涙はいつか実るものです7
色々なことがあり、神経を磨り減らしたような感覚、本当にヘトヘトだわ。
私の気持ちも考えず、次々に出店の料理を食べて回るアララ、本当に気持ちいいくらい、美味しそうに料理を食べていったわ。
「本当に凄い食欲ね……見てて胸焼けしそうだわ」
そんな言葉を呟きながら、私達は前夜祭に彩られた村を楽しみながら進んでいく。
少しずつ、実家に近づいて行くと少しだけ、親不孝だな……と、感じている自分に気づかされる。
私はいつもそうだったの──すぐに会いに行けるからと、大切な人にサヨナラすら言えずに此方の世界に来てしまった。
「親不孝か……」そう小さく呟いた瞬間、驚きを露にする大きな声と同時に私の名前が呼ばれたの。
「カミル? カミルじゃない!」と私を見るなり驚き喋り掛けてきたのはマイヤだったわ。
側に駆け出してくると、まるで子供のように喜びを露にする姿は本当に愛らしいわね。
まぁ、凄く複雑なのよね? 私は死んだ時から考えたら、マイヤやレイトより“年上のお姉さん”なのよね──もし、私に妹がいたら、こんな感じだったのかな?
「ママ。かえってきたわよ。本当は直ぐに会いに行きたかったんだけど、なんか色々あってさ」
「ふふふ、レイトからそれとなく聞いたわ。ただ、詳しい部分がさっぱりで?」
全てを優しく包み込むような微笑み、レイトから話を聞いていると考えていた反面、自分で打ち明けねばならない事の多さに少し混乱している。
「ねぇ、ママ……」と声を掛けた瞬間……
“すみません”とマイヤを呼ぶ声。
「いけない、お店を出してるの忘れてたわ。少し行ってくるわね。よかったらあとでいらっしゃい。皆さんも良かったら来てくださいね。きっとカミルも笑顔になれるわよ」
「すみません、今いきますね」そう言い残し、マイヤは慌ててお店に戻っていったわ。
名前を呼ばれなかったタウリの表情が険しいのは言うまでもないわね、少し可愛そうな気もするわね……
「タウリ、あ、後で一緒に見に行こっか?」
「……いや、いいわ。カミル達だけで行ってくれ、多分……俺は川で拾われた子なんだよ……ははは……」
うわぁ……本気で気にしてるわね?
ダークな雰囲気を漂わせるタウリ、その背後から背中を強く叩くペンネ。
「何を辛気臭い顔をしておるか! 貴様が川で拾われたとしても、カミルの兄である幸福を噛みしめよ。この世界でカミルの兄は“タウリ”お前だけなのじゃからな」
その瞬間──タウリがペンネに対して顔を赤く染めたようにように見えたの。
「魔王に言われなくてもわかってる! 少しだけ、少しだけ弱気になっただけだ! それより、俺の名前を……」
「ああ、カミルの使えぬ愚かな兄であるタウリの名ならば、以前から知っておったわ。何度も忘れそうになったがのぉ」
二人の言い合いは、なんだか凄く暖かく見える。
それから少し出店を見て回り、最後にマイヤの出していた出店に足を運ぶ私達。
マイヤの出店に並んでいたのは“小さなりんご”に蜂蜜と砂糖を溶かした飴状のものをコーティングした【林檎アメ】だったの。
私達が訪れるとマイヤの横にはレイトが手伝いにせいを出していたわ。
久々にミルシュ家の全員が揃い、私の大切な仲間と友人が側にいる。
最高の瞬間に間に合わせてくれたアララにも感謝してるわ。
「はい、カミル。タウリ。皆さんも食べてみて、全部レイトのおごりよ。ふふふ」
「えええ、マイヤ!」
「愛する子供達と友達がきてるのよ? 3日ほど禁酒しなさい。さあ皆さん食べて、食べて」
レイトのおごりの林檎アメはとても甘酸っぱくて凄く幸せな味が口に広がっていったわ。