?』
『えっ! 食べて美味しいのだけをお願いします……はぅ~』
全てのチェックを終えるとアララは食材の入ったカゴを回収すると明るい声で『ありがとうカミル~』と声は消えた。
「アララって、絶対にどじっ子だわ」
便利な能力を更に増やした私はその日、夜遅くまで源の生きてきた証を堪能した。
私もいつか……この景色がみたい。