図書館デビューなんですが?
二度寝を愛情というサーベルを手にママの必殺技『愛する娘に百叩き』が私の体に炸裂する。
二度寝に失敗した私は取り合えず着替えを済まし、いつものように森に向かおうと考えていたの、が……今日の私には別の目的があった。
「ふふふ、私が二度寝をしてまで、時間を潰した理由、それは図書館にあり!」
家の本棚を制覇した私は、次に図書館を制覇する事に決めたのだ!
家には剣士になる為の本は多いんだけど、召喚に関する本が一冊もなかったのが理由ね。実際にタウリが召喚に関する文献を読み、それを理解していたら召喚の儀で違う結果になったかもしれない。
村で召喚に関する文献が無い家など私の家くらいだから、7才になるまでに皆が読む基礎すらなかったタウリは最初から召喚出来る訳がなかったとも言える。
悔しいけど、タウリの件はパパとママにも責任があると言わざるおえない。
私は知識を武器にすると決めた! なんせ特急強化のお陰で体力と筋力はエクササイズレベルで十分だからね。
「と、言う事で図書館に突撃!」
勢いよく開けられた図書館の扉。その先に待つ大量の書物に私は期待で胸を膨らました。
「コラっ! クソガキ!! 扉は静かに開けんかァァァ!!」
私はいきなり怒鳴られ、如何にも頑固オヤジ……いや、頑固ジジイと言うべき白髪に眼鏡のじい様に外に放り出された。
「何すんのよ! 痛いじゃない」
声をあげる私に対して注意書を指差した。
ーーー
●『扉は静かに開けましょう。そうしないと叩き出す』
●『本は大切にしましょう。そうしないと叩き出す』
●『図書館では、静かに。そうしないと叩き出す』
●『老人は大切にしましょう。そうしないと出入り禁止』
ーーー
「最後のは職権乱用じゃない! 横暴よ」
怒りを露にした私の言葉に頷くじい様。
「クソガキにしては、口が達者だな、それで何をしに来た? 此処には絵本は無いぞ。あるのは挿絵のない文字の書かれた本があるだけだ。村の新しい図書館にいきな。あっちなら、絵本の一つ二つあるじゃろ」
じい様……私に絵本ですって! 私は……4才……確かにじい様は間違ってないわね……忘れてたわ。
「じい様! 私は絵本が欲しいんじゃない! 知識が欲しいの、全ては文から歴史は伝えられる。私の求める物は言葉じゃなく形なの! 絵なんか要らない、難しいなら理解するわ!」
「ふん、何処で覚えたか知らんが、そんだけ喋れるなら劇団にでも行け? 口でなんと言われようが儂は信じん」
クッ、やっぱり頑固ジジイだわ!
「なら! 一冊本を貸して! それを理解できたか出来ないかで今後の出入りを決めて! 口で解決はしないんでしょ?」
ギロリと睨み付けるような眼を向けるじい様は無言で図書館の中に入って行ってしまった。
私の図書館デビューは、じい様のせいで失敗に終わった。
悔しさが残る私は手をグッと握りしめたがその手をゆっくりとほどき、図書館に背を向けて歩き出した。
「待て、あんだけ大口を叩いたんだ。汚したり盗んだら赦さんぞ」
私が後ろを振り向くとじい様が二冊の本を手に図書館から此方に歩いてきた。
・『召喚の全て』
・『使い魔を知るために』
「ふん、ミルシュの家には、置いてない本を探すのに時間がかかった。なんせ、そんな本を借りる奴など、この村にはいないからな、読み終わったら返しにこい、因みに貸し出し期間は二週間だ。いいな」
じい様は片手を振りながら後ろを向くと静かに図書館に帰っていった。
悔しいけど、格好いいじゃん……
私は召喚の知識を手にいれる第一歩を手にいれたのだ。
「やったァァァ!!」
「うるさいぞ! クソガキ!! 早く帰れ。あと確り読めよ」
じい様なりの活も貰い私は本を秘密基地に持ち込み。日が暮れるまで読書に没頭した。