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無茶苦茶な作戦と飲み過ぎな2人なんですが?

 ルフレの花嫁捜し大作戦。私の完璧な計画で絶対にメリアとルフレをくっ付けてやるんだから!


ーー晩餐会開始1時間前。


 先ず、説明から、何も知らないメリアをそのまま逢わせるのは危険だもん。それに私の話をしないように釘を刺さないとね。


「メリア御姉ちゃん、何も言わずに結婚して!」


「カミル・・・気持ちは嬉しいんだけど、女同士は結婚できないのよ?」


 はっ! いけない、いけない。


「違うの! ルフレと結婚して欲しいの!」


「ハアァァァァッ!!」


 まぁ、そうなるわよね。予想はしてたわ!


 メリアの反応は大げさと言うより妥当であった。

 何故なら私が結婚させようとしてるトリム=ルフレはトリム家の一人息子であり、ライパンの貴族にトリム家を知らない者など居ないくらいの名門であり、普通なら私を含めて、おいそれと会えるような人物ではないのだ。


 当然、メリアは全力で逃げようとするが私は逃がす気などない、話に乗ったラッペンも見す見す逃がす気など毛頭無い。

 メリアを囲むメイド隊に連れられ、ラッペンの私室に通される。勿論、私も一緒に付いていく。


 部屋の中に入るとメリアの顔がひきつる。当然、冒険者ならば誰もが知るラッペンを目の前に緊張するなと言う方が無理な話だ。


「よく来たな、君がテルトル=メリアさんだね。私はトリム=ラッペン。無理を言ってすまない」


 それから互いの紹介が終わると一足先に本題に入る。

 ラッペンは優しくも鋭い目付きで単刀直入に切り出した。


「メリアさん、と、呼んで構わんかね?」


「は、はい、メリアと呼び捨てで結構でございますです」


 ガチガチに緊張しているメリアを見かねたラッペンは一旦、メイドに紅茶を運ばせる。テーブルに並ぶ3人分のティーカップに注がれる紅茶を飲もうとする2人を見て私は飲むのを止めた。


「これを入れて飲んでみて」


 私が取り出したのは蜂蜜の“アロマハニー”だ。それをスプーン1杯分を取りティーカップに入れる。


 いきなり、ラッペンに対して私が待ったを掛けたのだから慌てるメリア、しかし、素直にそれに従うラッペンを見て、更に混乱していた。


「うむ、なんと不思議な、紅茶をここまで変えるなんて、まったく驚かされてばかりだぞカミル」


「名付けて“ハニーティー”よ。気に入ったおじいちゃん?」


 私の言動とラッペンの反応に驚きながらもハニーティーを口にするメリア。

 顔から緊張がほぐれてから、やっと本題にはいる。


「改めて、メリア。財産が欲しいか? それとも名誉が欲しいか? または貴族の名が欲しいか?」


 ラッペンの質問にメリアは予想外の回答をした。


「私は自由が好きです。正直に言うなら毎日、楽しくてお酒が飲める暮らしをしたいです」


「ええええぇぇぇぇ!」


 まさかの返答に私は驚き声をあげていた。当然でしょ! なんで今そんな事を言うかなぁ、メリアがお酒以外に欲が無いのは知ってたけど……流石に今は言うべきじゃないでしょ!


 しかし、ラッペンはその答えに頷き、メリアの瞳を真っ直ぐに見るとニッコリ笑った。


「さて、そろそろ、食堂に向かおうか。カッシュがフルコースを作ると言っていたからな、冷めるといかんからな」


 3人で部屋を出るとラッペンは先に下に降りていく。私達は食堂に急いだ。


ーー現時刻。


 食堂に着くと既にルフレが席に座り、皆の到着をワイングラスを片手に静かに待っていた。


「やぁ、カミル。そして・・・?」


 いけない! 紹介するのまだだった。


「ルフレ、此方は私の親戚のメリア御姉ちゃんよ。泣かせたりしたら……本気で行くわ……」


 最後の部分は小声であり、力を確りと込めた。ルフレの顔は笑っているが内心は色々思い出している事だろう。


 そして、最後にラッペンが到着すると晩餐会が開始される。

 庭でも使い魔達が喧嘩をしない条件で食事を開始する。

 ボルドとデンキチ達の仲直り会のような物で、今回は2人の為にコックも庭で肉を調理する事になっているので心配は無いだろう。


 そして室内、晩餐会の料理を楽しみながらの、2人のぎこちない会話に私は頭を抱えていた。


 余りに踏み込まないルフレとその会話に頷くだけのメリア……


 聞いてても、まずい空気なのは分かるくらいマズイ!


 メリアの前に置かれたワインには飲んだ形跡すらない。緊張からお酒好きなメリアは飲めずにいたのだ。


「メリア御姉ちゃん、ワイン嫌い? いつもお酒飲むのに、具合悪いの?」


 こうなれば、仕方ないと言わんばかりのキラーパスを蹴り込む。


「メリアさんはお酒がお好きなんですか?」


 初めてルフレからのナイスな質問が飛び出した。其処から流れが一気に酒の話題になるて2人は一気に盛り上がる。


 実を言うならばルフレはザルなのだ。


 ※酒に無茶苦茶強い人。


 当然、今まで財産目的や家の為にとお見合いが行われたが二人になり、ルフレのペースについていけずに皆がダウンする。その度にルフレは話を断っていたのだ。

 ルフレは自分と対等に飲んで話せるような人を理想としており、その考えに許嫁すら呆れて、縁談が破断した事実すらあったとラッペンからは聞かされた。


 最初は笑ったが、今、2人の前には合わせて20本程のワインの空瓶が並んでいた。


 何処に入ってるのよ! と、突っ込みたい気持ちを我慢しながら、2人の表情を見れば笑っているのが一目瞭然なのが嬉しい。


 そして、ルフレが笑いながら口にした。


「私は今すごく幸せです。こんなに長く酒を飲み交わし語れる女性は初めてです」


 惜しい、一言足りないわね?


「ねぇ? ルフレはメリア御姉ちゃんの事、嫌い? それとも好き?」


 悪魔のエンジェルスマイル。


 当然答えは……「好きだよ」と笑いかけるルフレ。


 同じ質問をメリアにすると照れくさそうに小さな声で「好きだよ……」と呟いた。


「なら、結婚だね」


 私の発言に慌てる2人、そんな時、ラッペンが立ち上がり声をあげる。


「カッシュッ! 例の物を持ってきてくれ、ちゃんとコルクを抜いて持ってきてくれ!」


 持ってこられたのは、トリム家の巨大な地下ワインセラーの中で数本と存在しない超最高級ワインであり、ラッペンが大切に保管しているコレクションの1つであった。


「ルフレ、ワシからの結婚祝いだ。確りと2人で味わえ」


 そう言い注がれたワインを前に互いに手が震えるルフレとメリア。


「待ってください、父さん。こんな遣り方、メリアさんに失礼です!」


「えっと、ルフレ……さん、そのルフレさんがもし、いいなら……私は」


 ルフレは予想外のメリアの反応に驚いていた。迷惑していると勝手に勘違いしていたルフレはメリアに改めて告白することを既に決めていたと後に知ることになる。


 兎にも角にも、2人の仲をワインが結んだのだ。そして、気づけばラッペンとルフレが私の親戚になる事が決まった。


 作戦は大成功ね。

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