ケンカとホットケーキに魔王なんです。
朝から賑やかな声に目が覚めると不思議な光景が目の前に広がってたのよね……
目の前でアララ(女神)とビルク(魔神)が啀み合ってたのよね……普段は猫の姿のビルクが猫紳士になってるし……なんなのよ?
ことの発端が分からない私は取り敢えずメルリを呼び、騒ぐ二人を力づくで黙らせると正座させたの。
アララとビルクの立場は分かるけど、正直、喧嘩して欲しくないのよね?
単純な話だけど、アララは本気になると不味いし、ビルクの能力は確かに小さくすると言う能力だけど、まだまだ何かありそうな気がするし、室内でいきなり女神と魔神が喧嘩とか、どんだけ神話の世界なのよ・・・
取り敢えず大人しくなってから話を聞くと、アララの言い分は、ビルクが朝食を取ったと言い掛かりをつけてパンを食べたと言うし・・・
ビルクの言い分は、確かにアララにそう言ったそうだけど、先にパンを取ったたの一点張り、しかもパンは一個も食べてないってハッキリ口にしたのよね?
不思議な話で、朝のパンが消えたのに二人とも食べてないって言うのよ? 二人がワザワザ、喧嘩してまで嘘をつくとは思えないし。
悩んでる私の見てる前で段々と強い口調になり、次第に言い争いを再開させる二人。
アララが怒りを爆発させて、有り得ないくらい大きな炎を作り出そうとするとビルクがそれを見えない程小さくしてアララを挑発するしで大変だったわ。
「二人とも止めなさい! いい加減に怒るわよッ!」
「あと少しでこの魔神に行いを悔い改めさせますので!」
「ふざけんなッ! アララの分際で魔神の恐ろしさを教えてやる!」
ガシャン、ガジャン……
「あぁぁぁ!」
「ナアァァァ!」
「あ・ん・た・達……表に出なさいィィィッ!」
二人はとんでもないミスを犯したの……それは私の大切なリビングに置いてある本棚にアララとビルクの攻撃が当たり、私の見てる目の前で本棚が倒れて、更に花瓶が倒れて数冊の本が水浸しになったの……シバくわ。絶対に泣いても赦してあげないんだから!
「アンタ達……二人とも覚悟はいいわね? 今回は本当に怒ってるんだから!」
私は多分、鬼より怖い表情をしていたのかもしれないわ。神の文字を持つ二人が震えてたもの?
即座に二人が別々に攻撃を開始すると私はそれを軽く受け流したの。じい様の方がずっと厄介な攻撃をしてくるわ、嘗めてるのかしら?
「ぬるいのよ……本気で来ないなら、私から行ッくわよォォォ!」
私の言葉に首を横に振る二人、そんな私の言葉に迷いなんてないわ。二人にお仕置きなんだから!
二人の攻撃は単調であり、次の攻撃は簡単に予想がつく。つまり、私より早い攻撃を行わない限り全て躱せるって事なの。
次々に繰り出されるアララの火炎魔法とビルクの雷魔法、そんな凄まじい連続魔法も私の前では意味ないわ!
私の掌に作られる激しい炎の塊、間違いなく二人は死なない事を知っているわ、間違いなく痛いし熱い……寧ろお仕置きの更に上のお仕置きタイムね。
「二人まとめてッ! 反省しなさいッ!」
「「うわぁぁぁぁッ!」」
ズゴォォオオオオンッ!
二人を反省させた私は台所に行くと、テーブルの下から寝息が『スー、スー』と聞こえたの。
テーブルの下に眠るクレレ……口に蜂蜜、床にパンの欠片……犯人よね?
「メルリ……クラブスパイダー、ううん。ダブルスパイダーの糸を持ってきて」
うつ向き震える手で私に渡された糸でクレレを一気に縛り上げると目を覚まし青ざめるクレレ。
「な、何でし……何で縛られてるでしか?」
「パン食べたわね……?」
バレたと観念したクレレは当然、お仕置きしたわ。
可哀想だけど、3人仲良くなるまで庭に放置して、私は少し遅い朝食タイム。
それから3人の反省を確認して皆で片付け、濡れた本はお日様に乾かしてもらって一件落着。
それから3人の為に特別なメニュー作りをしてあげたの。
小麦粉と砂糖、牛乳、卵、もう分かるわよね?
ふっくらはしてないけど、ホットケーキをメルリに焼いて貰ったの。
蜂蜜をタップリかけたら完成よ。
仲直りには甘いものが一番よね。
アララもビルクもクレレが犯人だと分かると笑ってたわ。
私も少し反省ね、やり過ぎたわ。
そんな素敵な御昼が過ぎた時、慌ててラッペンが洋館にやって来たのよね?
「おじいちゃん? 慌ててどうしたのよ」
息を切らせたフレイムドラゴンの姿に余程慌てているのが直ぐにわかったわ。
メルリに水を運んでもらい、ボルドを休ませている間にラッペンから話を聞く事にしたの。
ラッペンは私に「魔王が宣戦布告してきたんだ」と話してくれたわ。
…………う~ん、確か今の魔王って?
「へぇ~それで?」
私の反応に寧ろ驚くラッペン、でもね……魔王の体もクレレが間違えて、おじいちゃんのパーティーメンバーにわたしちゃってるんだよね?
話だけ聞いたら、魔王が神に怒って神を信じる人間に宣戦布告らしいのよね?
「それで、王が魔王と戦う者を捜していてな、カミルお前もその一人に選ばれたのじゃ!」
は? ……ありえないわ。




