太陽の恵みと風の知らせです3
メルリとリーヴルの揉め事に決着がなし崩しにつくと、私達はフォレストタウンへ、ペンネ達はマドラッドへと帰還していったわ。
フォレストタウンに向かう道中、私から離れようとしないリーヴル、そんな姿を真っ白になったメルリが見つめていたわ。
「私のお嬢様が……お嬢様が……子持ちになってしまうなんて、しかも……父親なしの連れ子……いぇ! 隠し子がいたなんて」
私とリーヴルの姿を再度見つめ涙を浮かべるメルリ。
「って! 隠し子ってなによ! 詳しく話すからよく聞きなさい」
マドラッドでのリーヴルとの出会いから、バトラング王国へと戻るまでの流れを確りと話す事にしたわ。
「と、言う訳で、リーヴルは魔本に魔力を注いで生まれた子なのよ。だから、変な勘違いはしないで、まったく」
簡単な説明を終わらせると、メルリは満面の笑みを浮かべていたわ。
「つまり、あれですね。リーヴルさんとお嬢様は親子ではないと言うことですね!」
当たり前じゃないのよ。
メルリの言葉に私が頷こうとした瞬間、リーヴルが声をあげたの。
「その答えは違うかな! 私はカミルの一部をもらったの、私はカミルの所有物で娘で、カミルの一部なんだよ! 嘘は言ってないから……わかって欲しいかな」
まるで、欲しいオモチャの説明を子供が必死にするように、リーヴルは自分が私と、どんな関係なのかをメルリにアピールしだしたの。
再度、固まるメルリは身を震わせていたわ。
怒りを堪えているのかと、心配になっていた私、しかし、思わぬ展開に発展したの。
「つまり、リーヴルお嬢様はカミルお嬢様の一部なのですね! 理解が追い付きませんでしたが、今理解いたしました!」
リーヴルも私も、メルリの急変に顔を見合わせたわ。
幸せのオーラを全身にまとった様なメルリはいきなり、フォレストタウンにいるクレレを召喚したの。
「でしぃぃぃ……なんでしか、メルリ。いきなりどうしたんでし、フォレストタウンから飛び出したと思ったら呼び出して、呼ぶなら初めから連れてきて欲しかったでしよ」
繋ぎ服を纏い、畑仕事をしていたのであろう、タオルを頭に巻いたクレレが目の前に召喚されてきたの。
「クレレ、大切な話があり呼んだのです! これはまさに大事件です!」
「だ、大事件でしか!」
圧倒的な言葉の力に目を輝かせるクレレ。
メルリはあろうことか、リーヴルを指差すと「お嬢様が二人になりました!」と喜びに浮かれたような表情でリーヴルを紹介したの。
最初は混乱した様子のクレレだったけど、状況を説明するとすぐに理解してくれたわ。
「つまり、あれでしね? メルリの暴走はいつもの事でしが、本当にカミルの力の一部からできてるのでしね?」
小さくなったリリーヴルとクレレが向き合うとお互いに頭の先端から爪先までをしっかりと見つめていたの。
……何が始まるのよ?
「「カミル!」」と二人が同時に声を出す、そして……
「クレレの方が身長がたかいのでし」
「それは君の勘違いかな、私の方が大きいよ」
小さな二人が身長を競い始めたの、ドングリの背比べといった感じかしら?
結論から言えば、二人の身長は同じくらいよ。
でも、子供は凄いわよね? どんなに喧嘩してたりしても、最後には仲直り出来るんだから、本当に羨ましいわ。
因みに身長はリーヴルの方が少しだけ小さいのよ。二人とも気づいていないけどね。
賑やかな帰り道は退屈することなく過ぎていったわ。
とにかくフォレストタウンに帰ったら皆に説明しないと、また隠し子なんて言われたらたまらないもの。