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光の矛先……永遠をなくす者です2

 ライパンを目と鼻の先にとらえた頃、朝日が顔を出し始めたと同時に私の体にある変化が現れたの。


「何かしら、急に眠気が……ヤバイわ……」


 私は元々、夜が弱い……そんな中、羽根が生えた事で頭が疲れを忘れていたの。


 そのテンションが朝日と同時に崩れ去り、私の瞼が限界を告げ、次第に重くなっていく。


「アララ……ペンネ……ごめん、限界かも……」


 私の小さな呟きに慌てて近づく、二人の姿が目に写りこんだ瞬間、視界が暗くなる。


 次の瞬間……“ギャアアアア”と言う声が朝の大空に響き渡る。


 私が次に眼を覚ましたのはフカフカのベッドの上だったわ。


「此処は……」


 辺りを見渡し、見覚えのある室内に私は即座にラッペン邸だと判断したわ。


「私……あ、そうか」


 意識がぼやける中で頭を整理する。


 空を飛んでる最中に落ちたんだ……ッ!


「タウリとナッツ! ビルクは何処!」


 慌てて声をあげるとゆっくりと部屋の扉が開かれる、そして室内に入ってきたメグを見るなり、駆け出していたの。


「メグ! 皆は、タウリとナッツは何処!」


「え、お、落ち着いてください、カミル様、皆様は無事です。今は別室にて休まれております」


 その言葉にホッとする私、その足でメグに頼み、別室に案内してもらう。


 皆は普通に紅茶を飲んでいたの、その場にはラッペンお爺ちゃんの姿もあったわ。


「……っ……皆、よかった……私のせいで怪我とかしてない、本当にごめんなさい……」


 混乱する中、まとまらない言葉を必死にまとめた謝罪の言葉。


 その瞬間、私は泣いていた……地上から遥か上空から落下したせいで誰かが怪我してたらと、本当に怖かったからよ。


 そんな私に駆け寄り心配そうな顔を浮かべる皆の姿に大粒の涙を流して泣いてしまったの。


「っ……よかった……本当に皆無事でよかった……」


 唖然とする一同を前に私は感情を押さえられず、泣き続けてしまったの。


 時刻が昼を迎えた頃に感情が落ち着きを取り戻し、まるで子供のように泣きじゃくった事実に赤面する私がいたわ。


 そんな顔を水で洗い流し、ラッペンお爺ちゃんの元に挨拶に向かう事にしたの。


「カミル、落ち着いたか?」


 ラッペンお爺ちゃんの私室の扉を開くなり、心配そうにそう尋ねられ、私は深々と頭を下げたわ。


「本当に迷惑をかけてごめんなさい。反省してます……」


 素直な言葉と私の態度に対して、豪快な笑い声が返されたの。


「何を謝る! カミル、お前は竜の心に触れたのだろう? 竜は元来、仲間を家族とし、自身の命よりも家族を重んじる生き物だからな」


 ラッペンお爺ちゃんの言葉に不思議と心が揺さぶられたわ。


 私は人なのよね……考えれば考えるほど、この世界において、私はファンタジーな異世界だからと気にもしていなかったけど、私は普通じゃないのかもしれない……


「そんな顔をするなカミル。お前のバトラング王国での話だが、実は信じたくないと思う報告をバトラング王国に行った際に耳にした。カミル……ワシはお前の幸せを願う、とだけ言っておく」


 そう口にした後、ラッペンお爺ちゃんは優しく微笑み「行ってきなさい。気をつけてな」と声にしたの。


「お爺ちゃん……ありがとう、行ってきます」


 全てを知ったうえで私を優しく送り出してくれた事実に涙を流しながら最高の笑みを浮かべ、私はラッペンお爺ちゃんの私室を後にしたの。


 扉を閉めて直ぐに「歳は取りたくないものだ……幸せになれ……カミル」と言う声が聞こえたの。


 優しさに押し潰されそうだわ。


 ペンネ達の待つ部屋に戻ると、既にタウリとナッツは学園へと旅立った後だったわ。


 朝からの授業を午後からにしてもらっていたと聞き、挨拶も出来ぬままの別れになってしまったの。


 そんな私達もラッペン邸を後にしたわ。


 旅立つ際に見送りに来なかったラッペンお爺ちゃんだったけど、私室の窓から此方をみて軽く頷いたようにみえたの。


 そうして私達はライパンの港から1度、マドラッドへと向かう事になったわ。

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