解放されし、レナクル王国です3
ソルトの海賊船に到着した私達、巨大な海賊船に興奮が押さえられず、はしゃぎ回るリーヴル。
「お前ら、そろそろ上陸前の用意を済ませろ、これだけの船が一斉に港に入るんだからな、港で手間どうと格好つかねぇぞ!」
船員達を掻き分けるようにソルトが私達の前にやって来たの。
「カミル大使……此度のレナクル王国への、多大なる御助力、心から感謝する。ミルシュ=カミル、この恩は必ずいつか返させてもらう」
私に向けて下げられる頭、ソルトの態度に船員達が同様に頭を下げようとする。
そんなソルトの肩に手を伸ばし、首を左右に振る私。
「いつかじゃ駄目よ……今すぐに返して貰うわ」
「……ぬッ……今すぐだと?……」と言葉を詰まらせるソルト。
「いいから、今から最後の仕上げよ! 最後にミスをすれば全てが崩れるわ……成功すれば英雄、失敗したら……骨くらい拾ってあげるわ」
私の言葉に動揺する船員達、周囲がざわめき出す……するとソルトが短剣を手に取り天高く掲げると大声を張り上げる。
「野郎共、静まれッ! この短剣は女王サンデア陛下に命を捧げると誓った際に掲げた物、言うなれば、騎士の剣と同じ、この短剣が有る限り俺はレナクル王国を護ると誓った! 死など恐れぬ!」
あれね……男性特有の“俺の命は陛下の為に!”理論ね……まあ、今は何でもいいわ。
「早速だけど、今から船をバトラング方面に向けて、シュビナとバトラング大船団を止めに行くわよ!」
バトラング方面を指差しそう口にすると、船員達の表情が凍りつく。
「「「ウワァァァッ! 何でそうなるんだよ!」」」
予想通りの反応ね……今の海賊艦隊のそう戦力は三分の一にも満たないわ、本来は拮抗していた戦力が失われているレナクル側は完全に不利って状態ね。
「よく聞きなさいッ! バトラング王国はバルキュリアが未だにレナクルにいると思い込んでいるわ、このままだと、私が今止めても、いつか同じ事が起きるわ」
真剣な表情で語る私に視線が集まる、当然だけど、ソルトも此方を真っ直ぐに見つめていたわ。
「ソルトには女王の代役じゃなくて……サンデア王女が話し合いの席につけるようになるまでの時間を交渉して貰うわ」
「バトラングのカルム=シュビナか……交渉に応じるとは考えづらいが、遣らねば国が危うくなる……どちらにせよ遣らねばならないわけだな、大役だが任されようじゃないか」
そう……ソルトの言う通り、シュビナは代役なんて絶対に認める訳がない、それでも、ソルトならばシュビナと直接話し合いをして申し分ない唯一無二の存在であり、今のレナクル王国に彼以上の交渉役は存在していないのも事実だったの……正直、凄い賭けになるわね。