姉妹は大変なんです10
私が迷宮で苦労して見つけた壺は悪しき神々の残したバルキュリアへの恨み、妬みが人々から尽きないようにする為の物であった事実が同時にわかると、私の中で怒りの炎が次第に燃え上がっていったの。
「何よその話! つまり最初からアララはバルキュリアが悪くないって知ってたんじゃないのよ!」
私からアララに向けられる怒りの視線。
「だから、真実は語ったじゃないですか、それに、幾らカミルを信用していても、あれだけ騒ぎが大きくなってしまった後だと、言うに言えない状況になってたんです」
焦るアララ、そんな表情を見て、変な話だけど私は少しホッとしている。
どれくらい語っていたんだろう?
焚き火に焚べる薪を取ろうとした瞬間、我にかえる。
輝いていた筈の夜の星空は既になく、微かに青と黒が混じり合うような複雑な色の朝の大空がそこには広がっていたの。
「完全にやらかしたわ……朝じゃないのよ、もう……」
アララは私の言葉に微笑みを浮かべると静かに私のおでこに手をあてたの。
その途端、急激な眠気に襲われたの……霞ゆく意識の中に聞こえくる会話。
「不器用ね、アラナラムル。多分、カミルちゃんは私との約束を破ったりしないと思うんだけど?」
「えぇ、カミルは間違いなく御姉様との約束を果たします。でも、それだと間に合わないことも御姉様なら理解しているのでしょう……私はカミルに嫌われる覚悟も責められる覚悟も出来ています」
なんの話をしているの……アララとアフロディアスよね……私に嫌われるって……いったいなんの……
私の意識はそこで途切れ、まるで吸い込まれるように眠りに堕ちる。
次に目覚めたのは、見たこともない白く美しい巨大なベッドの置かれた寝室だったの、私は起き上がり辺りを見渡す、すると部屋の出入り口であろう扉が開かれる。
開いた扉の先には巨大な通路があり、その先にある無数の扉が一斉に開け放たれ、まるで私を誘導するように風が吹く、背中を押すような感覚に私は覚悟を決めて風に案内されるままに通路を進んでいく。
風が止むと同時に辿り着いた行き止まり、まるで狐に摘ままれたような気持ちになる私、溜め息を吐こうとした瞬間、突如行き止りであった壁が二つに割れ扉のように開かれる。
扉の中にゆっくりと進んでいく、微かな花の香りに気づいた瞬間、一瞬の輝きに包まれると目の前に広がる1面の花畑。
その先に休憩所のような物かしら? 小さな屋根が見えるわね。
そんな私の視界に突如、入ってきたのはバルキュリアの姿だったの。
色々と聞きたいけど、本当に予想外の事ばかりよ、三姉妹恐るべしだわ。