表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

145/312

未来の種です4

 バイキングの呼び方を決める前に私は彼等の名前を聞くことにしたの。


「そう言えば、名前を聞いてなかったわね? 貴方達の名前を教えて」


 私の質問に口を閉ざすバイキング達、その姿に違和感を感じずには要られなかったわ。


 再度、質問をしようとするとバイキングの一人が重い口を開いたの。


「俺達に名前はない……名前はバトラング王国で正式に名乗らねば認められない」


 拳を握りながらそう語るバイキングの一人。


「なら、名乗ればいいじゃない? 何で名乗らないのよ?」


 私の言葉に歯を食い縛るバイキング。


「違うんです、彼も俺達も多分ですが、元は名前がありました。バトラング王国が北の支配者になった際に、その側近である魔術士【クローム=セリ】が俺達の名を封印したんだ」


 は? そんな魔法が存在するわけ?


「まどろっこしいわね! なら、アンタ達は取り敢えず、一郎、二郎、三郎でいいわ」


「「「エエエェェェェ!」」」


 あ、やっぱり安易すぎたかしら……


「俺達に名前をくださるのですか!」


「うぅぅぅ、長く、名もなく過ごした我らになんと言う優しさか!」


「ありがとうございます! カミル様、私達は感謝を絶対に此の御恩に酬いて見せます!」


 私はこの時、バトラング王国を後に大混乱に陥れる事になるなど思いもしなかったわ。


 その日の夜だったわ、私の元を後にしたバイキング三兄弟と私が決めたうちの一人、一郎が私の元に慌てて訪ねて来たの。


「カミル様ッ! 助けてください。村にバトラング王国の兵が来て」


 慌てる一郎を見て、私は訳を聞く間もなく、一郎をメガに託し、ハニーフォレストを飛び出したわ。


 村の場所はマップで直ぐにわかったけど、敵らしき反応は見当たらない。


「メガ! 私は先に行く」


『わかっただ!』


 全力で大地を踏み締め、一気に風魔法を足の裏に集中させる。


 全身が風になったような感覚の中、辿り着いた目的地【ウトピア村】


「なによ、村に何があったの!」


 私は辺りを見渡すと村人達が膝を落とし静かに空を見上げる様子に気づいた。


 村は小火(ぼや)が起きたであろう、黒煙りが空を上がり、星の輝きを遮るように薄く広がっている。


 村人達が私に気づくと、冷たく鋭い目線が無数の矢のように向けられる。


 ただ事じゃない事は来たばかりの私にも直ぐに理解が出来たわ。


 そんな目線の先から「皆、やめんか!」と大きな声が発せられ、村人が道を作り出す。

 その先に姿を現した明らかに歳のいった老人バイキングが一人、堂々とした態度で私に向かって近付いてきたの。


「村人が失礼した、些か込み入った事情でしてな、して、貴女が噂に聞く、ミルシュ=カミル殿でしょうか?」


 村人達が私を睨む中、自然な表情でそう尋ねる老人バイキング。


「えぇ、私がそのミルシュ=カミルよ。貴方はどちら様なのかしら?」


「ホッホッホッ、バイキングを前に堂々たる態度、実に清々しい。儂は村の村長をしている【ダダル=ドマ】と申します。此度はどう言った訳で村に来られたのですかな?」


 敵意を感じさせない物言いをしながらも、歓迎はしていないと言うのが明らかな雰囲気の中、メガに運ばれて一郎が村に到着する。


「村長様ッ! カミル様は味方です、俺の話を聞かずに直ぐに行動してくださったんです!」


 慌ててそう語る一郎、私は訳を聞かずには要られなかった。

 そして、今回の【ウトピア村】で起きた小火(ぼや)がバトラング王国の兵士によるモノだと分かったの、理由は私に手を出したバイキング三兄弟への罰と言ったところね……


 一番の問題は、火が放たれたのが村の食料貯蔵庫だった事だわ。

 私は直ぐに行動に出ることを決めたわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