光の矛先……永遠をなくす者です7
夜から朝にかわり、太陽が全てを暖かく照らす日中、私はペンネとアララを連れてマドラッド城へと急いでいる。
リーヴルの解放を実際に行う為であり、私は今回の解放がシュビナの解放にも繋がる大切な一歩だと考えていたわ。
「自信はあるのか、幾らカミルじゃとて、此度のリーヴルの解放は難しく思うのじゃがなぁ」
それとなく、質問を口にするペンネ、その顔に疑う様子はなく、寧ろ楽しそうにすら見えるわ。
「任せなさい。今回は絶対に成功させるわ! それにリーヴルに外から見える世界を教えてあげたいのよ」
自信を口にする私にペンネとアララは、頷くとそこからは一気にマドラッド城へと進んでいったわ。
マドラッド城──図書室──
「お邪魔するわよ、リーヴル!」
……私の声が響き、その後、静けさだげが残る図書室。
「可笑しいわね? 昨日はすぐに反応が返ってきたのに?」
ただ、今の私は魔力が十分にあり、マップを全力で発動出来るわ。
「マップ展開、対象はリーヴル!」
マップが図書室の中を表示したけど、リーヴルの名前はマップに表示されなかった。
「マップ、更に拡大よ! 反応が出るまで拡大して、図書室から出れるなんて、予想外だわ」
今も移動してる可能性があるけど、マドラッド城からは出れない筈だわ、つまり、先回りすれば済むわ。
直ぐにマップにリーヴルの反応があり、その先はマドラッド城の中庭を表示したの。
「わかったわ、リーヴルは中庭に居るみたいよ」
「中庭? 何故、そのような場所に……中庭にあるのは先代魔王達の名を記した墓標のみじゃが?」
ペンネはそう口にすると私とアララを中庭へと案内する為、先頭を駆けていく。
その間、マップに変化はなく、中庭にリーヴルは確実に居ることをペンネに伝えたの。
「ペンネ、リーヴルって先代魔王の力で創られたのよね? それってペンネのお父さんか、お母さんって事よね?」
「なんじゃ、こんな時に? 別に先代魔王は妾の肉親と言う訳ではないぞ? 魔王とは元来、産まれ出た時の魔力の量で決められるのじゃ」
「え、そうなの? つまり、魔王って産まれながらに決まってるの!」
驚く私に対してペンネは呆れたように私を指差したの。
「既に例外はおる。それになぁ、産まれた後に魔力を大きく伸ばす者もおるからな。一概に魔力だけの魔王など、魔王とは言えぬのだ、しかし、先代魔王は歴代の中で最大の魔力量を有していたがな」
つまり、あれね。今から私はその先代魔王が魔力を分け与えた魔本のリーヴルを何とかしないといけないわけね。
話が終わると同時に中庭に辿り着く私達、ペンネは中庭の一角にある古い塔を指さしたの。
ペンネに案内され中へと足を踏み入れる。
中に入ると壁に掛けられた植物が光を放ち、室内を照らしていく、其所には多くの魔王の肖像画が並び、歴代の魔王達の名が記されていたわ。
「なんなの、この凄い数、しかも幾つか、魔王の肖像画が切りつけられてる物もあるじゃない?」
ペンネは小さな声でその訳を語り始めたの。
「……切りつけられてる魔王達は皆、新たな魔王に敗北した者達じゃ、力とは時に恨まれ、妬まれ、危惧されるものじゃ、そこに暴君や無慈悲な性格が加われば、自ずと足をすくわれる」
魔王とは、力以前に信頼を重んじる必要があり、力を間違えて使えば簡単に身を滅ぼす、諸刃の剣のような存在だとペンネは語ったの。
そんな話を聞きながら、奥に進む私達は先代魔王の肖像画の前で弱りきった状態のリーヴルを見つけたの。
「陛下……私は幸せでした。陛下から頂いた魔力はもうすぐ、陛下の元に還ります……長き自由に感謝致します……」
自身の終わりを悟り、涙を浮かべ感謝を口にするリーヴル。
「本当に終わりでいいの! リーヴル、貴女は今から始まる自由な未来があるとしたら、それを無視して終わりを選ぶの……いきなりだけど! 貴女を私の力で本当の自由にするわ、その後で好きにしなさい!」
突然のことに驚くリーヴル。
「誰かと思えば、この場所は魔王陛下しか入れぬ掟、禁を破るなら、容赦はしてあげられないかな、いっぱい話したかったのに……残念だわ」
身構えるリーヴル。
「待たぬか! リーヴル、久しいのぉ、今この場に居るのは紛れもなく、大魔王である、ミルシュ=カミルじゃ。何一つ禁を破るような事はしておらぬぞ?」
その言葉に私を一度見つめるリーヴル、そして……
「大魔王、ミルシュ=カミル……そうだったのね……城にいないから、顔がわからなかったわ……そちらの方は誰?」
アララを指差すリーヴル。
「あ、私は五次元世界“ララリルル” を任されていた“アラナラムル”通称、アララです。あ、これでも、女神なんですよ」
その瞬間、私とペンネは同時に声をあげたわ。
「「アララ!」」
「女神……魔王に敵対する者達の守護者……敵!」
完全にリーヴルのスイッチが入り、戦闘は避けられない状況になってしまったわ……アララ、やらかしてくれたわね。