目指す先──レナクル王国5
流石に大空を急降下する感覚は二人とも初めてだったみたいね。
メルリとサトウが予想だにしない落下速度に意識を失いそうになっていたので、私はガルーダを起こすことを諦めると背中にドラゴンの羽を造り出す。
両手でメルリ、サトウ、ガルーダが繋がったロープを掴むと大きく羽を上下に動かし、そのまま光の壁の終わりまで一気に上がったの。
光の壁の終わりはまるで厚みのある壁と言った印象を私に与えたわ。
壁の上で一休み、なんて考えたけど、全身が凍り付く程の寒さに断念して、その場からゆっくりと下降したの。
急ぎたい気持ちは勿論あったけど、急な気圧の変化は私以外の四人にかなりの負担や最悪、体の内部に怪我を負わせてしまう危険があったの。
体の回りに火炎魔法で炎の防壁を作り、冷気を緩和しながらの降下は本当に疲れたわ。
海面に近づくと船を取り出し、その上にガルーダと気絶している二人を降ろして無事に光の壁を越えたわ。
『カミル、やったね。デンキチもそっち行きたい! 早く!』
両手を振るデンキチに軽く手を振りかえし、私の元に召喚する。
召喚すら出来なかったらどうしようと考えていたけど、大丈夫だったみたいね。
取り敢えずはレナクル領海に潜入できたわ。
マップを確認する。
私達の船以外は周りに居ないことを確認してからデンキチに船を引いて貰う。
レナクル王国の海軍の存在は油断ならないわ、元が海賊の集まりであり、戦術もザカメレア王国、ベジルフレア王国と比べてもかなり荒いの。
しかも、確実に相手を潰す為の戦術だから、厄介きわまりないわ。
出来たら、会いたくない存在ね、それでも確実にやって来るのが御決まりのパターンね。
マップの端から数隻の鑑影が写し出される。
そのなかに、【ソルト】の名を見つけ、私は覚悟を決める事にしたわ、キャプテン・ソルト……味方ならまだしも、敵である以上、本当に海で会いたくない存在だわ。
メルリとサトウが意識を取り戻す前に勝負を決めないといけないわね。
「ふぅ、行くしかないか……敵は多勢に無勢……まさに強敵……なんてね。取り敢えず軽く掻き乱してきますか」
デンキチが船と繋いでいたロープを手放し、背を向ける。
『敵でしょ? 早くやっつけてご飯にしないと、お腹すいた』
あまりに緊張感のない表情に笑ってしまったわ。
『そうね。取り敢えず行こっか。メルリ達をいったん空間魔法に入れるわ』
私とデンキチの背に乗り、直ぐにキャプテン・ソルトの元に向けて動き出したわ。
敵はレナクル海域最強のソルト艦隊、指揮官キャプテン・ソルトの本隊と考えるべきね。
『行くわよデンキチッ! 相手はレナクル海域の覇者、キャプテン・ソルト! 容赦なく沈めるわよ!』