作戦、ライパン、最後の八つ当たりですか?2
私の事を知らない新米かしら? 勢いよく取り囲んでくると、その内の一人が剣を向けてきたのよね……少し不快になってきたわ。
「オイッ! 女。騒ぎを聞いて警備隊まで駆け付けたんだ。抵抗はやめて投降しろ!」
はぁ~懐かしすぎるわね、以前と変わらないこの感じ……しかも8人で私に向かって来るなんて!
私達にそう言い偉そうに話す18歳くらいの青年に本当に溜め息が尽きないわ。
「今、忙しいのよ? 後で話を聞いてあげるから、邪魔しないで!」
それより、あのボルボルム伯爵とかって奴に絡まれてた眼鏡っ子の方が大切よ。
「大丈夫?」と声を掛けると少し状況を理解したみたいね? 私の顔を見て頷いて見せてくれたの、まだ泣きそうな顔だけど、取り敢えず一安心ね。
さて、あとは……お仕置きタイムね!
警備隊の方を向くと苛々を表情に出す青年がちゃんと待ってたの。少しは増な奴みたいだわね。
「待たせたわね? と言うより、もう帰って良いわよ。今回は許してあげるわ! 感謝しなさい」
私、優しいなぁ。やっぱり心の成長が大切よね。ゆとりが無いと器が小さくなるもの。
「ふざけんなッ! なんで俺達がお前みたいな少女に命令されないといけないんだ!」
あら、反抗的じゃない? また剣を向けてるし……メルリも我慢の限界みたいで顔付きが……眉毛ピクピクしてるわね。
「分かったわ、なら……手っ取り早くいきましょうか」
それから3分と掛からなかったわ。カップうどんなら、まだ硬めなくらいの時間であっさり警備隊を地面にねむらせたの。
因みに、警備隊には、私は何もしてないわよ? メルリとデンキチ、スカーで十分過ぎたもの。
剣を向けてきた青年には、たっぷりと御灸を据えたけど、まぁ手加減はしてあげたわ。
それから青ざめた顔のルフレ叔父様登場ね。
私が青年の背中に片足をのせて、指をパキパキとしてる姿にかなり慌ててたわ。
「お久し振りですね……ルフレ叔父様……どうも、以前と変わらない様なんですけど? どういう事かしら?」
「や、やぁ……相変わらず、容赦が無いな・・・」
ルフレと久々の再会なのに、教育不足(?)の警備隊のお陰でルフレの顔が真っ青よ。
それから私は眼鏡っ子をルフレに預けたの。ちゃんと逃がさないように念押ししたわ。
「さて、皆行くわよ」
その言葉にメルリ、デンキチ、スカーが私の後ろに続く。慌ててルフレが私に尋ねたのよね?
「何処に行くんだカミル?」
今更ね、答えは一つよ!
「貴族を一つ本気で潰すわ? 止めたいなら構わないけど、手加減しないわよ。ルフレ叔父様……」
久々のエンジェルスマイルにルフレの額から冷や汗がながれてたわね。
ルフレはやっぱり止めに掛かったけど「ごめんなさい」して、寝てもらったわ。後で改めて謝らないと、さて! 貴族退治ね。
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ーーボルボルム伯爵邸前。
「挨拶は派手に遣らないとよね」
身体強化魔法&物質変化魔法! 冷凍魔法、火炎魔法!
私の全身を鋼の強度に、体の重さを鉄の様に、更に門ではなく壁を凍らせて、灼熱の炎を拳に纏わせてからの一撃。
……ズガンッ!
「綺麗な氷の花火になったわね? さあ、始めるわよ!」
私の一撃は壁にデンキチも容易く入れる程の巨大な穴を作り出したわ。
慌てて姿を現したボルボルム伯爵の使用人達は私が悪魔にでも見えたのかしら、凄い顔で逃げていくわね?
そして姿を現したボルボルム伯爵。
「な、何だ此れ! 貴様、此処が何処かわかってるのか」
知らないわよ……分かる事があるなら一つだわ。
「アンタこそ、状況分かってるの? 私を本気で怒らせたんだからね! アンタからの喧嘩をわざわざ買いに来てあげたんだから、感謝しなさい!」
慌てるボルボルム伯爵は使い魔を呼び出したのよね。
呼び出されたのは、砂人形って珍しい使い魔だったわ。
見た目は顔の無い砂人形で手足が長めで口も無いみたいね?
しかも、邸の庭に凄い数……流石に驚いたわ。
「見たか。四人でどうするつもりか知らんが! このボルボルム伯爵に逆らった事を後悔させてやるわ!」
「はぁ・・・まぁいいか」と私の呟き。その理由マップに写るボルボルムの使い魔の姿が一つであり、後は単なる砂人形だと理解できたからなのよね。
さくさく終わらせましょう。うんそうしよう。
「取り敢えず上位水魔法!」
勢い良く打ち出される膨大な水が砂人形を次々に洗い流して行く。爽快な光景だわ。
「デンキチ。宜しくね!」
『ガッテン! ヌガァァァァ!』
大量の水の中を凄まじい速度で移動するデンキチ。
水に濡れて動けない砂人形に必殺“デンキチラリアット”を食らわせる。
力尽きて姿を現した砂人形。
最後に残った大量の水を吸い込んだデンキチがみるみる巨大化してボルボルム伯爵を脅しに掛かったわ。
後ろに隠れてた男の子と震えて抱き合う姿に仕方無いから許してあげることにしたの。
でも、デンキチが巨大化したままボルボルム伯爵邸に寄っ掛かっちゃったのよね……
ズガガガン……ガラガラ……
ボルボルム伯爵邸……お釈迦ね……
駆け付けたルフレ達が慌てると、ボルボルム伯爵が私を捕まえる様に言ったけど、メルリと眼鏡っ子が先に喧嘩を売ったのはボルボルム伯爵であると証言して決闘の結果、邸崩壊となり罪にはならなかったわ。
貴族の決闘って何でも有りなのね?
ただ、巨大化したデンキチを見た大勢の人が 『最小の召喚師』として私、ミルシュ=カミルの存在を知る事になったの。
ルフレは後始末で残業中……メリア御姉ちゃんに悪い事したわ、少し反省ね。




