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光の矛先……永遠をなくす者です3

 ライパンから巨大要塞アザラシ【ビッグアザー】に乗り、数日間を海上で過ごす最中、私は解除魔法と解術魔法の基礎から発動させていたの。


「中々、上手くいかないわね」


 何度も解除と解術の魔法を重ね掛けしようとしては失敗してしまっていた為、無理に重ねる事を諦めて、初期の魔法から重ねようと考えたの。


「解除の魔法が解術の魔法まで打ち消すなんて……ほぼ同時に発動するから、タイミングをずらす訳にもいかないし、参ったわね」


 胸の前で両腕を組み、“ビッグアザーの背中(甲板)”に座り込み空を見上げる。


 何が駄目なのかしら、どちらの魔法も何ら問題ないのに? 悩む事ばかりで解決策が見えてこないわ。


「悩んでますねぇ? 人は本当に昔から出来ないことを悩みながら解決策を探っていく」


 煙草を加えながら軽く煙を吹き出すヒルバー。


「あ、ヒルバー、そうなのよ。何度試しても、上手く両方の魔法が組み合わさらないの、寧ろ、打ち消しあいになっててね、自分が未熟なんだと認める他ないわ」


 何故だろう、弱音が多い気がする……これも竜の心を手にしたからなのかしら。


「ふぅ……カミル様。思うんですがね? 人間って種族は敵に回すと本当に厄介な種族なんですよ。此方がやり返せば、その先の更に先まで見据えた行動をしてきます」


「なによ、それって人間が執念深いっていいたいわけ?」


「ハァ……つまり、諦めずに悩み続ける事が人間の最大の武器なんですよ。カミル様は普通の人間より賢いかと存じます。言うなれば、常識の(なな)めを進める方かと」


 皮肉にも聞こえたヒルバーの言葉は私のやる気を多いに奮い起たせてくれたわ。


「これは試作の包み焼きです。小腹が空くと人間はいい考えが浮かばないとか、冷める前に食べてください。あ、調理中は煙草を吸ってないので安心してください。でわ」


 少しキザな感じの言い回しだったけど、本当に私を心配してくれていたんだと改めて感じたわ。


 ヒルバーが置いていった蒸籠(せいろ)に手を伸ばし蓋に触れた瞬間、しっかりとした温もりが掌に伝わる。


 蒸籠の蓋を開いた途端に吹き出す湯気、中を覗き込むと外の蒸籠とは別に平たい石に無数の穴が開いた石の蒸し器が使われてたの。


「へぇ? 外の蒸籠は香り付けになるし、内側の石の蒸し器は温度を保つようになってるのね、料理が冷めないように工夫されてるのね?」


 その瞬間、私は解除魔法に消されないように、解術魔法を防魔の魔法で覆う事で膜を作れないかと考えたの。


 実際に試すと、簡単にはいかなかったわ。


 数十回の挑戦で二回程度の成功しか出来なかったの、それでも行き詰まっていた今の私からすれば新たな可能性が見えた瞬間だったわ。


 集中し、時間を忘れ魔法を使い続けた頃だったわ。


 突如、魔法が発動しなくなり私は混乱したの、慌ててアララとペンネの元に駆け出すと私は整理できないままに二人に語り出していたの。


“バタン!”とドアを開いた瞬間、二人の姿を見るなり泣きそうになっていたわ。


「どうしようッ! 魔法が、魔法が使えなくなっちゃったの!」


 でも、二人の反応は予想外のものだったの。


「それはそうじゃろ?」


「まぁ、そうなりますね?」


 落ち着きながら、冷静に頷く二人。


「カミルよ、よいか? 魔力には限界があるのが普通なんじゃ、カミルは妾より遥かに魔力が多いから初めての経験じゃろうが誰もが1度は経験する事であってな」


「そうです、寧ろ……数日間、あれだけの魔力を使いながら過ごしてやっと魔力が空になるなんて、カミルの魔力は凄まじい量だと思いますよ?」


 そう、私は初めて、自身の魔力を使いきった事に気づかされたの。


 【解除魔法】【解術魔法】の2つは本来、途方もない魔力を消費する。

 そんな2つの魔法に更に防魔魔法を加えていたのだから、本来なら、一般的な魔法使いや魔術師でも30分と持たないと言われたわ。


 大魔導師や大魔術師でも半日が限界であろう魔力を私は数日という、途方もない時間、使い続けていたの。


 ペンネは私の魔力量だと世界を三度程、炎で焼けるといい。


 アララは私の魔力量ならば世界を氷の下に眠らせる事も可能だと言ったわ。


 しかし、私は魔力が切れただけと言う事実に安堵したわ。

 目的を果たす前に魔法が使えなくなったかとヒヤヒヤしたわね。


 数日の間、魔法を使わずにいれば魔力量は復活すると分かり、バトラング王国まで魔法の発動を自粛する事にしたわ。

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