姉妹は大変なんです5
単純に考えれば、私の提案をアフロディアスは受け入れる必要はない…… 無理矢理、奪うことが可能だからに他ならないわ。
もし、小瓶を奪いに掛かるようなら……
「あんまり、物騒な想像はよくないよ? カミルちゃん、御姉さんは可愛い子には優しいって言ってるじゃない。それに色々とやり残した事が沢山あるのよ、おっと……それじゃあね」
結果的に私の提案を受け入れてくれた、本当にハラハラしたわ。
その後、あっという間に駆け出し空に飛び出したアフロディアスはバトラング王国の方角に流れ星のような速度で消えていったの。
「なんなのよ、いきなり……」
それと同時にマルルが姿を現したの。
「く、一足遅かったか。カミル大丈夫かね? 儂としたことが、アフロディアスめの幻術に掛かってしまった、叱り飛ばすつもりが情けない……」
落ち込みながらも怒りを露にする姿に私は混乱したわ。
マルルにアフロディアスの考えと目的を告げることになったわ。
「……と、言う訳なの」
「あやつ、そんな事を考えておったのか! 自身の管理しておる世界を放置してからに!」
怒りで真っ赤になるマルル。
私は マルルの話を聞いて疑問に感じた事があり、その場で質問をする。
「ねぇ、因みに世界を守護する神がいなくなるとその世界はどうなるの?」
マルルは渋い表情で溜め息を吐くと私にその答えを教えてくれたわ。
「世界から希望が失われるんじゃ、どんな世界にも未来と言う希望や一筋の輝きなどがあるが……そいつが失われるんじゃよ」
「なによそれ! 女神一人に世界が滅ぶわけ! 魔王よりタチが悪いじゃない……」
「うむ、それをわかっていて、アヤツは此方に来ておるのだから、本当に困った奴じゃ」
表情を険しくするマルル、そんな姿にアララが頭を下げたの。
「マルサ=チヨル様、本当に申し訳ございません、アフロディアス姉様には私からもしっかりと!」
「よいよい、アラナラムル。お前さんに落ち度はない、寧ろ……神の世界にあれほどに家族を重んじる者がおらなかったから、悪目立ちしたまで……すまないがカミル、バルキュリアの入った小瓶をあのバカ娘にくれてやって欲しい、頼めるかな?」
答えは悩むまでもなかったわ。
「わかったわ、他の世界が滅ぶと分かった以上、少しでも早くバルキュリアをアフロディアスに渡さないとね」
マルルは優しく微笑むと天界に戻って行ったの、アフロディアスを追うと考えてたけど、マルルいわく……「追えば、より深く隠れるだろう、追わぬ方が良い方向に向かう事もある」だ、そうよ。
取り敢えず、マルルを見送った私とアララはその後、焚き火に辺りながら一晩中語る事になる。