フルコースと不審者なんです?
成り行きで、魔神の力を手にした私、ならば・・・フルに活用するしかないわよね?
私は考えたわ、そして思い付いたのビルクの全ての物を小さくする事と元の大きさに戻す能力、最初はショボいと感じたけど使えるわ。
早い話が私の空間魔法と相性がいいのよ。
そして、一度やってみたかった事があるわ、それはマジックショー。
全て小さくできるなら、デンキチもって考えたけど、使い魔を消して見せても仕方ないのよね?
まぁ・・・試しにメルリを小さくしてみるかしら!
「メルリ、ちょっとそこに立ってて」
メルリを呼び出し試し目隠しをつければ準備完了よ。
そう小さくなって貰うことにしたの……メルリに説明はしてないわ、嫌がられて無理矢理なんて出来ないもんね?
と言う事で……始めるわ!
「我が名はカミル、魔神ビルクの主であり、魔神の力を手にした者なり、我に従いて力を示せ! 全てを縮めよ“チルク”」
次第に小さくなるメルリ、お人形サイズ迄小さくしてから、目隠しを取って貰ったわ。
「お嬢様? 何をしたいのですか・・・お嬢様が巨大幼女に! これは綺麗な肌が下から見えるなんてアリです。寧ろアリですわ!」
言い方がなぁ……
「メルリ……踏み潰すわよ?」
本気の声にガタガタ震えるリトルメルリを取り敢えずテーブルにのせる。
色々聞いてみて問題はないみたいね?
テーブルの御菓子を凄まじい勢いで食べるメルリは満足そうに笑みを浮かべてるし、寧ろ巨大に見えるお菓子なんて素敵だわね。
閃いたわ、本当は色々小さくする能力で世界一のマジシャンになろうと思ったけど、計画変更ね。
私の計画それは・・・蜂蜜専門店を開業する事になったわ。売り歩きは難しいし、特定の場所にお店があると安心と安定が有るものね。
「あ、そうだ。久々にアララに無理を言ってみるかな?」
「お嬢様ーー! そろそろ戻してくださいーーーー!」
メルリを元に戻し、早速ライパンにいるカッシュに手紙を届けて貰う事にしたの。
内容は簡単なカップケーキや小皿程度の料理の依頼よ。
まぁ誰でも分かるわよね? アララをご飯で釣る作戦よ。
少し意地悪なスパイスも用意したし。絶対にアララは頷いてくれるわ。
夜になり、ガルーダに乗ったメルリがカッシュの一口料理をバスケットいっぱいに持ち帰って来たわ。
「頼んだ分より多いわね? 代金たりたの?」
流石にビックリの量を持ち帰ったわね? 渡したバスケットと同じのがもう一つなんて、何があったよ……
「お嬢様、それなんですが? カッシュさんがお嬢様から金は貰えないと自分の懐から食材を買ってしまいまして」
はッ? カッシュのやつ、やるじゃない。予想外だけど。
「それと……頼んだものを全て、一口と言わずに普通サイズに作ってくれたんです……お嬢様の頼まれた物と違うのです、申し訳ありません」
寧ろ、好都合だわ!
「メルリ……大丈夫よ。今度カッシュに御礼を言わないとね」
そのまま作戦決行なんだから!
アララを呼び出して、最初に話をしたわ。私が欲しかったのは、マップの検索機能なのよね、今のままだと、自分の周りや行ったことのある範囲は分かるけど、他の場所に何があるのかを知らずにマップを進めるのは時間の無駄だもん。
因みに……アララの答えは……
「ダメですよ、これ以上、カミルに力を与えたら、パワーバランスが崩れちゃいます!」
少し悩んでくれたけど、やっぱり駄目だったわ。
仕方ないので……作戦プランをBに変更したわ。
作戦プランBは食いしん坊一本釣り作戦。
アララに簡単な料理を食べて貰いながら再度交渉……結果はダメね、今回は頑固みたいね?
