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目指す先──レナクル王国10

 【ワルキューレ艦隊】が容赦ない砲撃の雨を降らし始める。


 ソルトの指示かしら、一塊になるように海賊艦隊が集まり出しているわね? 船の損傷や怪我人を考えると離れた事がよかったのか、不安になるわね。


 ギルグの能力を信じるしかないわね……急がないと。


 頭の中で無数の考えと、数多の答えが連想される最中、次第に【ワルキューレ艦隊】へと近づく。


 不思議だったのは、船から私の姿が確認出来るであろう位置まで近づいても、見張りや、それを担う兵士の姿が皆無だったことね。


 幾らソルト達と戦っているからと言っても、見張りすらいないなんて、どうにも引っ掛かるわね?


 一隻の【ワルキューレ艦隊】の船に横並びになると私は高く(そび)え立つ黒塗りの船体を下から見上げたわ。


『デンキチ! 手始めに取り敢えずこの船の中に潜入するわよ』


 驚いた表情を浮かべながらも、仕方ないと肩を(すく)めて見せるデンキチ。


『壊すんじゃなかったの? でも、中に行くならついてく! ご飯あるかもだよね!』


『暢気ね、でも……敵の姿をしっかりと確認するのが一番大切だわ。もしもの時は頼んだわよデンキチ』


『ガッテン!』


 背中にドラゴンの羽根を生やし、海面スレスレに停止するようなイメージで上下に翼を動かしていく。

 私がある程度、空中で落ち着くと体から水分を吹き出し、小さくなったデンキチが私の差し出した手を伝いポケットに移動する。


 そこから私は大きく羽根を羽ばたかせると、一直線に黒塗りの外壁を抜け、甲板に辿り着く。


 甲板に左右一列に並べられた大砲があり、その一つ一つに砲弾を次々に運ぶ鎧姿の船員がいたわ、彼等は休むことなく動き続け大砲を撃っては次の砲弾の用意をしていく。


『カミル、鉄臭い……それに食べ物の匂いがしないよ……』


 状況を考えないデンキチの言葉に私は肩を落としながら返答する。


『いい、普通に考えてみて、戦いに来てるのよ? 流石に食べ物なんて無いに決まってるでしょ!』


『でも……水もパンも無しで戦うなんてさ、お腹すいたらどうするつもりなんだろ……』


 その言葉に私はある違和感を感じたの……幾らレナクルの領海でも、水も食料もなく海に船を出すだろうか……確率は零じゃないわ、でも、海賊艦隊を相手に無事で帰れると考えるのはあまりに安易な考えだと思うの。


 違和感を確かめるように【鑑定の瞳】を使い、私はワルキューレ艦隊の船を見渡していく。


 本当に水すら積んでないのかを確かめるつもりの【鑑定の瞳】は【ワルキューレ艦隊】の真実を明らかにしたの。


 全ての船が船内に巨大な魔力を放つ魔石が積まれており、その魔石により人間のように鎧が動いている事実が明らかになったの。


「そう言う事か……なら、話は簡単ね」

『デンキチッ! 全ての船を沈めるわ。船員はいないし、全部魔石で動いてるみたいだから、魔石はしっかりと回収してきてね』


『カミルは?』


 デンキチが首をかしげ、頭を悩ませるように問いかけたの。


『魔石の魔力を全部、強制解除させて、船を停止させるわ! ワルキューレ艦隊を沈めるのはバルキュリアの目を海に向けさせる為よ』


 【ワルキューレ艦隊】の遥か上空に翼を広げ、飛び立つと範囲魔法に解術魔法を混ぜ合わせた特大の解術魔法を大空に描き、海面へと叩きつけるように発動する。


 その瞬間、ソルト達の砲撃が一度止む。

 それと同時に【ワルキューレ艦隊】は完全に沈黙したの。


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