バトラング王国は謎だらけです3
シュビナの元に向かう私は不思議と足取りが軽く感じていたの、なんとも認めたくないけど、多分、シュビナと会いたいんだと思う……
『カミル? またシュビナに会いに行くの?』
肩からデンキチの声がする、ついてきたのね?
『そうよ、それより何で肩に乗っかってるの?』
『ビルクがね、カミルの側から離れるなって、心配してたよ?』
心配? 普段はそんな素振り見せないのに、まあ、いいわ。
『デンキチ。しっかり掴まって。午後の授業までに戻るんだから、飛ばすわよ!』
バトラング王国へと到着した私は急ぎシュビナに謁見を申し込んだの。
でも……
「申し訳ありません、カミル大使。只今、王は誰にも会えぬとの事、今回はお引き取りください」
シュビナは私を避けているように感じる、私はシュビナに何かしただろうか、心がモヤモヤする。
よし、相手が逢いたくないと言うなら仕方ないわね。
「話はわかったわ。今からシュビナに逢うわ。私を止めるなら覚悟を決めてから止めなさい!」
そう、押してもダメなら……壊すまでよ! こんだけ働いてあげて、わざわざ会いに来てあげたのに! 逢いたくない?
「っざけんじゃないわよ! “仏の顔も三度まで”なんだから!」
『よくわからないけど、カミル、今【オーガ】より怖い』
デンキチの発言はスルーね。
因みに私を止めようとバトラング王国騎士団が姿を現したわ。
勿論、優しく吹っ飛ばされて貰ったわ。中庭にバイキングの山が出来たわね?
「シュ・ビ・ナッ! 会いに来たわよ!」
扉を乱暴に開いた先には弱り果てたシュビナが横たわっていたの……
「な、シュビナ! 何よこれ」
側に近寄るとシュビナが口を開いて小さな声を発したの。
「今すぐ離れろ……呪いが移るぞ」
「いいから黙って!」
私は空気の籠った室内の窓を全て開き空気を入れ替える。
「メルリッ! 居るんでしょ! 今すぐ湯を沸かして」
私のマップに写るメルリの文字に最初は仕方無い奴と思ったけど、こうなると此処まで頼りになる存在も居ないわね。
メルリに指示を出して数分。
「お嬢様……その、お湯を御持ちしました……怒ってますか?」
扉をノックしてから室内に入ってくるメルリ。私の顔色を窺ってるわね。
「怒ってないわ、それより今からこのレシピを作って欲しいの」
私が手渡したレシピには、【お粥】【すまし汁】【生姜と蜂蜜の割り湯】の作り方と材料が記してあるわ。
「市場で手に入る物ばかりよ。味付けは任せるわ。多分、此処の厨房は大きすぎるから、一旦、フォレストタウンに向かって御願いねメルリ」
多分、味も見た目もメルリはわからないと思うわ。でも、今はメルリに頼るしかないもの。
「わかりました。直ぐに戻ります!」
私はシュビナの服を剥ぎ取り、服を更衣させる。見た目は呪いと言うより風邪に見えるわ。
ただ、バイキングは風邪などと言った病原菌に負けない体を持っているはずなの、シュビナの「呪い」と言った意味を考えないといけないわね。
本当に呪いが有り得るから困ったわね。
「シュビナ、何があったか全て話なさい!」
シュビナは力なく笑みを浮かべたの。
「カミルがこんなに……心配してくれるなんて……呪いも悪くないものだな」
「バカ言わないでよ、それより本当に何があったの」
シュビナはゆっくりと口を開いたの。
「長老衆……」
その時、只ならぬ怒りが込み上げてきたの。
「わかったわ。少し寝てて、メルリが直ぐに料理を運んでくる筈だから」
優しく微笑む表情の内側に私は長老衆に対する苛立ちを募らせたわ。