海です。島です! 御泊まりです。
大海原に出た私達はピクシーの船でマドラッドに向かう。
驚かされたのはシードラゴン3体による安定した航海術だったわ。
シードラゴンは簡単に言えば角の生えたタツノオトシゴのような姿をしてるの、サイズは軽自動車と同じくらいで前方からの波を角を海面に出して左右に分断する事で小船を守りながら右と左のシードラゴンがバランスを取りながら先頭のシードラゴンに合わせて進むスタイルをとってるの。
「本当に揺れないわね? 凄い速いし驚きの連続だわ」
小さくなったままの私の言葉にピクシー達がニコニコしながら笑いかけてくると1人のピクシーが口を開いたの。
『まさか、小人になれるなんて、私達の方が驚きました。凄い力ですね』
小人か、言われてみたら確かに人間すら小さくするビルクの力は凄いわね? 最初は使えないと思ったけど、今となっては感謝だわ。
船が海に出て半日の時間が経ち、次第に夕焼けが海に吸い込まれるように消えていく。
私は少しセンチメンタルな気持ちになりながら、小さくなった身体で巨大な夕陽を眺めていたわ。
「おい、カミル。今更だけど? これからどうするつもりなんだ?」
タウリの質問に私の顔を見るナッツとメルリ。
「そうね、先ずは魔王に直接会ってからじゃないと何とも言えないけど、戦闘は回避したいわね」
「やっぱり無計画なのか、ハァ……」
タウリの言葉に動揺するナッツ、そんな時、ピクシー達が島に向かうと言い出したの。
『シードラゴンを休ませる為に近くの島に向かいます』
ピクシー達の言葉を私が皆に伝えると3隻の小船が一番近い島に移動していく。
ピクシー達は普段はマドラッドから島々に貿易をするのが役割になっているらしいわ。
早い話が海のキャラバンって所かしら? その為、安全な島や湧き水がある島もちゃんと熟知してるので本当に心強いわ。
島に上陸して直ぐ元のサイズに戻ると、ある程度の平らな場所に洋館を空間魔法から取り出して設置したの、それから私は夕食を作る為に野菜以外の食材を探しに島にある森の中に入ったわ。
暗くなっていたので、範囲と方角を確りと確認しながらの食材探しもマップがあれば楽チンね。
スカーとデンキチと私が食材探しの担当だから気兼ねなく探せるわ。
タウリは反対したけど、私の強さを一番良く知ってるから結局折れたわ。
メルリはアララとクレレと一緒に調理担当、ナッツにはロクさん達スケルトンと一緒に空き部屋のベッドの用意をお願いしたの。
タウリは「薪のストックが少ないな?」って言って御風呂や釜戸に使う為の薪を探してくれてるわ。
本当に昔から、タウリは御風呂の備品が無くなると直ぐに補充したがるのよね?
因みにピクシー達は樹精霊のジュレとドン・トレントのボスと一緒に畑で野菜採集を楽しむ事にしたみたい。
そんな私も森の中で果実や食べれるキノコや木の実も集め終わったので帰ることにしたの、デンキチも見つけたマンゴーやバナナに大満足みたいで良かったわ。
スカーは良くわからない丸い物を掘り出してきたの、芋? マップには毒の反応も無いので多分食料ね?
何となくテレビでアフリカの先住民が似たような物を食べてた気がするけど、調理法が分からないわね? アララなら知ってるかもしれないわね。
洋館に食料を持ち帰り、テーブルに並べる。
先に帰っていたいたピクシー達が私達の持ち帰った食材を見て眼を輝かせるようにして近づいてきたの。
『お芋様だ! 此れをどうやって見つけたんですか?』
ピクシー達が興味を示したのはスカーの見つけた芋だったの。
「うちのスカーが掘り出してきたの、食べ方が分からないんだけど? アナタ達はしってるの?」
その質問に頷くピクシー達が芋を手に調理場に入るとメルリ達に加わり調理を開始する。
見ていて驚いたのは、料理の腕前と言うよりも、包丁捌きの凄まじさだったわ。
手際よく芋の皮を向き蒸してから潰して調味料と細かくした人参を加えて更にフライパンで焼いていく。
あっという間に芋のハンバーグって感じの料理が出来上がったの。
スカーの見つけた芋は珍しい物ではないらしいの、ただ、成長が遅いので余り数が手に入らない物なのも確かみたい。
テーブルを繋げて巨大な食卓をピクシー達と囲む初めての夕食。
ピクシー達が笑いながら食事をする姿に癒されるわ。
タウリとナッツもメルリとアララの料理に感動してるみたい。
何とも不思議な光景に私も笑っちゃったわ。
とにかく、笑えるうちにマドラッドに到着してなんとかしないと、ピクシー達が泣くのはみたくないもの。




