私達は楽しいんです1
レナクル王国から帰還して、数ヶ月の時が流れた。
多くの国と世界が協力しレナクル王国は元の活気のある国に戻り、私達(リーヴル、メルリ、サトウ、クレレ、アララ)はレナクル王国に来賓として、招かれる事となった。
レナクル王国にシュビナと共にバトラング王国の大型ガレオン船で入国する私達。
あくまでも私達はバトラング王国内の別国家、つまりはマドラッド島、魔王扱いとなっているので少数であり、大本のマドラッド島からは、ペンネや参謀ヒルバー等、バトラング王国からもシュビナやドルド、ザカメレア王国やベジルフレア王国からも国王クラスとその部下達が招かれているわ。
争う事でのみ繋がっていた国々が協力し合い、ひとつの目標を成し遂げ集まるなんて、本当に素敵だわ。
まあ、悪い考えをしてる奴も要るみたいだけど。
小声なら何を話しても大丈夫だろうって考えるのは人間の悪い部分ね、集まっている中には魔族や亜人、バイキング、レナクルにしたって見た目は人でもエルフのように進化した耳は小さな音を聞き漏らす事なんてないのに。
「はぁ、仕方ないわね。少し痛い目にあっ……」
「そこまで、こんな席で暴れる気かカミル?」
本来ならあり得ないと皆が言うけど、武力以外で私を軽く止める唯一の存在、シュビナ……いや、私の夫と言うべきだろうか……見た目が父娘にしか見えないせいか、未だに悩むわ。
「少し、行ってくる。そこで待っててくれ」とシュビナは小声の主であるザカメレアとベジルフレア両国の御偉いさんに向かって歩み寄っていく。
最初は笑顔で笑っていた両国の御偉いさんの顔が次第に引きつりだす。
そんな時、面白そうな雰囲気に気づいたペンネが私の元にやって来たの。
「なんじゃ、面白そうな話をしておるじゃないか、妾も混ざってみるとするかのぉ」
ペンネの表情が不敵に笑みを浮かべ、止める間もなく、シュビナ達の元へと駆け出して言ったわ……シュビナとペンネの登場に固まる御偉いさん達、可哀想にみるも無惨に玉砕されていたわ。
満足そうなシュビナとペンネの表情に私は溜め息を吐くしかなかったわ。
「はあ……なんでそうなるかなぁ」
「あら、もしかして……退屈でしたか……」と背後から声を掛けられる。
振り向くと女王サンデアが背後に立っており、心臓が飛び出すかと思ったわ。
「サンデア女王、ごめんなさい。そんなこと無いわよ」
慌ててそう答えるとサンデアの侍女であるシャムスが私に語りかけてきたの。
「マドラッド魔王ミルシュ=カルム=カミル女王陛下、幾ら女王陛下同士の会話であっても言葉に敬意と互いの立場を重んじる発言をお願いいただきたいのですが」
「ちょ、ちょっとシャムス!」
私の態度に対してのシャムスの発言に慌てるサンデア、堅物と言うか、なんと言うか、相変わらず空気を壊すことを恐れない性格みたいね?
しかし、そんなシャムスに対してメルリが背後から語りかけたの。
「あら……またどうでもいい事におこっていますのね? 困った人ですわ……」
メルリの声に顔が青ざめ、冷や汗と同時に震えるシャムス。
「お嬢様、サンデア女王陛下、少し……このわからず屋を御借り致します、よろしいでしょうか?」
既に私とサンデアが口を挟める隙は微塵もない、そのまま軽く二人がうなづくと同時にシャムスはメルリに連れられていったわ……
「へ、陛下アァァーーァ!」
シャムスの叫び声が廊下に響き、沈黙する。
可愛そうだけど、メルリの楽しそうな不敵な笑みを前に止めるなんて出来ないわね。
「あ、あの、シャムスは大丈夫なのですよね? メルリさんは優しい方なのですよね?」
心配そうにそう呟くサンデア、私は遠くを見つめ、うなづく事しか出来なかったわ。
それからすぐにパーティーの挨拶となり、サンデアに皆の視線が集まる。
先程まで動揺していたとは思えない程、凛々しく堂々たる口調で挨拶をするサンデアに私は少し驚きながらも、女王の職をしっかりとこなすサンデアを尊敬の眼差しで見つめていたわ。
挨拶の後、私の元に再度やって来たサンデア。
「サンデア女王陛下、見事な御挨拶、感動いたしました」
「な、カミルさん、そんな他人行儀な挨拶はやめてください、それに……私はカミルさんを今回……その、友人として招いたつもりなのですから」
少し頬を紅く染めるサンデア、正直……可愛すぎるわ。
そんなサンデア女王に熱い視線を向ける者は少ない、しかし、そんな視線を叩ききるように睨みをきかせる人物が一人。
無言でただ、サンデアに視線を向け、近づく者に下心があろうモノなら斬りかかるであろう、威圧感を放っている人物……ソルト、見てて分かるけど、分かりやす過ぎるのよね。




