大使以上のお仕事です5
魔獣の森、少しだけ甘く見てたわね、メガと変わらない体型にスカー並の俊敏さ、更にデンキチ並の馬鹿力、モームに負けないんじゃないかしら。
虎と言うより、サーベルタイガーね、寧ろ、牙が生えてなかったら食べられてたかもしれないわ。
「フッフフフ、アンタやるじゃない! でも、負けないんだから!」
私が力を入れようとした瞬間、前方の茂みから小さな虎の子が飛び出してきたの。
サーベルタイガーの子供? と思った瞬間、私に向けられていた力が無くなり、咄嗟に庇うようにして向きを変えたの。
『我々が何をした! 森から出ぬ我々に何の恨みがある! 小さき魔物よ!』
必死に子共を守ろうとするサーベルタイガーの姿に私は確信したわ。私が悪者ね……
『アンタに話があるの、確かにいきなり森に入ったけど、そっちが先に仕掛けて来たんだから御互い様よ』
牙を離し、私は真っ直ぐにサーベルタイガーを見つめる。その後ろから私に向かって威嚇するチビ虎の視線がマジに痛いわね……
私は村が襲われた経緯とそれに該当する者が他に居ないかを尋ねて見たの、因みに自己紹介も済ませたわ。
『私はミルシュ=カミルよ、この国には一応、仕事と言うか、なんと言うか、まあ、あれよ! 人助けにきたの』
『私はディマだ。森の入り口から中心までを守護する森長のひとりだ。話は理解した……だが、森の者を護るのが我々、森長の宿命、ムザムザと通す訳にはいかぬのだ』
話し合いは無駄だったと思った瞬間、ディマは私達にそっぽを向いたの。
『1ついいか? お前達はバイキングより、遥かに小さい、何故、他種の為に命をかける? 流石に危険が無いなどと考えてはおるまい?』
不敵に微笑む後ろ姿は警戒していないように見えて隙がないわね。
『そうね、危険はどんな時でもあるわ。でも、やると決めた瞬間から動くのが私流なのよ! あと私達を止めないで、出来たら戦いたくないのが本音よ』
嘘は言ってないわよ。戦えば私が勝つのは間違いない、でもさ、子供の前で其れは良くないわよね。喧嘩なら未だしも、本気の戦いになるもの。
『森の中を進むのか? 小さき魔物、カミルよ』
『ハァ、当たり前よ。さっきも言ったけど、私はやると決めたらやるのよ』
『フッ、ならば忠告だ。“銀色の猛虎”には気を付けろ、奴は異端……いや、これ以上は森長としては口に出来ぬ、夜になる前に森を出よ。忠告はしたぞ、小さき魔物』
話を終えたディマは大きな雄叫びをあげる。
私達はディマ達と別れ森を進んでいく。幸いなことにディマの縄張りで魔獣に襲われる事はなかったわ、多分、あの雄叫びが魔獣を移動させたのね。
マップを広げ、魔獣の森を再度確認する。
ディマはボスクラスである事は予想していたわ。問題は他にも森長と呼ばれる魔獣の存在ね、全てがボスクラスである可能性を踏まえて、位置の確認をしておきたいもの。
マップには、ディマの他に6個ものボス印が点滅していたわ、正直、今まで村が全滅してないのが不思議なくらいね。
ディマは言っていたわ『森から出ぬ我々……』本当にそうだから、未だに村が無事なんだとすると、残るは1つ、“銀色の猛虎”……この銀色の猛虎を見つけるのが一番の近道かしら、取り敢えずはボス印を当たるしかないわ、話し合いで解決したいわ。