しかし此処からが本来のプランBなんだから。
アララの目の前に並ぶフルコース、それを見つめるアララをデンキチが押さえる。世に言う尋問スタイルね。
そして、アララの目の前に並べた料理を一つ、一つ丁寧にハンカチを被せてから縮めていったわ。
アララの悲鳴……残念ね、私のお願いを聞かなかったから、アララ選択をミスったわね!
などと、悪役気分を楽しんでから、アララに一口、カッシュの特性フルーツタルトを食べさせてあげたの……
それからハンカチを被せたわ。
アララの泣き顔……あ~私、罪悪感を感じてるんだ……
最後に私が席を立ち、メルリが入れ違いに部屋の中に入ってアララと話を開始する。
交渉に関してメルリは、本当に凄いの! このプランBもメルリの発案だったんだけど、私だけだったら絶対に出来なかったわね。
そして、席に戻る私にメルリがアララにフルコースを食べさせて欲しいと口にする。それが合図、つまり……アララが観念したのね。
少し可哀想だけど、アララには代わりにフルコースを嫌って程、堪能して貰うわ事にしたわ。
アララ……本当にごめんね。
世界を知れば何かが見える。な~んて、言われた事があるけど?
実際に全ての道を知る者を開いて新たな検索能力を試してみたの。
最初は養蜂場を検索。
幾つかの森が文字の一覧に出てきたわ。更にモンスターの養蜂場に絞るとビックリ、私の他に1件ヒットしたわ、調べる価値があるわね?
喜びニヤける私の服を引っ張るメルリ。
アララへのフルコースを忘れてたわ、ナイス! メルリ。
「アララ、本当に無理を言ってごめんね?」
「本当ですよ、このままじゃ、私が怒られちゃいますよ……まったく」
食い気に負けた女神のセリフとは思えないわね? まぁ良いわ!
「アララ、少し目隠しをするわよ。待ってて」
料理を元のサイズに戻してから、アララを小さくする。
当然、アララは予想外よね? 確りとアララをテーブルに掴み上げて立たせたわ。
「な、なんですか、体が掴まれて、カミルーーーー!!」
「落ち着きなさい? もう目隠しを取って良いわよ」
アララが驚く姿に私とメルリは微笑んだわ。
巨大な料理の山が広がるテーブル、まるで海に浮かぶ宝島見たいよね。
アララが食べきれないと言うまで堪能して貰ったわ。凄く驚いたのは、アララが体より遥かに多い量を食べて高速消化していた事ね……女神って凄いわ。
アララが満足してくれたので、私も遠慮なく能力を使えるしバッチリね。
その日、アララは洋館に泊まっていったの「朝御飯も楽しみにしてます」と満腹に食べる気満々だったわ。
夜になり、皆で御風呂に入る最中だったわ、突然マップに警戒の点滅が出てきたの。
私はタオル一枚を身体に巻いて、反応に向けて走り出したわ! だって、反応は洋館の中からだったんだもの!
そして、見つけた漆黒のローブを身に纏い、白髪の長い髪と長い髭、赤く光る水晶の付いた杖を手に此方を見つめる眼鏡の老人……どう見ても不審者ね。
乙女の入浴中に家に忍び込む変質者もとい、不審者には手加減はしないんだから!
「うん……はて? た、たんまじゃ! ギャアァァァァ」
私の速攻パンチ【強】が炸裂し壁に叩きつけられる不審者。
また一つ悪が消えたわね。って! 遣り過ぎた……相手が不審者でもじいさんだったの忘れてた……埋めるしかないわね。
「なんて、考えてる場合じゃないわ、大丈夫!」
私が駆け寄ると目を回して気絶してるみたいだけど、息はしてたわ。間違いなくセーフね?
「しかし、頑丈なじいさんね? まぁ体力ないと不審者も出来ないわよね」
念の為、すぐにジュレを召喚、蔓で縛り上げて簀巻きにしたわ。
さぁ、どう料理しようかしら?




