涙はいつか実るものです4
日が傾き始めた頃、私達はアマト村の村祭りへと向かっていたの。
アララが逃げ出したことを赦せないと言っていたペンネも凄く楽しそうに祭りの雰囲気を楽しんでいたわ、二人とも祭りは好きみたいね。
私は祭りを楽しみながら、道中にある実家に近づく度にドキドキする鼓動の高鳴りを感じていたの。
レイトが“あんなこと”言うから……( お父さんは絶対に恋愛も結婚も認めないからな!)
意識してなかったけど──シュビナに告白されてたんだった……つまり帰ったらレイトとまたその話をしないといけないのね、しかもママのマイヤも参加する筈よね。
あれね、俗に言う【家族会議】……ナンセンスだわ。
無数の考えが頭の中を縦横無尽に泳ぎ回る最中、無数に並ぶ出店の数に驚いていたわ。
私の知る村祭りは対して大きなモノではなかったし、出店も前夜祭からそんなに出るわけないのに?
前夜祭にも関わらず、村の入り口から広場までの間をズラリと出店が並び、村の“外側”にも用意の終わった無人の出店がところ狭しと並んでいたわ。
「なによ、少し村を離れてる間に随分と盛大になったわね?」
そう呟くと──「その理由を作った張本人が何をいってるんだよ?」と背中から聞き覚えのある声が耳に入ってきたの。
「一年ぶりの再会だな。カミル」
振り向くと堂々とした態度に鍛えられた肉体の身長は高いとは言いがたいが、低くい訳でもない。
剣士を思わせる剣を腰に下げ、両手には手甲を装備し、針ネズミのように刺々しい髪を黒い布を使いバンダナのように巻いた青年……
夕暮れに照らされたシルエットは優男のようなオーラを漂わせていたわ。
でもこの声は間違いなくミルシュ=タウリ……つまり、私の兄よ。
「なんだよ。久々の再会なのに、つれない顔だな? 少しは喜んでもバチは当たらないんじゃないか?」
不服そうに此方を見るタウリに対してペンネが一歩前に出たの、なんだか不味い予感がするわね。
「おぬし、少々馴れ馴れしいのぉ? 自身の実力を考えれば、低姿勢にて頭をさげることを考えよ。それが出来ぬなら、せめて言葉を慎むくらいの学習能力を身に付けよ」
あからさまな挑発に対してタウリは不敵に笑ったの。
「強気だな。誰かと思えば俺の妹に惨敗した元魔王様じゃないか? 言っておくがな! 魔王を倒せるのがカミルだけだと思うなよ!」
強気な態度に自信満々の表情を露にするタウリ。
「ほう? 今の物言いじゃと、まるで妾を倒せると言っておるように聞こえるが?」
タウリとペンネが向き合い様に睨見つけるように視線をあわせた瞬間、両者が口を開いたの
「気に入らねぇ!」
「気に食わぬわ!」
そのまま両者が構えをとるとタウリが先に動いたの。
目にも止まらぬ凄まじい剣速から放たれた一撃──切っ先がペンネの顔面すれすれで停止したの。
止めようとした私にペンネは「カミル、此れは妾と、わっぱの揉め事じゃ」と不敵に笑みを浮かべたの。
それから、タウリの剣がペンネに届くことはなかったわ。
一方的に攻撃するタウリと軽く回避するペンネ、明らかに遊ばれてるわね。