新たなる出逢い、カミルの里帰りです10
朝方眠りに着いたラッペンお爺ちゃんに軽く声をかけ、疲れはてて眠るカッシュ、ルフレ、メリアにも宜しく伝えて貰うように復活したメグに伝言を頼みラッペン邸を後にしたの。
アララに関しては「楽しそうなので参加しちゃいました」と本当に自由神だわ。
それからヒルバー達は一旦、港に戻って行ったわ。
巨大要塞アザラシが心配だと言うのが理由だけど、本当の処は二日酔いね……ラッペンお爺ちゃんと飲み比べをした結果全滅したみたい。
私はペンネとアララを連れて先ずは、ライパンの裏通りにある物々交換屋のシシリさんを訪ねる事にしたの。
路地を進み、相変わらずの不用心な店舗、扉を開き微かになる鈴の音。
店内から声はしないわね?
私達は一歩店内に足を踏み入れてから数秒後、足元に突然──魔方陣が出現したの。
いきなりの事に慌てた私とペンネ、しかし、アララは私達に「大丈夫ですよ」と楽しそうに笑みを浮かべたの。
眩い光に全身が包まれた瞬間、ふわふわと体が浮かぶ感覚に襲われ、次に重力を感じた瞬間、聞き覚えのあるだみ声が耳に響いたの。
「何をしとるか!」
少し怒ったような短気な口ぶりは、じい様の声に他ならなかったわ。
「何でじい様がシシリさんのお店にいるの……?」
くらくらする頭を必死に整理して声にした私。
次の瞬間──「バカ者ッ! 此処は儂の図書館じゃ!」と鼓膜が振動するほど大きな声が響いたの。
その声に反応して私の頭が一瞬で目覚めると辺りを見渡す。
間違いなく【アマト村】にある、じい様の図書館であり、ペンネもいきなりの事に動揺していたわ。
「あらあら、本当に転送されてくるのね? 凄いわ」
マイペースな声を出し、驚きを露にするシシリさんの姿があったわ。
「シシリさん? あれはいったい何なのよ」
私の質問に対して“さぁ?”と両手を軽くあげるシシリさん。
そんな中、“クスクス”と笑みを浮かべるアララ。
「あはは、すみませんカミル。あれは私が前もって仕掛けた転送の神技なんです。カミルがシシリさんの所に行くと思い仕掛けていたんです」
アララは他にも数ヵ所、私が立ち寄りそうな場所に転送の神技を仕掛けていたみたい。
本当に何を考えてるのかしら? 普通に移動してもそんなに時間は掛からないのに。
「あ、カミル? 此れにちゃんと訳があるんですよ! カミル達を転送したのは今日がアマト村の村祭りだからです!」
「……は?」
村祭りの料理を楽しみたいと言う目的から、私達を転送した女神……本当に自由神すぎるわね。
とにかく目的を果たさないと。
「じい様、シシリさん。聞きたいことが──」
その時“バンッ!”と図書館の扉が開いたの。
「カミル! 我が愛しの娘よ!」と言う掛け声、そして全力で近づき足音。
次の瞬間、目にも止まらぬ早さでじい様が全力の拳を突き出したの。
「扉を静かに開かぬかッ! このバカたれがァァァッ!」
一瞬で外に吹き飛ばされた男性──言うまでもなくレイト……つまり、私のパパだわ。