未来の種です5
行動に出ると言っても、流石に火を放つわけにはいかないわ。
私なりの遣り方で村を救うしかないじゃない。
「村長、1つ提案よ!」
私は村人の視線に臆する事なく村長にある提案を持ち掛けた。
村人は私に更に強い恨みの視線を向けている、それでも今話さないと解決の糸口すら見つからない状況になると私は考えていたわ、そうなれば後のウトピア村にとっては危険だと感じたの。
「提案? どのような内容ですかな、話を聞くだけでも宜しければ、是非にお聞かせください」
私の話に耳を傾ける村長。
「私は今からウトピア村を占領するわ、出来たら素直に従って欲しいの、わかるかしら?」
私の発言に怒りを露にさせたバイキングの村人達、形振り構わずと言った状態で武器を手に私に向かって駆け出してきたの。
「言いたい放題言いやがって! 行くぞお前ら! やっちまえ!」
「「「オリャアァァァッ!」」」
村長が止める前に一歩前に出た私は透かさず、地面に足先で線を引くと後ろに飛び線から距離をとる。
「忠告は1回、その線から此方に入って来たら全力で泣かすわよ!」
私の優しさは彼等には通じなかったわ、次々に線を越えて来るバイキング達、私はその場に落ちていた“小さな石ころ”を拾い、指で軽く弾く。
私のデコピンの力を応用して放たれる【指バズーカ】は手加減なしで射てば岩さえ砕く、なので、全力でと言いながらバイキング達には手加減をさせてもらっているわ。
「ギャア!」
「いでぇぇぇ」
次々に悲鳴を上げるバイキング達、因みに私が狙ったのは顎と脛の2ヶ所よ。
世に言う急所の2ヵ所ね、脛は泣くほど痛い筈だから後で回復させてあげないとよね?
そんな事を思いながらも、攻撃を続ける私。
既に勝敗が決していたんだけど、負けを認めて貰わないと話が先に進まないのも、また事実なのよね。
そんな私とバイキング達のやり取りを見ていた村長が手を大きく振り上げたの、そして……「参った。儂らの負けだ」と呆気なく呟いたの。
「ミルシュ殿、負けた我等が言うのも変な話だが、御話を最後までお聞かせくださいませんか?」
私はウトピア村の降伏を受け入れると本題に入ったの。
「言いたい事は変わらないし、簡単よ! あなた達を私が雇うわ。代わりに村を好きに使わせて貰うわ!」
私の発言に驚き眼を丸くする村長と村人達、まあ、当然の反応ね?
「いい、あんた達の村は今、食糧が尽きた状態よ! 簡単に言うなら、芋1つで家族全員がお腹を満たさなくちゃいけない状態になるわ。でも、私なら食糧を確保できるわ」
私は嘘偽りなく、村人達にそう言い放った。
「そんな危険な賭けが出来るか! もし、お前の話にのってもっと酷い状況に追いやられたら迷惑だ!」
村人の発言に迷う者も少なくない最中、再度、私は声をあげたわ。
「賭けだと思うなら賭けなさい! 生きることは未来を掴み取る為の賭けに過ぎないわ! 生きる為に命を掛けないなら構わない、ただ、1つ言えるのは強者と弱者の線引きを変えない限り、この生活は変わらない! でも、私は強制はしないわ、選ぶのはあなた達よ」
「ならば、儂らはミルシュ殿の元に行こうじゃないか、どちらにせよ、食糧は既に無いんだ、なぁ皆の衆?」
村長の鶴の一声が決めてとなり、ウトピア村は私が面倒を見ることになったの、当然、村はビルクの力で小さくしてから、ハニーフォレストに移動させたわ、此のままだと危ないもの。
ウトピア村のあった場所には後に畑を作る予定だと伝え、先ずは皆にお腹いっぱい、蜂蜜とパンを食べて貰ったわ。
今回は大赤字になるかもしれないけど、後の投資だと思えば悪くないわね。此処からが本領発揮なんだから、少しバトラング王国にも泣いて貰わないとね。