未来の種です3
私とバイキング達を止めた声の主達が勢いよく近付くと、バイキング達が慌てて膝を地面につけたの。
その行動から直ぐに声の主が彼等より格上の存在だと理解したわ。
私の前に現れた立派な牛のような角の兜を被ったバイキングが3人。
更に後ろにはもう一人指揮官のバイキングの姿があり、他の3人と指揮官が巨馬の魔獣から降りると同時に私の前に姿を現したわ。
「申し訳ありませんでした。ミルシュ=カミル様、この者達の非礼深くお詫びいたします。罪は償わせますので、どうか拳を御収めくださいませぬか」
そう言い兜を取った指揮官、その顔に私は見覚えがあったわ。シュビナの側近でバトラング王国の老将【マルテ=ドルド】だったの。
ドルドの言葉に私に攻撃を仕掛けてきたバイキング達が怯えていたわ。
「罪なんて無いわよ! 私が一方的に質問をしていたの、其れよりシュビナに伝えてほしいの。私の森をバトラングに置かせて貰ったから、その事を国民に伝えて欲しいって、お願い出来るかしら?」
「御意、シュビナ様からはミルシュ=カミル様の意に背かずと仰せつかっております。御言葉、一言も間違うことなく御伝え致します」
ドルドはそう言うとバイキング達を鋭い眼光で見つめる。
「聞いたであろう、お主らの村にも確と伝えよ。見逃すのは今回だけぞ! 慈悲深きミルシュ様に感謝するのだぞ」
バイキング達が私に頭を下げると全ては丸く収まったわ。
でも、ドルドの発言からバトラングの格差はかなり問題ね、寧ろ深刻と言うべきだわ。
上下関係があるのは仕方無いわ、ただ、バトラングの今の姿は独裁国家に近い気がするの、私はそんな国は好きになれないわ。
ドルド達と軽く会話を済ませると、明日、ハニーフォレストを訪ねて来ることに決まり、ドルド達はその場を後にしたわ。
残されたバイキング達も姿を消そうとしていたけど、私は彼等に待ったをかけたの。
「待ちなさい! アンタ達には私について来て貰うわ。勿論、嫌とは言わせないわよ?」
私の影から顔を覗かせる使い魔を前に諦めたように頷くバイキング達。
それから彼等を私の森に招待したの。
当然ながら、バイキング達は生きた心地がしなかったと思うわ?
私の家の裏庭にテーブルを用意して貰ったわ。
サトウに頼んで甘めの紅茶と簡単な焼き菓子を出して貰い、私は本題を切り出したの。
「貴方達に話があって来て貰ったの、言わば客人なんだから、遠慮せずに食べて、つかってるのは、自家製蜂蜜よ」
恐る恐る手を伸ばし、焼き菓子を口にするバイキング達。
一口食べると彼等はまるで子供みたいにお菓子と紅茶を楽しそうに食べてくれたわ。
場が和み始める、頃合いを見計らい私は本題を切り出す。
「あのさ、貴方達に質問、バトラングってどんな国なの?」
私の質問に対して悩むような表情を見せるバイキング達。
「どんな国と言われてもな、普通の王を頂点とする王制国家だ。バトラング王国は、民に強き者と弱き者を作り格差社会を作ったんだ」
「そうそう、最初は反対勢力も存在していたが、呆気なく沈黙しちまった、それを気にバトラングは更に力を振りかざし、今に至るわけだ」
「うむ、何より、バトラング王国は北の海と大陸で唯一、統一を現実にした国でもあるからな、誰も逆らわんよ」
バトラング王国、信頼はされてるけど、好かれてるわけじゃ無さそうね?
本来なら、不平不満は当たり前って考えるんだけど、今回は解決しとかないと後の関係に響きそうね。
「まあ、いいわ。つまり、バトラング王国を嫌いじゃないけど、好きでもないと言う事よね?」
私の言葉に下を向くバイキング達。
「私は此れからこのバトラング王国を変えるつもりよ、悪いけど……あんた達にも協力して貰うわ! 改めて、私はミルシュ=カミルよ。あと、嫌とは言わせないし、嫌だと言っても認めない、いいわね!」
勿論、無傷で協力して貰うのは難しかったは、大人の話し合いと青春的、拳の会話をもって協力を約束してくれたバイキング達には感謝だわ。
協力してくれるバイキングは取り敢えず、3人で村にも協力をお願いする事になるわ。
村の名前は【ウトピア】そして、協力してくれるバイキング達は私がわかりやすいように呼び名を決める事になったの。