フォレストタウンです6
全身が震える程の力……私は本気を出してはいけないと感じる程、危険な力を手にしてしまったのかもしれない。
元の姿に戻っても、私が竜になった事実を前にアンドレアの部下は動けずにいたの、まあ、元々1対1の決闘だから手出しは禁止なんだけどね。
「えぇぇぇい! 臆するな! 我が部下達が人間の幻術を恐れるなど、嘆かわしい」
アンドレアの部下達は賢いのね、本能も含めて危険を理解してるみたい、つまり、アンドレア一人を何とかすれば本当に何とかなるね。
「嘆かわしいのはアンタよ! アンタの部下は既に力の差を理解してるわ。アンドレア、貴方も今すぐに降伏して謝罪すれば、今回だけは許してあげるわよ!」
私ってば優しいなぁ、まあ、被害は実際には無かったし、力のコントロールがまだ出来なそうな今の身体だと危ないものね。
でも、私の優しさは通じないみたい……さっきからアンドレアの奴、凄い睨んでくるんだけど、やっぱりやるしかないのかしら?
アンドレアの部下も慌ててるわね、本気で竜と戦うなら、バトラングなら全体の2/5の兵力をぶつけなくては為らなくなる、竜は今のララリルルに数を減らして生活している事実を考えると、曖昧な状況で刺激したくないってのが、本音なのかしら?
私は話を聞かずに、私を倒すと叫ぶアンドレアに向かって、一瞬で移動する。
地面が窪む程の脚力は私が本来持っている【特急強化】より威力かある事実に衝撃をうけたわね。
私がアンドレアの前に移動した瞬間、風向きがかわり、アンドレアと後方にいた部下達に吹き付けたわ。
まるで昔、アニメでみたバトルシーンを思い出すわ、残念なのは魔法少女の筈なのに戦闘モノにしか見えない事ね。
それは紛れもなく、勝敗を決める1歩になったわ、私が立っていた位置からアンドレアまでの距離は大体20メートルあり、私はそれを一瞬で移動した、つまり、アンドレアは逃げる事を考えた際にその距離より更に遠くに飛ばなければならない。
アンドレアもそれを理解している。そうなれば、次の行動は2つに1つしかないわ。
1つは降伏ね、負けを認めて謝罪ね。
もう1つは最悪のパターンで私への攻撃ね、そうなったら性根を叩き直すと言うより性根を叩き曲げて謝らせてやるわ。
どちらになっても構わないけど、私に攻撃するようなバカでないことを祈るわ。
「ガハハハッ! 我が前に現れた勇気は見事、だがな! バイキングの前に姿を晒すなど、愚かとしか言えぬぞ。ウオォォォォ」
やっぱりバカだったか、残念だわ。
速攻で叩き伏せるしかないかなぁ?
そんな事を考えていた私、次の瞬間だったわ、私とアンドレアの間に槍が一本飛んでくると声がしたの。
「お前らッ! 双方共に下がれぇ! ハァハァ、危ねぇ……カミル! 何してんだぁ」
あら懐かしい、ボノルじゃない?
「何よ、ボノルじゃない? 久々に来たと思えば、そんなに慌てて? 体に良くないわよ」
「うるせぇ! それより、何でこんな辺境でしかも、弱小貴族のアンドレア家と揉めてんだぁ? お前もだ! アンドレア=ドヤサ、田舎貴族で知らねぇだろうが、お前が相手してるカミルはバトラング王国軍、すべての戦力をぶつけても勝てるか、わからねぇ魔王なんだぞ!」
さっきから少し引っ掛かるわね?
ボノルはバトラング王国の戦士よね? なのに領主のアンドレアより偉そうなのかしら?
色々な疑問が生まれながら、私は目の前でボノルに正座をさせられるアンドレアを見つめていたわ、なんか拍子抜けね。