姉妹は大変なんです3
アフロディアスの話はそのまま続き、バルキュリアの元に何故、私を案内したのかと言う話になったわ。
正直、今までの話を聞いていたら、バルキュリアとアフロディアスは性格が違っても仲が良かったように思うわ?
……バルキュリアの復活はアフロディアスの花が咲いたと同時よね……まさか……
情報を整理した私はある事実に気づかされる。
アフロディアスの花……魔力を吸収し花を咲かせた名前は【アフロディアスの花】と付いているが紛れもなくバルキュリアの作り出した物に間違いない、同様にアフロディアスが作ったとされる【バルキュリアの針】両者の名を互いの物に刻んである、バトラング王国を長きに渡り困らせた悩みの種だったわね。
ただ理解できた事が幾つかあったわ。
バルキュリアが作り出した【アフロディアスの花】にアフロディアスが祝福の魔法を掛けたこと、【バルキュリアの針】を用意したアフロディアスはその針にも魔法を使っていたこと。
そして、今……私の目の前に姿を現している事実、タイミングがよすぎるじゃない……
思考を覗かれるような違和感と見えない生々しい視線を全身に感じる。
「……あら、意外に鋭いのね? タイミングがいいんじゃなくて、そうなるように仕組んであるのよ、【アフロディアスの花】が咲いたら私に知らせが来るようにね」
アフロディアスの言葉に私は警戒心をむき出しにする。
距離を取ろうとした私の背後から「悪い子はキツイお仕置きが必要になるわよ」と小さく悪戯な声が耳に囁かれたの。
「なっ!」
振り向くと目の前に居た筈のアフロディアスが背後に移動して居たの、まるで 無数の蛇が絡み付くような嫌な感覚、背筋に寒気が走った瞬間……私は視線を地面に向ける。
アフロディアスの足元を見た瞬間、直ぐに目を瞑り私は自分自身に解除魔法と解術魔法の両方を発動したの。
次に私が瞼を開くと私の正面には微動だにしないアフロディアスと意識を失い、横に寝かされた状態のアララが視界に入ってきたの。
「ふぅ、やっぱりね……一か八かだったけど、考えが当たったわね」
私は地面を見た際にアフロディアスの影を見たの、焚き火に揺らめく筈の影は一切ぶれる事なく確りと形を保っていたの、そこで幻術だと直ぐに気づいたの。
問題は幻術を掛けられた私自身に魔法が使えるかにあったわ。
解除魔法と解術魔法の両方を同時に発動する事で失敗した際に二回目の魔法を回避されないように考えたの。
ただ、幻術じゃなかった場合は最悪だったわ……長引けば確実に不利になるのは予想できたわ。
つまり……幻術を解除された事を知らない動けない状態のアフロディアスを倒すしかないわ!
「ファイヤーボールっ! 雷撃圧縮砲っ! 瞬間冷凍っ!」
間違いなく、神すら吹き飛ばす最大の威力で魔法を撃ち放ったわ。
「ふぅ~流石に数日は動けない筈よ、時間稼ぎにはなったわね」
動かないわね? 流石にやり過ぎたかしら……
「そうねぇ? 女神と言ってもこれだけ派手にやられたら、流石に灰になるんじゃないかしら?」
私の背後から、二度目のアフロディアスの声が聞こえ、本当に驚いたわ。
「流石ね? 生身でうけてたら、本当に私は消されてたかも知れないわね? まあ合格点をあげる! ただ、幻術じゃなかったら、大陸に大穴ができてたわよ」
そう言うとアフロディアスは指を鳴らす、その途端、私が現実だと思っていた世界が円を描くように歪み、私自身の体も歪み出す……あっという間の出来事だったわ。
次に意識を取り戻したのは焚き火の前だったわ。
「……っう……!」
両手、両足の感覚を即座に確かめる私に、アフロディアスが楽しそうに微笑み、その横でアララが申し訳なさそうに座っていたの。
「大丈夫よ、私は可愛い子には優しいの、にしても、容赦ない攻撃だったわね? まあ、あれくらいしないと神は倒せないけどさ、あはは」
「すみません、カミル……気づいたらお姉様が既に幻術をカミルに発動してまして」
申し訳ないと謝罪するアララ。
「仕方ないじゃない? まさか、カミルちゃんだと思わなかったし、まあ、怪我なしで良かった、良かった。それにカミルちゃんになら、アラナラムルを任せられるわ」
アフロディアスは、私に何故、五次元世界ララリルルに舞い戻ったのかを語りだしたの……