成り行きでバトラング王国です3
強烈なアルコールの匂いが周囲を包み込むと誰もが私の言葉と行動を疑う事はなかったわ。
当然だけど、この酒は私が魔法で中身をアルコールの匂いのする水に変化させた物よ。だから炎を近づけても引火はしない。でも、相手はそんな事は知らないわけだから、かなり怖いはずよね?
私は指先に小さな火を灯すように作り出すとアルコールのままの酒瓶を近くに岩に叩きつける。
当然のように強いアルコールの匂いが一瞬で広がると其所に目掛けて私は指先の炎をゆっくりと放り投げるように指先から岩に放つ。
“ボワン”と言う引火音と共に一気に燃え上がる炎は私でも驚くレベルだわ。
脅しには十分な威力だったわ。お陰で今回の黒幕であるクローム=セリの名前をあっさりと聞き出せたわ。
「で、なんでバトラング王国の魔導士が私達にちょっかいを出すのかしら?」
「知るか! 質問には答えたんだ早く解放してくれ! 今なら俺達も酒を落としたと言えば済む、今回の事は喋らないから頼む!」
頭が痛くなるような考え方だわ、勿論、却下よ。
私はロクさん達に捕まえたバトラング王国兵達を預けて、再度進軍しようとした時だったわ。
急な眠気に襲われたの、私は久々に睡眠時間が足りない事実を身体で体感したわ……まずいと思った瞬間、大空から聞き覚えのある声がしたの。
「お嬢様アァァァッ! 大丈夫ですか、嗚呼、私ったら心配していたのに、防げないなんて……アンタ達、何してるの!」
薄れる意識の中、優しく抱き抱えられた私はメルリの声にホッとしながら、睡魔に負けた。
私が次に目を覚ましたのはメガの大きな背中の上だったわ。
空はまだ暗く太陽が登るまでは時間が有ることは直ぐに理解できた。
そんな私はメルリに膝枕をされている……その横にはサトウの姿もあり、二人は私を心配して駆け付けて来たのだと思うと少し嬉しくもあるわね。
其れから、しばらくしてメガの足が止まるそれと同時にメルリが私を擦り、目的のポイントに到着した事を知る。
「お嬢様、目的のポイントですが、王国から大分離れておりますが宜しいのですか?」
メルリの言う通り、バトラング王国からは、かなり離れてる場所に陣を開いたわ。
本来の夜襲なら、王国の中に攻め込む勢いでやったでしょうけど、今回は戦闘事態は目的じゃないわ。
「いいのよ。多分、敵の親玉である、クローム=セリは私達を侵入させまいと必死に兵を私達に向けてくる筈、そこが今回の肝になるわ!」
首を傾げるメルリ。
「いいから、見てなさい。今からバトラング王国の兵士を一気に釣り上げるわよ。アンタ達! 風の王から畑を守り抜いたアンタ達はバトラング王国軍の兵士より遥かに強いわ! でも、今回も死人ゼロが目的よ! いくわね!」
「「「オオオオォーー」」」