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強者と狂者です2

 私の目の前で舞い上がる粉塵が次第に消えていく。

 全ては絶望でしかなかったわ……じい様を襲った銀色の猛虎の巨大な爪……


「ハァ、穏便に済ませたかったのに……」


 私の溜め息の先には、一瞬の攻防の末に銀色の猛虎の一撃を躱し、その後に猛虎の顎を蹴り飛ばし、バランスを崩した猛虎の喉に人指し指を突き付けた、じい様の姿があったわ。


「大きいだけの猫が、儂に敵うと……世間知らずめが!」


 じい様を前に身動きが取れなくなる銀色の猛虎の姿に私は改めてじい様の恐ろしさを知った気がするわ。


「あ、じい様ッ! ストップ、私は猛虎に話を聞きたいの! それ以上は絶対にダメよ!」


「なんじゃ? 食材にせんのか? 筋があっても上手く調理すりゃ鍋くらいには使えるぞ?」


 じい様、危ないわね……このままだと、間違いなく銀色の猛虎が鍋にされるわ……


 いろんな意味で、それだけは避けないと。


「なんじゃ? 儂を襲ってきたのは、そのの方じゃろ。食われる覚悟がなく食いに掛かる方が問題じゃろが」


 笑えないくらい怒ってるんですけど……嫌だ、関わりたくない……


 殺気だったじい様を前に(へび)に睨まれた(かえる)状態の私……本当に勘弁してよぉぉー!


 しかし、心の叫びは虚しくも消え去ったわ……


 猛虎がじい様に対して、大きく口を開いたの、その瞬間、じい様が拳を握り、猛虎の鼻に正拳突きを入れたの、猛虎はそのまま、意識を失い地べたに倒れ込んだわ、本当に有り得ないわ、じい様。


 それから直ぐに森がざわめき、至る方向から視線を感じたの、マップには有り得ない数の赤い点滅(敵マーク)が表示されていたの。


「賑やかな森じゃな? ラッペンよ! 何とかしろ、五月蝿(うるさ)くて敵わん!」と、じい様が口にしたの……嫌な予感しかしないわ。


 “仕方ない”と言わんばかりにラッペンお爺ちゃんがフレイムドラゴン【ボルド】を召喚したの。


 本当に待って! これ以上、森の魔獣達を刺激しないで!


「まっ……」

『グァァアアァァァァッ!』


 私の声を掻き消すようにボルドの雄叫びが森を震動させたの。


 それを目にしたデンキチが『マズくない?』と尋ねてきたので、私は首を縦にゆっくりと振ったわ。


 まさかの麟鳳亀竜の登場に私は絶望したわ。


「さて、ラッペン。食材も手に入った処で話を進めるとするか?」


 食材と言い、じい様が指を指した先には……銀色の猛虎がいたわ。


 しかも、この場には話があって来たと言うんだから、銀色の猛虎には同情するわ、本当に末恐ろしいわね。


 じい様は辺りを見渡すと、大きく息を吸い込み、深く息を吐き出したの。それからの表情は私が今まで見た中で一番険しい物に見えたわ。


 ただ、問題はボルドの雄叫びでも逃げなかったボスクラスが此方に向かっていた事よ、森の生態系とか、無茶苦茶になりそうな予感しかしないわ。

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