目指す先──レナクル王国4
……バトラング王国を出てから二日目の早朝、デンキチが船のそこを軽く叩く、その音で目が覚めた私達がデッキに急ぎ集まると、太陽の光を反射させるように”見えないか光の壁“がそこに存在していたの。
「あら、本当に見えない壁ね?」
軽く拳を握り”トントン“と叩いてみたけど、間違いなく壁があるわ。
「参ったわね……壊すにしても仕組みがわからないし? 強制的に解術魔法とか解除魔法を使うと魔力の消費が心配になるし」
少し悩みながら、状況を整理する私は、”ふっ“と空を見上げる。
何処までも高く聳え立つ光の壁、その遥か彼方に壁でぶつかり雲が立ち往生している光景が見える。
その更に先を見つめた瞬間だったわ、私の目に希望が映し出されたの。
「雲が途切れてない……! 光の壁にも終わりがあるんだわ」
雲が止まることなく風に運ばれている姿を目の当たりにすると、更に数個の雲も同様に光の壁を抜ける姿を確認できたわ。
「メルリ、サトウ。船旅は此処までよ! メルリ、今すぐにガルーダを呼び出して」
「え、は、はい!」
ガルーダを召喚したメルリに光の壁の遥か上空まで飛ぶと伝え、サトウとメルリの体を確りとガルーダの体にロープでつなぐ。
『ガルーダ。船をしまうから先に空中で待機してて』
『うむ。了解した』
簡単な指示を出しながら、私はデンキチの背中に立つと船を空間魔法にしまい、デンキチに指示を出したわ。
『デンキチ、ガルーダに目掛けて私を投げて、あとで壁の向こうから召喚するから』
『わかった。いくよぉぉ!』
私は飛び立ったガルーダを追い抜き、軽く止まった状態の空中でメルリ達に手を掴まれガルーダの背に合流したわ。
「ふぅ、なんだか凄い経験をした気分だわ」
流石にヒヤヒヤね。まぁ、もしもの時は奥の手があるから問題はないんだけど。
「お嬢様、あまり無理をしないでください! 心臓が飛び出るかと思いましたよ」
メルリとサトウが心配そうに私を見つめる中で私は申し訳なさそうに口を開いたわ。
「心配かけてゴメンね。あと……今からは喋らないでね? 舌を噛むといけないから」
私の目を見た瞬間にメルリが不安そうな表情を浮かべ、サトウの服を軽く引っ張ったの。
「サトウ、今すぐに口を確りと閉じるのよ。あの目はマズイのよ」
「え、わかった!」
二人の会話が終わったのを確認し、私はガルーダに風魔法を掛ける。
風の抵抗を無くし、加速をうながすと私達はまるでガルーダの一部になったかのように大空へと垂直に上がっていく、まるで天地が引っくり返ったような不思議な爽快感が全身を擽るような感覚はなんとも言えないわ。
光の壁の終わりが見えた瞬間だったわ──急にガルーダが、ふらつき始めたの。
「な、ガルーダ! しっかりしなさい」
『ガルーダ! 起きて!』
私とメルリの言葉に反応する様子はなく、サトウがガルーダの体をつねるも、反応はなかったわ。
「「おちるぅぅぅーぅうう!」」
メルリとサトウの叫び声が大空にこだましたの。