白と黒の戦いです。
床を突き破り姿を現した私に驚いて目を見開く王様に私は満面のエンジェルスマイルをプレゼントしたわ。
「初めまして。衛兵に何度も話し合いのお願いをしたんだけど聞いて貰えないので直接会いにきました」
私は軽く会釈をするとペンネもそれに合わせて頭を軽く下げる。
白髪に立派な長い顎髭を蓄えた王様は、私達の存在を頭で整理しているのか、数秒の沈黙が続いたわ。
少し小柄な王様はやっと冷静になれたみたいで、息を深く吸った後、王様が喋りだしたの。
「我はベジルフレア王国、国王キングフレアである。話し合いと口にしたが我の元にそのような報告はなかった。して、侵略かそれとも滅亡か、目的を話されよ」
あら? 完全に私達が戦いに来たと勘違いされてるわね?
「私達は謝罪と和解に来たのよ。衛兵が私達を通すまいと道を塞いだから、天井を突き破ってきたの。本来なら扉から入りたかったんだけどね」
私は直接内容を話しながら、交渉を何とかまとめようと必死に頭を働かせたわ。
「和解か、先に宣戦布告をしながら、勝利目前に白旗を掲げると言うの?」
王様の言葉に少し引っ掛かった私は和解の内容を確りと口にする。
「降参じゃないし、敗者は存在しないの。マドラッドは平和協定を同時に望むわ。侵略はお互いに無し、差別も無し、そんな世界を作る為の第一歩なの!」
そう口にするとペンネもキングフレアも驚き自分達の耳を疑うようと私に目を向けたの。
「妾の知らぬところで主は、そんな世界を望んでおったのか!」
「御主、本気で言っておるのか? ベジルフレア王国と魔国マドラッドの平和協定と……はっはっはっ、予想外の答えじゃな」
ペンネとキングフレアの驚いた表情に私が驚かされたけど、掴みは良いみたい。
後は相手が本気で欲しがる物を提示すれば何とかなりそうね。
「因みに平和協定が結ばれたら最高の食材を貿易でベジルフレア王国に販売します、食用油に上質の麦、上質な紅茶の茶葉など、ベジルフレア王国でも簡単には手に入らないマドラッドの特産品なども提示します」
「話が早いな、何故? 我がベジルフレア王国が食材を欲すると考える? 毎日のように多くの食材が雪崩れ込み、賑わう我が国に食糧難と言う言葉は一欠片も無いぞ?」
そう言うと顎髭を触り私達の方を確りと見ていたわ。
「図星だと髭を触るのかしら? 今のベジルフレア王国の市場にどれ程、上質な素材が入っているのかしら、私もライパンで過ごした事があるけど、麦の質は最悪で料理人が必死に焼いたパンですら、そこそこの味だし、一般に売られてるパンは食べられたもんじゃないわ」
私はパンが麦のせいで台無しになっている事実や、脂と油の違いを話してからマドラッドで作ったスコーンとハニーコーンを王様に差し出したの。
「なんだ、これはやけに甘い香りがするが?」
よし、食いついたわね!
「それは四時間前に用意した御茶会のお菓子よ。食べてみれば違いが分かるわ。まぁ毒が怖いなら先に私が食べるけど、食べる勇気があればだけど」
少しの挑発と毒味を先に行うと言う私の発言にベジルフレア王は「いや、毒味は構わぬ、食べるとしよう」そう言うと一口でスコーンを口に運ぼうとしたの。
「待って、どうせなら暖かい紅茶を入れて飲みましょう。私達も落ち着いて話を進めたいし」
自分自身を含む室内にいるすべての存在をビルクの能力で縮めると空間魔法を開いて、空間内にしまってある洋館に王様を案内したの。
私自身も空間を開いて中に入ると王様の私室には誰も居なくなったわ。
私は空間の外と繋がってるから音や雰囲気が伝わるの凄く不思議な感じだけど、何回か使ってる間に慣れっこになったわ。
「なんと、不思議な!」と驚く王様、空間の中には畑があり、人工的に作られた川や水車に風車があり、偽せの太陽にジュレの作った芝生や土の香りが充満して、本当に別の世界に入り込んだように感じたのかもね?
「さぁ、入ってメルリが御茶を入れるしスコーンも暖め直すわ」
私の発言にメルリが喜びの笑みを浮かべて厨房に急ぎ、釜戸に火を入れ、ケトルに水を入れて火にかける。
湯が沸くまでの間をテーブルに腰掛ける私、ベジルフレア王と向かい合わせに座るペンネは少し困った顔を浮かべながら誰かが口を開くのを待っているように見えたわ。
「お湯が沸いたらメルリが持ってきてくれるから、其まで簡単なゲームをしましょう」
私の提案に首を傾げるペンネとベジルフレア王。
私は作製魔法で網目の書かれた板と白と黒のくっついた駒を作り出したの。
そう、私はオセロを作ったの、それから先ずは簡単にルールを説明したわ。
「これはオセロって言ってね。白と黒の駒を使って挟んだら仲間に出来るゲームなの、単純だけど頭を使うゲームなのよ。それと1つ駒を置く度に“しりとり”をしてもらうわ」
“オセロ”と“しりとり”を混ぜたルールを説明して、二人がルールを理解したらゲームスタート。
オセロって意外に白熱するのよね? 楽しい流れが出来るといいんだけど?




