フォレストタウンです5
予想以上に怒ってくれたアンドレアは私の力も戦い方も何一つ分からないままにも関わらず、得物を手に握り、鼻息を荒げていたわ。
私の予想より早く駆け出してきたアンドレアは単身で来てくれたわ。
「あらあら、予想外だったわ、全員で向かってくると思ってたから」
「ぬかせ! このアンドレア=ドイヤ、人間一人を相手に部下を動かすか!」
プライドなのかしら? それとも油断、私がもし、竜なら全員で掛かって来たのかしら、人間だから、一人で戦うのかしら、少し興味が湧いたわね?
私は、じい様の地下室で読んだ禁書を静かに思い浮かべていたの、目を一瞬、瞑ると瞼の裏に浮かぶ無数の文字、輝きだした文字を意識でなぞるように、静かに禁術を口にする。
全身が焼けるように熱い……体の中から全てが噴き出しそうな感覚、一言で言うと、全身が火山になったような感じがするわ。
次に目を覚ました瞬間、私の身体は炎に包まれていたの。
何よこれ! なに? 私のお尻にしっぽ……背中にも……羽よね?
私の姿に唖然とするアンドレアと部下達、しかし……1つ疑問が生まれたわ、サイズが小さいの……バイキングであるアンドレアは普通に二メートル以上、三メートル未満の大男よ、そんなアンドレアがまるで人形くらいのサイズになっていたの。
私は自身に何が起きたのか分からず、水魔法で全身を写し出す。
緑の皮膚には鱗があり、手には鋭い爪が生えているのが分かったわ……つまり、人じゃなくなってる!
混乱する私が見た姿はドラゴンだったの、有り得ないわ……
そんな時、天の助けと言わんばかりに、神であるマルルから頭に念話が聞こえてきたの。
『派手な姿じゃなな? カミル、人間をやめて魔王になると思っておったが、竜に成るとは、一本取られたわい』
楽しそうに語るマルルに少し苛つきながらも、助け船を出しに来てくれた事実を踏まえて、冷静に対応したわ。
『マルル、いきなり竜になっちゃったのよ! 禁書には“思いのままの姿になる”って書いてあったのに、何度考えても姿が変わらないの』
『なぁに簡単じゃよ。今の姿を1度受け入れ、新たな姿を望めば良い。人は姿が変われば動揺する。受け入れた時、自身の姿は定着する、今はまだ定着していない為に新たな姿に成れぬだけじゃ。それより、蜂蜜が切れてしまってな、新しい蜂蜜をアララかクレレに届けさせてくれ、頼んだぞ』
本命はそっちなの! まあ、いいわ……色々引っ掛かるけど、やり方がわかったし。
今の姿を受け入れ、更に前の姿を重ねるようにイメージを膨らませる。
全身が更に焼けるように熱くなった瞬間、私は自身の手が人に戻っている事に全身が震えたわ。
「待たせたわね」
「幻覚か! 小賢しい真似を」
アンドレアは私の姿が幻覚で変わったと考えたみたいね?
なんか、よく分からないけど、凄く力が溢れてる感じがするわね。