風の王と最小の召喚師です2
【風の王】の正体が巨大な竜巻と台風の二つだと理解した私は先ずは近付いてくる竜巻を何とかする事にしたの、勿論だけど、半端な魔法は火に油を注ぐ事になるわ。
「【風の王】だかなんだか知らないけど、異世界から来た私を嘗めんじゃないわよ! 光の防壁! 絶対零度の防壁! 此れが禁術の【空気の存在しない悪夢】!」
光の防壁の中にマイナス20度の世界を作り出し、更に弱まった時点で光の防壁の中に存在する空気を一瞬で消し去る。
この組み合わせは正に禁術を最大限に使う為の反則みたいなものよ。
光の防壁は全ての物理的な反動を防ぎ、更に絶対零度の防壁が竜巻を一瞬で弱めるわ、最後に防壁内の空気が無くなれば、竜巻は風を巻き込み生まれる物だから、消え去るわ。ただ、いきなり空気を無くせば、反動で多大な被害が出るから、絶対零度の防壁が全体の鍵になるの。
マイナス20度と言う極寒の環境を作り出したのはその為よ。
光の防壁事態は地中、つまり、竜巻の全体を包み込む巨大な防壁を作らなければならない荒業でもあるの。
ただ成功すれば、あとは徐々に防壁内の温度を下げて、空気を消し去れば終わりよ。
光の防壁を解除する前に中に再度、空気を送ることを忘れないようにしないといけないわ、空気の無いままに防壁を解除したら吸い込む力で更に被害が出るもの。
一分にも満たない時間の中で私は全神経を磨り減らすような緊張感と共に竜巻を完全に消し去ったわ。
正直、理論上の話だから上手く言って良かったわ、教育的科学番組に初めて感謝したわ。
竜巻を消し、光の防壁を解除した瞬間、私は後ろ向きに倒れ込む、メガがそんな私を支えるように背を貸してくれたわ、フカフカのメガの背中に触れた瞬間、やり遂げたと改めて実感したわ。
そして、離れた場所に向かわせていた、バイキング三兄弟が私の元に戻ってきたの。
「カミル様! 御無事ですか!」
「風の王がいない!」
「凄い! カミル様が風の王を討ち取ったぞ!」
「「「ウオォォォォッ! カミル様、バンザーイ!」」」
両手をあげて喜ぶバイキング三兄弟の姿はまるで大きな子供みたいだったわね。
「喜ぶのは早いわ、もう1つヤバイのがまだあるんだから!」
海て海水を吸い上げる巨大な渦、気づけば、雨粒が次第に勢いを増し、体に風と共に吹き付けられる。
「あれを止めないといけないわね?」
私は台風を目の当たりにし、ある考えが頭に浮かんだの。
「予定変更よ! 台風を消すんじゃなくて耐える方法を今から教えるわ。ハニーフォレストに急いで戻るわよ」
私の言葉に首を傾げながらも頷くバイキング三兄弟、私はハニーフォレストに戻って直ぐに【風の王】が台風である事とそれに対してどう立ち向かうかを村人全員に話したの。
畑の周りに風避けとして、木を一本ずつ打ち込み、巨大な栫を作り、更にその上に被せる為のネットをクラブスパイダーに編んで貰う。
急遽の事でありながら、クラブスパイダーとダブルスパイダーの皆は凄まじい勢いで村一つ分の巨大な畑を覆えるネットを完成させてくれたの、無理をいった分、確りと後で御礼をしないとね。
其から私は作製魔法で巨大な布を二枚作り上げると片方には風の抜け穴を無数に作り、樹精霊のジュレに水を弾く樹脂でコーティングを施して貰い、もう片方は穴を開けずにコーティングをして貰ったわ。
穴が空いてない布を木の杭に確りと結び、角度をつけ、その上にクラブスパイダー達の作ったネットと穴の空いた布を設置する。更に畑の周りにセンチピードのオリンとオランに頼み、堀を作ってもらう。
巨大な掘りも坂になるように一定方向に流れるように工夫をしたわ。
話では水害事態は対した事はないと言われたので堀を作る事にしたの。
堀の底にはボス達の水分を吸収し膨らむ果実と水を蓄える植物を大量に配置したわ。
私の世界だと有り得ない台風対策だけど、この世界ならこのやり方で何とかしのげる筈よ。
「さあ! 風の王から畑を皆の手で守るわよ!」
「「「オオオオォォォッ!」」」
一致団結の雄叫びがハニーフォレストに上がるといよいよ、雨風が強まり、空は黒雲に包まれていく。
風の王(台風)とウトピア村の戦いが今始まる。