使い魔も皆も大活躍なんです。
洋館に引っ越して始まった楽しい自由ライフ。
しかし……私は既に壁にブチ当たっていた。
スカルジャイアントの“ロクさん”とワイト達は食事を取らないので問題はないが虫モンスター達の食事量が凄いの……
まぁ、今までずっと閉じ込められてたんだし仕方無いわね?
「う~んでも、不味いわね、此のままだと食糧が底をつくわね」
悩んだ私は虫モンスター達の特性を見直す事にした。
先ずは“センチピード”
この子達はムカデのモンスターで、岩も砕いちゃうくらい強い顎と長い体が特徴ね、洋館には成虫のセンチピードは2体で後はプチセンチピードが少しね。
次は“クラブスパイダー”
この子は凄く細い糸を紡げるの余りに強固な糸だから、切る為に手がハサミになってるのよね。見た目は蜘蛛でも、真ん丸な人懐こい瞳が特徴的だわね。
それと成虫のダブルスパイダー、元からハサミは2本なんだけど……とにかく大きいの糸もクラブスパイダーだと切れないくらい強くなってるわ。
「何か出来ないかしら?」
「珍しくお悩みですね? お嬢様らしくないですね」
悩む私の顔を見てにっこりと微笑むメルリ、なんか考えたがあるのね。
「やけに嬉しそうね?」
メルリの上機嫌な理由は驚くべき物だったわ。
クラブスパイダーとダブルスパイダーの糸は服を作る際に凄く重宝される素材だったの。
でも、この子達は本来は気性が荒くて簡単には糸が紡げないらしくて、移動した後の巣から古い糸を紡ぐのが一般的だと初めて知ったわ。
洋館の前の主人の使い魔だったのかは不明だけど? 私の言うことは聞いてくれるみたいだし問題はないわね。
寧ろ“魔物を支配する者”の力なのかしら?
取り敢えずメルリから聞いた情報は使えるわね。
次の日、私は糸を軽く束にして準備を整えるとメルリを呼んだの。
「皆、留守番宜しく! メルリ、直ぐにガルーダを呼んで。お爺ちゃんの所に行くわよ」
メルリと共にガルーダに乗り込むと大空を一気に進んでいく。
王都ライパンのトリム邸に到着した私達は急いでラッペンに交渉を持ち掛けたの。
「お爺ちゃん、凄くいい話を持ってきたわよ」
私の言葉にラッペンは真剣な顔をしながら「蜂蜜の販売開始か?」と、口にしたわ……ごめん違うわ……
「違うのよ、クラブスパイダーとダブルスパイダーの糸を売りたいの、当然、新品の紡ぎたてよ」
そう言い朝から紡いだ束をラッペンに見せる。目を見れば分かるわ! ビンゴよ。
「これは紛れもなく……どうやって見つけたんだ、カミル?」
「企業秘密よ!」
私のどや顔にメルリは溜め息を吐きながら、口を開き固まるラッペンの顔を見ていたわ。
其処から交渉スタート、当然だけど、物流ルートや販売ルート何かの見極めは私には、まだ無理だし、メルリは裏のルートには詳しそうだけど、表では無理そうだった事を踏まえてラッペンを頼ったの。
「そうだな、500ロンドって処か?」
……? 500ロンドって安くない!
「これ一つ500ロンドなの!」
慌てる私を見て驚くラッペン。そんな時メルリが耳打ちした。
「お嬢様、糸は10センチが単価です、つまり、10センチ500ロンドと言う意味ですわ」
はぁ! 糸が10センチ500ロンド? 有り得ないわ……
私がラッペンに持ち掛けたの糸は高級防具の素材であり、一部のセレブの間で超高級ドレスの素材として取引されていたの、他にもアクセサリー等を束ねたりと誰もが欲しがる素材だったわ。
そんな時、慌てて屋敷に飛び込んでくる男性。
いきなり入ってきたからビックリしたじゃない。凄い汗ね、何事よ?
「トリム様、大変なんです! 掘り進んでたトンネルが落盤で、まだ中に作業員達が!」
「な、何処のトンネルだ!」
「ライパンから直ぐのガルゴ山です。中間から崩れたと連絡があって、中にまだ15人ほど作業員が残ってますが、急がないと酸素が!」
ラッペンの表情が曇るのがわかった。不味い状況なんだ。
「お爺ちゃん、私も行くわ。案内して」
役に立てるかなんかわからない。でも、じっとなんてしてられない。
急ぎ向かったガルゴ山では、大勢の作業員が岩を退かしながら、必死の救出活動の真っ最中だったわ。
「その岩を動かしちゃダメッ!」
私の声に一旦手を止める作業員達、私はマップを開くと同時に鑑定の瞳を使って、安全な岩を次々に指示していく。
最初は従ってくれず、新たな崩落を誘発してた作業員達も私の言葉に従ってくれて作業が次第に進んでいく。
「ちょっと……嘘でしょ、不味いわ」
私の鑑定の瞳に写し出された岩は巨大過ぎたの、でも、他に道は無いとマップが告げたわ。
道が完全に閉ざされたわ……このままじゃ、助けられないわ。
「作業員を全員退かして! 早く」
私の言葉に監督の男が困った顔を浮かべた、でもラッペンが従うように言ってくれたの。
「ごめんね、こんな形で使い魔にしたくなかったのに……でも、あなた達の力が必要なの!」
私は強く願った。洋館のセンチピード達を想像し召喚魔法を発動する。
巨大なセンチピードが2体、魔方陣から姿を現した。
『主、我等、常に主と共に』
『条件は裏切らないことのみです。主人』
「わかったわ。貴方達はオリンとオランよ。いきなりでごめん、力を貸して!」
『『任された』』
「デンキチッ! メガ! モーム! 皆も来てちょうだい。ハァァァァァッ!」
私は出せる使い魔を全て呼んだ。
それに気付いたアララから私に助け船を出してくれたの。
『お嬢! アララ姐さんから伝言です! 「全員転移させる」と』
「無茶苦茶ね、でも! 今度、御馳走を奢るわ!」
スカルジャイアントのロクさんとワイト軍団、更にトレントウッド軍団が姿を現すと作業員達が慌てて逃げ出していく。
「皆、落盤に気を付けて! 岩を破壊後に私が天井を支えるわ! 一気に破片を運び出して」
デンキチ、メガ、モームが準備をする最中、クラブスパイダー達が糸を網のように編んでいく。
オラムとオリンの巨体がトンネル内を突き進む。
そして岩がマップから砕かれ、消えた瞬間にデンキチ達が一気に破片を網で引っ張り出す。
『ヌガァァァァッ! カミルの為に』
デンキチの掛け声に使い魔達が一斉に動く。
岩の破片が無くなれば私の本領発揮よ!
「土よ、鉄となれ! 作製魔法ッ!」
トンネルの通路を一気に鉄に変えるとワイト軍団が“つるはし”を手に一気に中を掘り進んでいったわ。
作業員達がそれに続いてトンネル内を掘り進める。当然だけど全員無事に救出出来たわ。
「やった……何とか間に合った。あはは、疲れたぁ」
「良くやったな、カミル。流石に今回は絶望的だった。感謝するぞ」
「お爺ちゃん、ごめん少し疲れたから、交渉は、また来るね」
本当に良かったわ。アララに感謝ね、皆を送ってくれなかったら不味かったわ。




