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悪ガキ退治でジョブがいっぱいなんですが?

 私はタウリだから悔しいんじゃない!


 この私が住む世界にイジメなんて陰険な行為を赦す気はない! とは言うもののタウリはむしろそれを受け入れて剣の稽古をパパ(レイト)に頼み毎日、汗水垂らしてるんだよね?


 悔しくないのかな? 私が男なら間違いなく遣り返すし、泣くまで落とし穴の刑にするんだけどなぁ……


「おーい、おーいってば! 聞いてるかカミル?」


 噂をすれば、稽古を終えたタウリが木陰で考え事をする私に話し掛けてきた。


「聞いてるよタウリ。なあに?」


 召喚の儀のあった日から私を名前で呼ぶようになり、シスコンであるが強い兄を頑張って演じている。健気だ。


「また、カミル? ちゃんとお兄ちゃんと呼びなさいって言ってるだろ」


「わかってるわ、で? タウリ何か用なの?」


 これが最近の私とタウリの日常だ。お約束の兄妹コントのような会話をしてから本題に入る。私はこの流れが嫌いじゃない。


「いつもさ、俺と父さんの稽古を観てるけど、カミルは剣に興味があるのか?」


 う~ん……無い訳じゃないんけど……

 正直もう全ての職を極めし者(マスタージョブ)で二人よりも強くなってるんだよなぁ……


「無いかな? ほら私、運動神経ないからさ」


 ・『全ての職を極めし者(マスタージョブ)『詐欺師の卵』を取得しました』


 今のは……いや、聞かなかった事にしよう。


「そうか、まぁ確かにカミルには剣の才能があるようには見えないからな」


 タウリの一言が私の闘志に火を灯したら。メラメラと沸き上がる感情を我慢できない……私が最強よ!


「わかりましたわ……タウリ御兄様……1本先取の三回勝負しましょう」


 私はその場に落ちている少し長めの木の棒を手に取りタウリの方に向ける。


 騎士を目指すタウリにとって武器を向けられる行為は正式な決闘の申し入れであり断れば騎士の恥になる。それを知ったうえで私は木の棒を向けている。


「本気でやるなら……愛する妹でも手加減しないぞ、カミル!」


 ヤル気満々の目で私を見るその表情は真剣その物だった。


 でも私は既に全ての職を極めし者(マスタージョブ)で『剣士』つまりパパ (レント)と同等の能力を見て手に入れていた。


 負ける気がしない。むしろ勝つ!


 ・『全ての職を極めし者(マスタージョブ)『計画的強者』を取得しました』


 いや、それは職業(ジョブ)じゃなくない? まぁあの神にしてこの能力ありか……


「私もずっと観てきたのよ! 負けないわ」


 一定の距離からの決闘が始まり、タウリも剣を木の棒にすると戦いが始まった。


 小柄な私がタウリの懐に入り先手の一撃を食らわそうとするとそれに合わせて棒を斜めに構え動きを殺しに掛かってくるタウリ。


 なんでよ! 私は『剣士』と同じなのよ!


「戦いの最中に考え事をするな!」


「えっ!」


 タウリの一撃が私に当たり、先手を取られたの。


「なんでよ!」


「はっ? な、なにが……」


 私の反応に動揺するタウリ。


「なんで勝つのよ!」


「いやぁ、勝負だし……痛かったならごめんな、手加減はしたんだけど?」


 いっそうの敗北感が私に襲い掛かった時だったわ。


「見ろよ! タウリの奴、妹と稽古してるぜ」

「本当だ、女と稽古してるなんてダセェ」

「やめろよ、アイツは一人、使い魔無しなんだからさ、アハハ」


 タウリをバカにしているのは使い魔を手に入れた村の悪ガキだった。私はタウリをバカにされてイラついた。


「アンタ達なんか、偶然使い魔手に入れただけじゃない!」


 我慢できずに怒りを口に出した私の方に歩いてくる数人の悪ガキ。


「使い魔を出せるのは偉いんだよ!」

「「そうだ! そうだ」」


 集まると吠える私の一番嫌いなタイプだった。


「なら! 勝負よ」


「おい、本気かカミル? 相手は使い魔もいるんだぞ?」


「私とタウリなら負けない!」


 その言葉にタウリの表情が先程の勇ましい顔つきになり練習用の木の剣に武器がかわる。その瞬間マップが勝手に開き私の隣に青い点滅、目の前に複数の赤い点滅が表示された。


「つまり、初パーティーバトルね」


「何だか分からないけど! 遣るだけやるぞ。もし危なくなったらカミルは逃げるんだわかったな」


「わかった。でも私は勝つつもりよ!」


 悪ガキは使い魔を呼び出そうとするが、いちいち待つ気は私にはない!


「そりゃあぁぁぁぁ! うりゃあああ!」


 先手必勝!


 ・『全ての職を極めし者(マスタージョブ)『卑怯戦術者』を取得しました』


「卑怯だぞ! まだ使い魔出してないのに!」


 悪ガキが綺麗事を言うか……


「卑怯なのはどっちよ! 二人に対して大勢でしかも、使い魔をだす? カッコ悪いのよ!」


「言ったな! カミルもタウリも泣くまで痛め付けてやるからな」


「いいわよ! でも私達が勝ったらアンタ達には恥ずかしい目にあって貰うからね! 覚悟しなさい」


 そんな時一人の悪ガキが使い魔を呼び出したの。


 使い魔、トレントウッド。


 木のモンスター。


 木の実は石のように硬く、それを次から次に投げ付けて攻撃してくる。直ぐに木の実は再生する。


「どうだ! ウッド! アイツ等を痛め付けてやれ!」


『ヌガァァァァ!』


 次々に飛んでくる木の実を(かわ)す私達、しかし……


「カミルッ! 足元!」


「へっ?」


 私は地面に落ちた木の実に(つまず)き顔面ダイブ……


 ・『全種の言葉(オールコンタクト)発動』


『ねぇ……調子乗りすぎ……(まき)にするわよ』


『なんで……言葉がわかる!』


 私に言葉が解ると理解するとトレントは後退りを始めた。


『私が本気になったら……森一つ草木の一本まで生えないような猛毒で不毛の大地を作り出すわよ……』


 トレントはその言葉に嘘が無いのを衣服から漂う猛毒の臭いで理解すると、いきなりの主の悪ガキを抱えて走り出した。


 残った悪ガキは、使い魔を出す前に私とタウリが叩きのめし、ズボンのお尻に大きな穴を空けてやった。


 私を怒らせた悪ガキが悪い! 正義は勝つのだ!


 ・『全ての職を極めし者(マスタージョブ)『マッドポイズン』『偽善者』『偽りの戦士(ヒーロー)』を取得しました』


 この世界の職業(ジョブ)大丈夫なのかしら……

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