太陽の恵みと風の知らせです２
賑やかな夕食が終わり、一晩が明ける。
バトラング王国に戻ってから二日目の朝が訪れ、皆と朝食を食べる、当たり前のような、焼かれたパンに蜂蜜を掛け、サラダと玉子が並び、温められた牛乳にたっぷりの蜂蜜を入れる。
「ふぅ、この瞬間は幸せだと改めて感じるわ。うん、最高の朝食だわね」
そう語ると、シュビナを含む全員が“クスクス”と軽く笑い出したわ。
「カミル。そんなに幸せそうなら大丈夫そうだな？」
「みたいじゃな？ まぁ、妾はカミルがあれくらいの試練で何日も寝込むとは思わねがな」
「ふふふ、わかりませんよ？ いくらカミルでも、女神の呪いを相手にしたのですから、あ、本当にミルクに蜂蜜、優しい味がしますねぇ」
シュビナ、ペンネ、アララの会話は昨日からこんな感じね。
そして、細やかな朝食を済ませた私はシュビナの私室に向かう。
シュビナにフォレストタウンに戻る事を告げたの。
「シュビナ、フォレストタウンに戻るわ、養蜂場の子達や学校の生徒達が気になるし、畑も任せきりだから」
真っ直ぐに向き合いそう語るとシュビナは優しく頷き、口を開いたわ。
「そう言うと思っていた。身体は本当に大丈夫なのだな？」
「ええ、一晩休んだらもう平気よ。本当に感謝してるわ」
私の一言一言に頷き、寂しそうな表情すら浮かべるシュビナ……こういう風に思うのは良くないけど、まるでワンちゃん見たいに見えてしまうわ。
「シュビナ……私はバトラング王国に此れからも居るつもりよ。拠点はフォレストタウンになるけど、ちゃんと側にいるから」
なんだろう、すごく気まずい空気になってるように感じるわ。
「嗚呼、わかっている。だが、俺の我儘は通らないらしいな。暴君などと呼ばれているが、本当に欲しいものほど指の間からすり抜けていくように感じるなんてな」
シュビナの言わんとした言葉の意味は理解しているわ。
「シュビナ、良いことを教えてあげるわ。私は……その、今は一緒にならない！ でも、シュビナが今のままなら、いつか叶うから……」
「おお！ カミル、つまりそれは？」
維持悪く質問をするシュビナの目は輝いていたわ。
「いいの！ 話は終わりよ、まったく、女心がわかってないんだから」
私が部屋を出ると、ペンネとリーヴルが待ち構えていたの。
「話はまとまったようじゃな。カミル、妾はマドラッドに戻る。いつまでも、魔王不在では良くないからのぉ……そこでじゃが、リーヴルを連絡係りとしてカミルの側に置いてやってほしいのじゃ」
ペンネはリーヴルにマドラッドに戻る事を伝えた際に私の側に居たいと懇願した事を語り、出来る限りの協力を約束したのだと教えてくれたわ。
私は構わないけど、問題は……そう考えていると、勢いのある足音が此方に近づいてきたわ。
「お嬢様ぁぁぁ！ さあ、話が終わったなら安静にしてください！ もしもの事があれば、メルリは心配で夜も眠れません！」
メルリとリーヴルが向き合うように視線を合わせた瞬間、リーヴルが私を抱き締めたの。
「え？」
「なぁぁぁぁ！」
驚く私、そんな私を抱き締めるリーヴルを見て、声をあげるメルリ。
「カミル、私はカミルの魔力から新たに創られたの……む、娘！ そう、カミルの娘みたいなものなのかな……だから、ずっといたいの……だめかな？」
斜め下からしゃがみ込まれて、見上げられながらの発言に私は言葉を失う、可愛すぎる！
固まるメルリに対して、勝利を確信したアザとい笑みを浮かべるリーヴル。
軍配はリーヴルにあがったわ。
