奇襲は計画的に遣るものです2
朝日と共に吊り下げてたタウリとナッツを引き上げる私とロクさん。
勿論、ナッツは反省してたわ……タウリは納得いかないと少し反抗的だったので、もう一時間吊るしてあげたわ。
それからアララとクレレと交代してピクシーの見張りを代わる私とメルリ。
ピクシー達は意識を取り戻してるけど、話をする気は無いみたいね。
口を閉ざして話そうとしないの、本当に参ったわ。
「アンタ達、いい加減に何か喋りなさいよ? 此じゃ埒があかないわよ」
そんな私の言葉に睨みつけるように視線を向けてくるピクシー達に私も頭を悩ませたわ。
でも、解決の糸口は意外なくらい簡単に見つかったの。
「お嬢様。アララ達も朝食を食べて仮眠するみたいです。私達も朝食を食べて起きましょう」
そう言い用意されたのはハニーコーン、見る度にあの惨劇を思い出すわね。
まぁ、せっかくだし食べるか?
「メルリ、牛乳と器もお願い。あとスプーンもよろしくね」
メルリは不思議そうに言われた物を集めると私の牛乳とハニーコーンを器に入れて混ぜる行為に更に驚いた顔を浮かべたわ。
「お嬢様、そんなグチャグチャにしたらふにゃふにゃになってしまいますよ?」
まぁ、せっかくパリパリに仕上げたハニーコーンをふやかしてる訳だし、そう言う反応になるわよね?
室内に次第に広がる甘い香り、牛乳とハニーコーン互いに混ざり合うと食欲をグッと掻き立てていったわ。
私が美味しそうにハニーコーンを口に運ぶとメルリも恐る恐る口に運んでいったわ。
「メルリ、無理しなくても良いわよ? 見た目が苦手って良くあるし」
余りにスプーンを持った手が震えているのを見かねて助け船を出してあげたんだけど、メルリは「大丈夫です」と言い切ったわ。
そして、口に牛乳で浸されたハニーコーンを入れた瞬間、目を輝かせてくれたの、正直ホッとしたわ。
初めての感触でしょうね? ミルカルシュみたいに牛乳で軟らかい物を更に軟らかくする料理は存在するけど、硬い物を牛乳をかけてふやかす食べ物は無いみたいだし、トウモロコシの粉は余り食べられてないみたいだから、メルリにとって新たな出会いになるわね。
そんな私達の横から聞こえてきた“ぐぅ~”と言うお腹の音、私達はスッカリ、ピクシー達の存在を忘れてたのよね。
「あ、ごめんなさい。お腹が空いたわよね? アナタ達の分も用意するわ」
その言葉に初めて反応を見せるピクシー達、縛ったままでの食事になるので私とメルリで手分けして食事をして貰ったの。
凄い勢いでハニーコーンを平らげるピクシー達の食欲にビックリさせられたわ。
其よりも驚かされたのは食事を食べ終わると涙を流して感謝の言葉を発した事だったの。
『ありがとう御座います……私達はアナタ達の畑から野菜を盗もうとしたのに、なんと慈悲深い……』
う~ん……何か話が変ね? 野菜を盗もうとした……つまり、私達を襲撃したんじゃなく、畑を襲撃したって事なの?
「話が分からないわ? 暴れないなら蔓を取ってあげるけど」
「お嬢様!? 本気なのですか!」
そうなるわよね? でも、私には本当の悪人には見えないの。だから、ピクシー達とちゃんと話してみたいのよね。
蔓を取ってから、互いに向き合い話し合いを始める私達、ピクシー達は何故か正座で並んでる姿に驚愕させられたわ。
当然のように頭を下げるリーダーであろう立派な角を生やしたピクシー、体は小さいのに嫌味な程に立派な体型に自分と見比べた瞬間に敗北感すら感じる程なのよ!
「黙りだったのに急に喋りだしたわね?」
『喋れば罪を自白したくなりますので、捕まった時点で言葉を飲み込み只、処罰を待つつもりでした』
なんだか、人間よりよっぽど誠実じゃない? 魔王は一様、悪者の筈よね?
「魔王の手下にしては随分と低姿勢ね? 何でこんなに礼儀正しくて誠実なのに畑泥棒を働こうとしたのよ?」
良くわからないけど、遣りたくて遣ったって、感じがしないのよね。
『それは……』
そこから分かったのは魔界の農産物の不作と魔王が間違えて世界に宣戦布告した事実だったの。
魔王は軽い気持ちで魔王らしい登場の練習をしてたらしいのよね。
そんな時、誤って世界と話が出来るマジックアイテムを起動させちゃったのね、知らぬ間に世界の数ヵ国に宣戦布告したもんだから、慌ててマジックアイテムを壊したらしいの……
マジックアイテムで謝れば良かったのに後の祭ね。
『と、言う訳で今も魔王様は泣いてまして、ザカメレア王国を含む三か国に謝る為に旅をしてまして、1つ目の国は許してくださり、ザカメレア王国にも謝りに来たのですが野菜の匂いに釣られてしまい……本当にすみませんでした』
内容が内容だけに何とも言えないわね……。
「取り敢えず、謝りに行きましょう! そう言う事なら話は急いだ方がいいわ!」
厄介だけど、ピクシー達は悪気はないし、見捨てられないじゃない。
当たって砕けろのザカメレア国王に謁見大作戦ね!




