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目指す先──レナクル王国8

 ソルトの海賊艦隊と話を進めた末、臨時の同盟となった私。


 最初にやるべき事は船の修理と魔法に対するコーティングね。


 マップで近くにあった島まで移動すると艦隊の半数にあたる船をその場で置いていくように発言したの。


「全ての船を魔法に対して強化するのは現実的じゃないわ。半分はこの場に置いていってほしいの」


 ざわめきが起きると船を残される立場になった海賊艦隊の船長の一人が声をあげる。


「オイオイ、本気で俺達の魂とも言える船を島に放置しろって言うのか?」


 その発言にうなずくように首を縦に振る海賊達。


 面倒くさいわね、早い話が震災で鍵を付けたまま車を乗り捨てるのと変わらないんだけど……って、わからないわよね。


 上手く説明をしなければいけないけど、船に対しては全くの素人である私の発言で納得してもらえるか不安だわ。


「嫌なら船と残るか、そのまま着いてくれば良いわ、でも確実に船はボロボロにされるわよ……貴方の大切な魂を海の底に沈めて欲しくない……それだけは理解して」


 綺麗事にしか聞こえないような内容だったけど、海賊達は涙ながらに納得すると船を見張る為の人員を決め、更に半数の船で乗れるだけの船員を振り分けるとソルトから改めて船の修繕を頼まれたわ。


「数が多いが、大丈夫なのか? 半数とは言え、20隻を超えているんだ」


「心配ないわ、許容範囲よ。だから半数にしてもらったの、流石に全部の船を直したりするのは時間が掛かり過ぎるもの」


 作業を進める最中、私はメルリとサトウを空間魔法(ストッカー)から外へと呼び出し、作業を手伝って貰う事にしたの。

 勿論、二人増えたからと言って、作業の進行が早く進む訳じゃないわ。


 ただ、呼び出したのは二人だけじゃなく、リーヴルも呼んだの。


「カミル……流石に酷いかな、ずっと異空間に待機させるなんて、本当に寂しかったんだからね?」


 罪悪感が一瞬でマックスになるような潤んだ瞳でそう呟くリーヴル。


「ごめんね、でも一番安全な場所に居て欲しかったのよ。あと今からリーヴルにお手伝いをお願いしたいの? 頼めるかしら?」


 嬉しそうに頬を染めるリーヴルは迷うことなく、私の言葉にうなづいてくれたわ。


 メルリとサトウには船員達の為のスタミナ料理を作ってもらう。


 私とリーヴルは修理と魔法対策のコーティング作業を分担して一気に船を強化していく事にしたの。


 修理を私が担当し、コーティングはリーヴルが行う事で予定の半分程度の時間で合計24隻のコーティング艦隊が完成したわ。


 予定の半分とは言え、既に日が傾き、夕暮れと共に凄まじい冷気が風に乗り吹き荒れ始めていたの。


 暗く不気味な雰囲気に包まれたレナクル海域、私達の隠れた島の数キロ先に無数の光が揺らめいているのを見張りが発見したの。


 揺らめく光は次第に肉眼で見える小さな輝きになり、それを目にしたソルトが拳を握り舌打ちをしたの。


「……チッ……カミル、あれは全部が攻撃特化型の戦艦だ。レナクルの海賊艦隊とは別に用意された対戦艦用艦隊【ワルキューレ】だ! 完全に俺達を排除する気に為ったらしい」


「海軍と別の海軍なわけ?」


「嗚呼、奴等はバトラング王国との最終決戦に備えて用意されていた大部隊だ、建造にかなりの時間が掛かる為に未だに実戦では導入されてなかったが此処にきて、お披露目らしい……手始めに俺達、海賊艦隊を標的に選ぶなんて、皮肉な話だ」


 そう絶望を語るソルトの目は諦めていなかったわ、寧ろ大艦隊【ワルキューレ】を前に闘志をやどしているようにみえたの。


「お前らッ! 飯は御預けだ! 前方に広がる光は俺達の命を食い尽くさんと向かって来ている。黙ってくれてやる命を持ち合わせてる奴が居るなら名乗り出ろ! そうでないなら、目の前の敵を駆逐するのみ! 着いてくる奴は声をあげれッ!」


「「「オオオオオォォォォォッ!」」」


 私達を置いてきぼりに、話は一気に加速すると、ソルトと海賊艦隊の船員達が一斉に船を海岸から海面に向けて推し進める。


 ソルト率いる海賊艦隊とレナクル王国の新海軍と言える【ワルキューレ】艦隊が正面から激突しようとしていたの。

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