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旅の最中なんですが……

 本来なら最高の朝になる筈だった私は安酒のせいで、強烈な二日酔いに襲われていたの。


「ううぅぅ、何て無様なのかしら……酒に飲まれる何て……」


 酒に強い自信があったけど、心を打ち砕かれた気分だわ。


「あ、あの……お嬢様? 本当に二日酔いだけですか」


 私を心配してくれるメルリ何て優しいのかしら。

 それに対して私より遥かに少ない酒の量でへばったタウリとナッツ……情けないわね? 男なら女に負けないくらい強くなりなさいよ!


 そう、私は昨夜のバーベキューで()と飲み比べをしたの。


 最初は遊び気分だったんだけど、ククルペンのメンバーと飲み出してから、記憶が曖昧なのよね。


 最後の相手が何故かアララだった事は覚えてるけど、大瓶を6本くらい開けた辺りで寝ちゃったみたいで。


 アララも二日酔い見たいで空間魔法(ストッカー)の洋館の中で魘されてるみたいだわ。


 とにかく今は、酔い醒ましの為に横になってるの。

 馬車の揺れが辛いから風魔法で身体を浮かせて、馬車酔いはしないで済みそうね。


 後ろのククルペン一座の馬車は……何でもないわ。

 説明は要らないくらいに苦しそうな声が聞こえてくるわね。


 馬車を真っ直ぐに走らせる私達の後ろから、猛スピードで駆け寄ってくる馬の足音、次第に近付いて来るのが分かるわ。

 峠道だったので仕方無いので馬車を端に寄せて先に行かせようとしたの、でも予想外の事が起きたのよね。


 私達の馬車を数台の馬車が追い越したの、それはザカメレア王国のマークが描かれた馬車だったのよね……嫌な予感しかしないわ。

 そんなザカメレアの馬車が少し開けた道で停車すると次々に兵士達が馬車から降りて武器を手にしてるのが分かったわ。


「メルリ、あれって、あれよね? 私達に止まれって言ってるのよね?」


「多分そうだと思いますが? 些か乱暴な遣り口ですね。どうしますか、お嬢様?」


 どうするもこうする無いわよね? 私達だけなら、あんまり気にしないけど。今回はククルペン一座の人達もいるからなぁ。


 私達の馬車が距離を保ったまま停止すると後ろのククルペン一座の馬車も更に距離をあけて停止したの。


 相手の出方を待つしかないと判断した私は馬車から降りたの。


 馬車を降りたのを確認したザカメレアの兵士達が直ぐに周りを取り囲むと私達の目の前で一人の男が其を声に出して読み上げたの。


 内容はザカメレア王国の領土内での盗難についての逮捕状だったの。


 見に覚えが無いわよ……私がいつ盗人になったってのよ?

 明らかに誤認逮捕ってヤツじゃない!



「ふざけないで! 私達は何も盗んでないし、ザカメレア王国に迷惑を掛けた覚えもないわ!」


 そんな私の言葉を無視するように槍を向けるザカメレア兵に段々我慢が出来なくなってきたの。


「上等よ! 私達にいちゃもん付けて来たんだから覚悟は良いわねッ!」

「お嬢様? ワザワザ争わなくても多分大丈夫です」


 何よ? メルリったら冷静ね。何をする気なのかしら?


 そんな時、後ろから馬車が動き出す音が聞こえたの。

 ククルペン一座の馬車を見ると反対方向に向きをかえて走り出してたのよね。


「お嬢様、どうやら……盗人は彼等みたいですね?」


 いやいや、いきなりそう言われても、ただ怖がっただけかも知れないし……参ったわね。


「取り敢えず止めてくるわ。兵隊さん達には待ってて貰って。スカー、デンキチ! 馬車を止めるわよ」


 影から飛び出した二人と共に逃げる馬車を追い掛ける私、普通の馬車で私達から逃げられる筈ないわ!


 でも、そんな余裕が仇になったの……


 ククルペン一座の馬車から私達に背を向けてお尻を突き出した魔物(モンスター)……嫌な予感がするわ。


 黒い毛に白いラインの入ったあの姿……大型犬と同じくらいのサイズのスカンクがいたの。


 そして、遣られたわ……目が痛いし、鼻が曲がりそう、そうよ。私達はスカンクのガスにやられたの……最悪な気分だわ!


「ゲホッゲホッ、臭い……なんなのよ! もうーーッ!」


 私の前からガスが無くなると同時にククルペン一座の馬車も姿を消していたわ。


 その後、メルリが私の身分を証して旅の途中でククルペン一座と出逢った経緯を軽く話していたわ。

 信じたくないけど、ミルホ達はお尋ね者みたい。

 ククルペン一座と言うのも仮の名前らしいわ。

 詳しくは聞かなかったと言うより聞きたくなかったので話を聞き流して、ザカメレア王国迄を兵隊さん達と一緒に進む事になったの。


 私の身分を聞いて謝罪してきた隊長さんは凄く親切な人で、年齢は見た感じで30くらい、顎髭にスキンヘッドの強面で、ガッチリした体つきとインパクト十分な人だわ。


「本当に申し訳無かった。自分はカルメロと言うんだが、我らは最近起きた関所の強行突破の犯人を捜していて、ミルホ一座に似た一団が町を訪れたと聞いて急いで駆け付けたんだ」


 関所の件は言わないでおこう……犯人が私だと解ると不味いわね。


 その日、夕暮れ間近の空の下、私達はザカメレア王国の門を潜り、王都カルダモへと辿り着いたの。


 カルメロ達に別れを告げ、広い空き地を見つけた私は洋館を取り出して、やっとの思いで一息ついたわ。


 スカンクのせいで最悪な気分だわ。

 早く御風呂に入って寝たいわ。

 

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