私達は楽しいんです5
賑やかなパーティーの疲れが残る体は朝になっても目覚めようとしなかったわ。
「……取り敢えず……あと三時間……」と三度寝を決め込もうとした瞬間、扉が開かれる。
「いい加減に起きろ、約束があるのだろう?」
優しい声でそう囁くシュビナの姿に慌てて布団を頭から被る。
「ちょ、シュビナッ! いくらなんでも寝起きの女性の部屋にいきなり入らないでよ! びっくりするじゃないのよ」
「いや、す、すまない。メルリがカミルを起こそうと話しているのを聞いてな、顔を見たいと思って先回りしたんだが、配慮が無さすぎた、本当にすまない」
あまりにアッサリとした謝罪の言葉に私は布団を少しだけ持ち上げ隙間を作り、シュビナの表情を窺う。
意外にも動揺するシュビナの姿があり、本当に暴君なのかと疑いたくなる程、焦っているのがわかる。
「べ、別に謝らないで……寝起きで恥ずかしかっただけで、怒ってないから……取り敢えず、扉を閉めて。話が皆に丸聞こえじゃない……」
シュビナが慌てて扉を閉める音がする。
「少しそっちを向いてて……此方をみたら次は赦さないんだからね」
シュビナが壁側を向いている間に髪を軽く整える。
寝間着の上からカーディガンを羽織り、シュビナに「もう、此方を向いていいわよ」と優しく告げる。
ゆっくりとふり返るシュビナ、意外にも目をしっかりと瞑っていたの、真面目と言うか、なんと言うか?
「シュビナ、起こしてくれて、その……ありがとうね」
なんだか、急に照れくさくなる。
「おい顔が赤いぞ、まさか熱か? 女王サンデアに延期を申し入れるから、安静にしていろ」
慌てるシュビナの手を掴み、歩みを止める私、そして「待って、行かないで」と口にすると同時に部屋の扉が開きメルリが入ってきたの。
「…………お嬢様が……殿方を、引き止め……イヤァァッ! お嬢様が……うわ~ん」とメルリが叫びながら走り出してしまったの。
うわぁ、あれは面倒な勘違いをしてる声だわ。
「お、おい……あれはいいのか、泣いていたが?」
「シュビナ……心配するだけ無駄よ。寧ろ、直ぐに復活するから、そっとしといてあげて……それより、急いでサンデアの元に向かうから、一度、部屋から出てって」
「直ぐに向かうんじゃないのか?」
「このままで行けるわけないでしょ! 着替えるから早く出てって、 まったく」
着替えを早々に済ませ、アララにクレレとリーヴルを任せると、シュビナと共に用意された迎えの馬車に乗り、サンデアの元へと向かったの。
レナクル王国は女王サンデアと海軍提督ソルトの結婚を祝い、その話で盛り上がり、明るい雰囲気が皆を笑顔にしているように感じたわ。
サンデアの待つレナクル王国の城に辿り着く。
ただ、城内はお祝いの雰囲気とは言えないぎすぎすした空気が漂っていたの。




