私達は楽しいんです8
止めどなく押し寄せる睡魔にさらわれるように意識が夢に吸い込まれていく。
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ふわふわするわ……はっきりとそう感じるって事は熟睡出来てないのね?
夢を感じると言う事実に熟睡していない事を悲しく思う私、そんな私を呼ぶようにマルルの声が聞こえる。
『カミル。夢の中で済まないな、急ぎの話があってな!』
プライバシーの侵害だわ。
『マルル……流石に夢の中に出てくるのは酷くない! 私のプライバシーとプライベートを尊重しなさいよ!』
『悪いな、だが、朗報じゃぞ。お主の蜂蜜な、アフロディアス達の世界に異世界トンネルを通して輸出する事が神々の会議で決まったんじゃよ』
予想だにしないマルルの言葉に私は自分の妄想じゃないかと疑ってしまったわ。
『それで、なんでアフロディアス達が蜂蜜を輸入したがるのよ? それに輸出したいならすればいいじゃない、買った後に蜂蜜が何処に行くかなんて私も把握してないし?』
マルルが少し渋く溜め息のような息を吐く。
『ふぅ、それがな、お前さんの手元で作られた蜂蜜とマドラッドや他の島で作られた蜂蜜には味に差があるんじゃよ、それにな、今回のレナクルの一件でカミルの作るハニービーの蜂蜜が輸出ストップになっておるじゃろ?』
確かに、私の許可なくクイーン達は蜂蜜を他の人には与えないわね? でも、マドラッドにはクイーンの娘達がいる筈だし、基本は同じ……ハッ! |樹精霊のジュレとクイーンは特別仲が良かったから、新鮮な花の蜜を集めてたわね……それか!
『なんとなく、理解したわ。でも、だからって大げさ過ぎない?』
マルルは蜂蜜について、今の現状を教えてくれたわ。
アフロディアス達の異世界では、蜂蜜を作る蜂もそれに該当する虫型な魔物もいないらしく、果実や花の蜜を人の手で搾るのが一般的であり、大量に蜜を集められないようなのよね。
『なら、別に構わないから、必要な分を教えて。それに合わせて用意できるように努力するわ』
『そうか助かるぞ。それとな、カミルよ、お前さんに儂から加護をプレゼントしよう、まあ……強制なんじゃがな』
『ハッ? 強制ならプレゼントって言わないじゃない! しかも、嫌な予感しかしないわよ』
話を聞かずに断ろうとすると、マルルが慌てて、加護について説明を開始したの。
『ミルシュ=カルム=カミル。お主に恵の神としての力を授けたいのじゃ』
いきなり、ワケわからない事を……
『マルル……もしかして、ボケたの?』
『違うわッ! 前にもアフロディアス達がお主を神として迎え入れたいと言う話があったじゃろ? その意見には儂も賛成なんじゃ』
マルルは偽りなき表情と優しい口調でまるで諭すように私に語りかけたの。
『知識を無限に吸収し、それを民の為に使い、田畑の耕し方を広め、多くの命を繋ぐ輪を生み出した。お主のしてきた事は控えめに言っても数十年から百年程の世界のあり方を変える働きと言って申し分なかろう。どうか素直に受け入れてくれないかね?』
私の答えは決まっていたわ。
『神様なんて、退屈な職業は要らないわ。それに私は皆と今を生きていたいのよ……それにシュビナだって……私が神様になったら、距離を少なからず取るだろうし』
『あははッ、まさか、神よりも今を優先されるとは、心から楽しんでいるようじゃな。まったくもって、長生きはするものじゃ、しかし、地上にいようとミルシュ=カルム=カミルよ。既に神に成ることは決まっておるのじゃぞ?』
私がその発言に首を傾げるとマルルも驚いたように質問を口にしたの。
『お主、アラナラムルから何も聞いとらんのか!』
え? アララはこの話をしってたの?
『どういう事よ?』
『うむ……本人に直接聞くんじゃな、取り敢えず、おめでとう……神として頑張るんじゃぞ。じゃあな、フォフォフォ』
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「まちなさいッ! マルル!」
私は現実へと目覚める、そしてアララを速攻で召喚する。




