シュビナとカミルです3
シュビナと話が終わると私は早々に次の作戦に移行する。
財宝を私が預かった理由はシンプルに撒き餌のような物よ。
私達とクローム=セリの戦いは朝も早かった事もあり、傍観者はおろか、一般の国民には知らされてすらいないの。
余りに早く決着が着いた事も理由の1つね。
私達の強さを知るバトラング王国の一部の兵士にも口止めをしたから情報が漏れる心配も無いわ。
つまり、今から私が“おとり”として行動を開始する。
財宝を人間の私が大量に預かったと知れば、自然と悪人が集まる気がしたの。
まあ、集まらなくても構わないわ、一人でも捕まえれば此方のモノだもの。
ハニーフォレストへと戻ると直ぐにウトピア村の村長と村人に集まってもらう事にしたわ。
「……と、言うことで。財宝を預かったの。でも、ウトピア村の皆に迷惑を掛けたくないから、私は村から少し離れた場所に移動しようと思うの」
私は自身の考えを伝えると村長が立ち上がり、私の目の前まで歩み寄って来たわ。
「カミル様。勝手な言い分にて、不快に為られるやも知れませぬが我々はバトラング王国でなく、貴女に命を預ける事を決めました。ウトピア村はバトラング王国の支配下より抜けるつもりです」
は? いきなり何を言ってるのよ!
「待ちなさいよ! そんな事したら、バトラング王国に攻撃されても文句言えないのよ」
しかし、村長達は考えを変えなかったわ……マズイわ、仕方無いわね。
「アンタ達、少し待ってて。私が帰るまで絶対に勝手な行動をしないで良いわね!」
私は直ぐにシュビナの元に舞い戻ると直ぐにある願いを口にしたの。
「シュビナ! 褒美の前借りを要求するわ!」
慌てて戻った私から出た“褒美の前借り”という言葉に驚きながら笑い始めるシュビナ。
「アハハ、慌てて褒美の前借りだなんて、カミルらしくないな? 一大事でも起きたのかな? まあ、話を聞かせてくれ」
私は全てを話してはいけないと考え、あくまでも、財宝を守る為にウトピア村を私の領地にして欲しいと願い出たの。
「構わない。寧ろ、一時的にウトピア村一帯の統治を頼みたいと思っていたんだ。元はクローム=セリの領地だったが、クローム=セリは領地没収、ならびに爵位の剥奪を命じた。あの土地は今、領主を失っている状態なんだ」
予想していた反対はなく、寧ろ逆に領主になるように言われた私はウトピア村の事もあり、其れを一旦引き受ける事に決めたわ。
私はあくまでも、マドラッドの大魔王という立場であり、五ヵ国連合の一員であり、ベジルフレア王国の大貴族、トリム=ラッペンの義理の孫である立場を忘れては為らないからに他ならないわ。
それでも、かなり自由に動けるようになった事は間違いないわ。
「シュビナ、ありがとう。恩に着るわ」
「いちよう領主なら、“シュビナ王”と他の者がいる際には呼んでくれよ。朗報を期待してるぞ。カミル」
私は村に戻り、シュビナから領主になるように言われた事実を伝えたの。
ウトピア村一帯の開拓と財宝が狙われるように噂を流さないと、忙しくなるわ。